入学
うららかな春の日差しの中、小学校まで歩いてゆく子どもと保護者たち。今日は入学式である。そんな中に、葵と雫もいた。
「私がこんなところにいると親になったみたいなんだが」
「里親登録したんだから、親で間違っていないだろ」
「まあ、確かにそうなんだけどな」
葵と雫が出会って一ヶ月ほど。雫はお金はあったが、未成年ということで不都合が多かったので、都合がいいことに葵がいたので養子縁組をして、親子関係を結んだのであった。ただ、この親子、娘6歳に親が金銭的に依存している状態となっており、どちらが保護者なのかは大分あやしいものであったのだが。
「嫌なら断ってもよかったのに」
「別に嫌じゃないし、親権ないとこの国じゃ不便なのはわかってるからな。こっちは助けてもらったし、お互い様だ」
「なら、いいさ」
そんな、他人に聞かれたら不味そうな会話をしながら、学校へと向かう二人であった。
「今日はお日柄もよく(以下略)」
今は広い体育館で、新入生が皆座りながら先生方の話を聞いている。どのご時世にも、校長の長い話というものはあるものである。そして眠くなるものだ。睡魔と戦いながらも、ただじっと椅子に座りながら時間を過ごす。
「(この感じは昔と変わらないものだな)」
少し感慨にふけってもいた。
そんな戦いという名の入学式も終わり、各自教室へ移動する。さっきまでの静かさから開放され、皆生き生きしている。
「ねえ、君なんていうの?」
そんな中、近くにいた女の子が話しかけてきた。
「私は柏木 雫。君は?」
「私は御堂 彩花。よろしくね」
「こっちこそよろしく」
「(目がくりっとしていて、かわいい子だな)」
そんな風に考えていると、
「おまえ、雫って言うんだな。俺は五十嵐 健也。よろしく」
「うん。よろしく」
同じく近くにいた男の子が声をかけてきた。どちらかというと、体育会系だろうか。
(それにしてもみんな元気あるな。流石若いだけはある)
皆、バイタリティーに溢れた盛りなので、教室はなかなかにカオスな状況だ。
「はい、みんな席について」
先生が来て、皆に席の場所を伝える。
「はい。それでは、今の席が1学期の席になるので皆さん覚えておいてくださいね」
「はーい」
今日は、そんな感じで学校は終わり、解散となった。
「雫、学校はどうだった?」
「小さい子がいっぱいで、みんな元気すぎて付いていける気がしない」
「6歳とは思えないコメントだな」
「6歳じゃないからな」
そんな感じで2人は家路につくのだった。