花見
学校が始まって少し経ったある日の日曜日。
「今日は休みだな」
「そうだね」
葵と雫はのんびりと家で休日を過ごしていた。
「葵、紅茶淹れてくれる?」
「いいよ」
葵はキッチンに行くと、茶葉を入れたティーポットとティーカップとクッキーを持ってきてくれた。
葵はティーポットの蓋を開け人差し指を中に向ける。
「ホットウォーター」
魔法の光が灯り、言葉と共に指先からお湯がポットに注がれる。
部屋の中に紅茶の香りが広がる。
「魔法にも慣れたもんだね」
「ありがと」
葵は就職することができたが、今も雫の家に住んで家政婦のようなことをやっていた。本人は楽しそうなので、雫はまあいいかと思っている。折角なので、葵には魔法を教えた。彼女は火と水の魔法に適正があった。いまでは、そこそこの使い手になっており、雫の魔法の仕事の補助を行ったりしている。
二人で紅茶を飲みながら、クッキーをつまむ。
しばらくのんびりした後、葵が言い出した。
「折角の休日だし、出かけてみないか?ちょうど桜が咲いてるんじゃないかな」
「いいよ。行こうか」
2人はコートを羽織り、外に花見に行くことにした。
少し歩いたところにある、大きい国立公園にやってきた。
「スゴイ人だな」
「そうだね」
丁度昼間の桜が満開の日で、しかも晴天だったため、人でごったかえしていた。
「あそこ空いてるよ」
葵が空いているところを見つけたため二人で座ることにした。
「すごい人だし、結構うるさいな」
「風情も何もあったものじゃないね」
これでは、花見ではなく人見だなと、雫は感じていた。
「こういう時に魔法だよ」
「何かいい手があるのか?」
「まあ、見てて」
雫は地面に手を当てると魔力を込め始めた。
みるみるうちに、まばゆく光る魔法陣が展開されていく。
「結界展開」
その言葉と共に、辺りから人が消えて行く。
少しすると、葵と雫以外の人が消えてしまった。
「何したの?」
「結界を作ったんだよ。私たち二人だけが世界の裏側に来たような感じかな。表の世界はさっきと同じく人で一杯だよ」
「そんなことができるのか。すごいな。それって私にもできる?」
「できると思うよ。訓練が必要だけど」
「今度教えてくれ」
「いいよ」
二人はのんびりと貸切で花見を楽しんだのであった。




