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出会い

新しく移り住んだマンションのベランダから眼下を見下ろす。


「ここに数え切れないほどのたくさんの人たちが住んでいて、その営みがあるんだな」


 そんな風に感慨に浸りながら、夜景を見つめる。風が少女の髪を撫でる。この姿を見たものがいれば思わず見惚れてしまうであろう。


「こんな風に高いと思わず飛び降りたくなる。まるで吸い込まれるように」


 そういうと少女は魔法を発動させる。


「我の姿を暗闇の中に隠せ。我の姿を見たものはいず、見るものもいない。故に我は存在しない」


少女が発動したのは姿を隠すための魔法だった。


「これで多分他の人からは見えないというか、認識されないはず。夜だから余計に。よし、じゃあいこうかな」


 少女の周りに風の渦が生まれ、少女の身体を浮かせる。そして、手摺の上に乗ったかと思えば力を抜いてそのまま地面に吸い込まれるかのように落下する。

 地面まであと少しというところで再び風の渦が生まれ少女を浮かび上がらせる。


「自由落下って中々スリリングで面白いな。風が気持ちいい」


 そう言って夜の空の旅を満喫するのであった。

 空を翔け、ビルの間を縫ったりと様々な風に飛んでいると、ふとあるビルの屋上に人影を見かける。

 近寄ってみると若い女性が手摺にもたれて黄昏ているようである。少し観察しているとふと目があったような気がした。まさかとは思って移動してみると、まだこちらを向いていた。


「(なんで見つかってるんだか。隠蔽は完璧なはず。まあ魔力を持った人の中にはレジストできる人もいるからその類かな?)」


 少女は興味を持ったのでその女の人に近づくことにしたのだった。女の人に見つめられながらも、その近くに降り立つ。


「こんばんは。お姉さん。」


 女の人に声をかけてみた。


「あっ、ああ、こんばんわ。」


女の人は動揺しながらも答えてくれたのだった。


「私は通りがかりの魔法使いで、柏木かしわぎ しずくといいます。隠蔽魔法を使っていたのですがお姉さんには見つかっちゃいましたね」

「魔法使い?」

「はい。胡散臭いかもしれませんが、まあ実際空を飛んでるところを見てるんですし証明するまでもないでしょう?」

「そんなものが実在するのね。なんというか驚いてしまってごめんなさいね」

「いえ、一般には知られていませんし、知られてはいけない決まりですから」

「私はいいの?」

「お姉さんの場合はどちらかといえば、私と同じ世界の存在ですから問題になりません。まあ、私じゃなくて他の魔法使いに見つかってたら危なかったかもしれませんけどね。普通の人にはそもそも今の私の姿は認識できませんし」

「同じ世界の存在?」

「はい。要はこの世界では珍しい魔力を持っている人の一人で、しかも私の魔法をレジストできるというさらに珍しい人ですよ。そういえば、名前を聞いていませんでしたね。お聞きしてもいいですか?」

「まだ名乗って無かったわね。私は藤山ふじやま あおい。ついさっきリストラされて無職になった24歳独身」

「リストラですか。それはなんというか・・・」

「いいのいいの。子供が変に気を遣わなくても。まあ、いきなり来なくていいとか言われたんだから、今までの努力はなんだっただーみたいな感じで鬱屈としながら、これからどうしようかなって考えてたらあなたが現れたのよ」

「そうだったんですか」


 それから少し沈黙が流れ、


「それならウチに来ませんか?ちなみに、住み込みって意味ですよ。私、今日こっちに引っ越してきたばかりなので、この辺に詳しい人がいれば助かりますし」

「お家の人に迷惑じゃないの?」

「一人暮らしなので問題ありませんよ」

「えっ。一人暮らし?その歳で?危ないでしょ、というか親御さんは何考えてるの?」

「あの、誤解がないように言っておきますと、私の見た目はこんなんですがあなたより年上ですよ。正確には精神の年齢がですが」

「大人びてるってこと?」

「いえ、そうではなくて。この身体は私が作ったものですから。そしてその身体に元の私の肉体から精神だけを移植したんです」

「本当に?」


 ジト目で見つめてくるお姉さん。


「本当ですけど、それを証明する方法はありませんし。まあ、それは置いておいてウチに来ますか?来ませんか?」


 はぁ、とため息をつくお姉さん。何か諦めの境地に達したようだ。


「魔法使いって時点で正直わけわかんないけど、面白そうなことは確かね。ならお邪魔しようかしら。今住んでるアパートも今月分の支払いは終わってるけど、来月分を払うにもお金がないし。・・・給料とか出ない?手伝いとか料理ならするから」


 側からみれば、大人が子供に縋り付いている残念な図でしかないのだが、切羽詰まっている人にはそんなものはどうでもよくなってしまうのだ。


「いいですよ。お金には困ってないですし。料理とか洗濯とか色々とやってもらってもいいですか?」

「任せて。そのくらい余裕よ」


 そんなやりとりの後、雫から葵に住所と部屋番号を教えて、明日の朝に来るようにと約束をした。


「では、おやすみなさい。葵さん」

「おやすみ。雫ちゃん」


 別れの挨拶を交わすと、雫は再び飛び去る。


 そうやって初めての二人の邂逅は終わった。

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