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嵐の前

 車を降りて、難民キャンプに近づくと多くの人々の姿が見えてきた。

 ガイドの人に案内されながら、キャンプ内を見て回る。


 大人も子供も一生懸命生きている。そんな風に感じた。


 現地の人と美鈴様が話している中で、子供たちが近くに寄ってきた。


「お姉さん、どこからきたの?」

「日本という国だよ」


 美鈴様がそう答えると子供たちは嬉しそうに口々に言い始めた。


「俺知ってるよ。アニメと漫画の国だ」

「ねえ、サムライっているの?」

「日本のお寿司大好き」


 美鈴様と子供たちが楽しそうに会話する。ただ、子供たちよ。日本のイメージが偏っているぞ。まあサムライ以外は合ってる気はするが。


 子供たちと仲良くなった美鈴様は、日本の遊びや歌などを教えていた。よそよそしかった大人たちも、そんな子供たちの様子を見て次第に打ち解けていく。美鈴様も楽しそうにしている。普段子供と触れ合う機会などないだろうから、新鮮なのだろうか。


 そんなこんなで数時間経ったころ、お呼びでないお客達がやってきた。


 ガラの悪い男達が乗った軽トラが十台以上向かってくるのが見えた。軽トラにはご丁寧に機関銃まで取り付けてある。


「美鈴様。退避します」

「はい」


 子供も大人も散り散りになっていく。そんな中で私は美鈴様を連れて、ここまでやってくるのに使った車に向かった。


 しかし、直ぐに近くにやってきた十数人の戦闘員が銃を撃ってきたため、テントの陰に隠れる。ボディーガード達が応戦しているが、ガードの数は5名でこちらの分が悪い。


 さらに悪いことに、通りの先に停めていた車が炎上しているのが見えた。逃げ道なしと。

 でも、こちらにはアリシアがいる。


「アリシア。片付けお願い」

「承知しました。マスター」


 アリシアはそう答える、敵の戦闘員に向かって走っていった。


 銃弾の雨の中を潜り抜けながら、戦闘員の一人にたどり着く。戦闘員の首元に触れ、パチッと光が走ったかと思うと、戦闘員が崩れ落ちた。そして直ぐに他の戦闘員の元に向かう。


「くそっ。あいつ、精霊だ」

「とにかく撃ちまくれ」


 近づいてくるアリシアに銃弾が当たろうとも、すべて弾かれる。精霊に銃など無駄でしかないのに。しかし、精霊のことは知っているのか。


 続いてアリシアは、手を戦闘員達の方に向ける。

 彼女の体が徐々に眩く輝いてゆく。


「やばい」

「退避しろ」


 危険に気付いた戦闘員達であったが既に遅い。


 空に黒い雷雲が立ち込め、雷が落ちる。

 戦闘員全てに。


 落雷がやんだ時には、立っている戦闘員は一人もいなかった。

 彼女は雷の精霊。雷を司るもの。そんな彼女に魔力を持たないものが敵うはずもない。



 その後私たちは車を手配してもらって無事に日本まで帰ることができた。



「今回は本当にありがとうございました」

「どういたしまして」

「また何かありましたら、その時はよろしくお願いいたしますね」


 そう言って笑顔で手を振る美鈴様に見送られながら、王城を後にする。

 こんな事態はもう御免こうむりたい。



 そんな風にトラブルに巻き込まれたのであったが、本当の災難はこれからであることを私はまだ知らなかった。


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