お姫様
王城。日本の中心。私はその1室に通されていた。部屋中豪華な装飾がなされている。恐らくここは応接室なのであろう。私はそんな中で、先ほど出された高そうな紅茶を飲みながらお姫様を待っていた。
今回の任務は、私がお付きとして1人でお姫様を守るというものであるそうだ。なにこの無理な注文。どうやら理恵様は王族の中での勢力争いに負けた影響で扱いが酷く、そのためか普段は王城の中に閉じ込められているとのこと。
本来は、城の侍女が1人同行するだけで行かされる予定だったらしいが、一部の人達の工作で私がその代わりとなったらしい。死んでも構わないと思われているのだろう。なんか、碌でもないものに巻き込まれた気がする。紅茶が心なしか苦い。
「失礼します」
そんなこんなでしばらく経つと、件のお姫様が侍女に連れられて入ってきた。私は立ち上がる。
「はじめまして。私は美鈴理恵と申します。どうぞよろしくお願いします」
長い黒髪と透き通ったような白い肌。本当に綺麗な人。それが彼女の第一印象だった。
「はじめまして、理恵様。柏木雫と申します。よろしくお願いいたします」
簡単な挨拶を交わすと、彼女と私は向い合ってソファーに座る。
「今回は私の護衛を引き受けてくださいありがとうございます。そして、無理を押し付けて、本当にごめんなさい」
最初に彼女は私に謝罪した。本当に申し訳無さそうに。
「構いませんよ。私としても良い経験です」
「ありがとうございます」
彼女は私に深々と頭を下げた。
「護衛に関しては問題ないのですが、侍女としての役割を期待されても困るのですが」
本当にそうだ。私にそんな経験はない。
「それに関しては問題ありません。ただ、少し手伝いをお願いすることがあると思うので、その時はお願いします」
「わかりました」
まあ、本人が問題ないって言ってるなら大丈夫なんでしょう。多分。そんなこんなで、確認事項や伝達事項に関して一通り話し合った所で出発することになった。
「一つお聞きしますが」
「なんでしょう」
「城の外に出られることってどれくらいありますか?」
「それが・・・、お恥ずかしながら殆どありません。だからこそ、今回の事は結構楽しみなのです」
彼女は花を咲かせたような笑顔を浮かべていた。お淑やかな感じを受ける彼女であるが、案外活発な所もあるのかもしれない。ただ、外に殆ど出ていないお姫様が内戦地へって、大丈夫なのだろうか。
私達は送迎の車に乗り込んで空港に向かう。その道すがら私達はお互いのことを話していた。
「雫さんはいくつなんですか?」
「12ですが」
「わあ、私と同い年なのですね」
彼女は嬉しそうだ。というか、この人結構表情豊かなのかもしれない。
「私と同い年で私の護衛に抜擢されたということは、かなり強いんですか?」
「それなりには」
「おばさまがとっておきの子を護衛につけたとおっしゃっていたので、きっと強い魔法師なのでしょうね」
当たり前ではあるが、彼女には私が魔法師であることは伝わっている。というか、王族の護衛には魔法師が何人も配属されている。
「ちなみに私も魔法が使えるんですよ」
そういって彼女は指輪を見せてくれた。この指輪は正規の魔法師なら身につけているもので、身分保障と認証キーとして私も身に着けている。・・・って、え?
「理恵様も魔法師なのですか?」
「私の場合はまだ見習いですけどね。私の魔法は回復魔法。それなりに自信があるんですよ」
そう言って胸を張る彼女。
・・・今知っておいて良かった。
「理恵様。その指輪は預からせていただきます」
「どうして?」
まあ、見習いなら仕方ないか。
「その指輪をしているということは、周りに自分が魔法師であるということを伝えることになります」
「まあ、そうね」
「そんな状態で内戦地に行ったらどうなると思いますか?」
「・・・標的にされるか、拉致されるわね。わかったわ」
箱入り娘な割には理解が早い。
「ちなみに私も外してありますよ」
王城で姫様を待っているときに既に外しておいた。外し忘れても困るし。
「手慣れてらっしゃるんですね」
「まあ・・・」
「前にもこういった経験が」
「それにはお応えしかねます」
「あるということね。頼りにしてるわ」
もちろんあるさ。だが、それは男だった時の話だ。
成田空港に着くと搭乗手続きを経て、私達は飛行機に乗り込んだ。
そして、サエリリ共和国へと。




