魔法
「よし、まずは危なくないやつからだな。灯りの魔法とかがいいか」
場所は変わり、屋敷の裏手にあるだだっ広い広場に移動した。地面は固められており、草は生えていない。まさに魔法の練習には絶好の場所といえよう。というか、そのための場所なのだから。
「杖を使った魔法とか久しぶりだな。よし、やってみるとするか」
少女、もとい元男は魔法に関しても卓越した技術を持っていた。そのため、ある程度までの魔法であれば杖は必要なく、詠唱も必要としなかった。だが、流石に慣れない新しい身体では暴発の危険性もあると踏んで基本に忠実にやろうというのだ。
「灯りの魔法の詠唱はっと。ええと、・・・・」
中級魔法程度までであれば感覚で使っていたので、詠唱を忘れていたのだった。
「そうだそうだ。光の力よ、我の指先に集え、ライト」
そう唱えると指先に眩い光が灯る。
「特に問題はなさそうだな。コントロールも、よっと」
指先に流す魔力を強くする。
「眩しすぎっ。止め止め」
魔力の流す量を増やしすぎたために、目が眩んだ。
「やっぱり魔力保有量はかなりありそうだな。子供とは思えない程に。よし、どんどんやっていこうか」
コントロールも発動も問題ないということで、基本に忠実というのは少女の頭から消えていた。
「やっぱり攻撃魔法だな、やるなら。まずは的を用意するか」
そういうと屋敷に杖を置いてきてから、広場の端の方に移動する。
「この辺でいいかな。・・・よっと」
少女が地面に手を置くと、そのすぐ前に5メートルほどの土の壁が地面が隆起して出来上がる。杖なし、無詠唱でそれを成してしまうのだから少女の技量がうかがえるというものだ。
「いい感じだな。肉体の使い勝手はだいぶ違うが、魔法の使い勝手は以前とほとんど変わらないな。じゃあ、早速炎系統のやつでも撃ってみるか」
10メートル程離れたところに移動して、右手を土壁に向かう。
「徐々に威力を上げていくとしようか。ファイアーボール」
瞬時に右手に火球が生成され、土壁に高速で到達する。
ただ、威力を最小限にしたため、土壁に当たった途端「ボン」という音を立てただけで消えてしまう。
「よし、次。ファイアーボール・威力中」
前と同じように火球が生成され、土壁に当たる。威力が上がったために「ドン」という音が響き、土壁の周りに土煙が充満する。土煙が消えた後、土壁が少し削れているのが確認できた。だが高さ5メートル、厚さ3メートルの壁は健在である。
「なんか、あの壁思ってたより硬いな。よし、ぶっ壊すか。ファイアーボール・威力強」
少女は前の魔法と違い、手を上にかざし時間をかけて火球を生成する。いままでの50センチほどとは違い、2メートル近くの大きさにまで膨れ上がる。
「いけっ」
そのかけ声と共に手を土壁に向け、土壁に向かって目にも止まらぬ早さで迫り衝突する。いままでとは比較にならない程の轟音が響き渡り、土煙が少女の居るところにまで充満する。
「げほっ。やりすぎたか。てか、煙っ。何も見えないし」
数分して辺りの煙がなくなると、土壁のあったところには大きなクレーターができていた。
「あ・・・、やりすぎたな。ま、練習場だしいいけどね。一応戻しておくか」
そういって、クレータのできた近くの地面の土に手を当てて、魔法を発動させる。
「地形操作」
すると、みるみるうちにクレータのできていた大地が平らになっていき、数分で完全に平らになる。
「流石に広い範囲の操作は少し疲れるな。とりあえず、魔法は問題ないってことでいいかな。練習はおわりにしよ」
そう言うと少女は満足して屋敷に戻っていく。これで今日の魔法の練習を終えるのだった。




