お約束
俺の名前は、一ノ瀬 幹哉という。火と風の魔法が得意な中学1年だ。
俺は自分の魔法に自信があった。同年代には俺ほどの攻撃魔法を使えるやつなんていないんじゃないかと。
そんな風に、学院入学までは考えていた。
でも、そんな考えは入学試験の時にあっさりと崩れてしまった。
俺の考えを壊した奴、名前を柏木 雫という。
入学試験の実技の時に志願者が試験場で待っている時、場違いな可愛い子だなと感じた。
小柄な体型、くりっとした目、透き通るような白い肌。
ここは、攻撃魔法の実技を見る場所。そんな場には不釣り合いな子だなと思っていた。まともに、魔法発動なんてできるのか。そんな風に思っていたんだ。
「次、柏木 雫さん」
「はい」
その子の順番が来て、どんなものか見てみようと思った。
「ファイアーアロー、同時展開100」
そのトリガーワードと共に、同時に100本もの炎の矢が空中に展開されたんだ。
俺は自分の目を疑った。だって、同時に100本も展開するなんて、上位魔法師でなきゃできない芸当だからだ。学院入学生がやれるような芸当ではない。俺なんて3本同時展開するのがやっとなのだから。それでも周りからは天才とか言われていたのだから恥ずかしいものだ。
「ファイア」
その声と共に、標的の土の人形に矢が突き刺さり、爆発した。
爆風は俺の立っているところまで届いて来た。
すげえ。
俺は汗に手を握って、興奮していた。
こいつは凄い。俺なんか目じゃないレベルの奴だと。
これからの学院生活が凄いものになる。そんな予感がした。
俺は無事に魔法学院に入学することができ、入学式を迎えることができていた。
雫さんは、入試の成績トップで入学して、新入生代表に選ばれているようだった。
そりゃ、あの実技の実力を上回る奴なんてそうそういないだろう。
だけど、俺はお前を超えてみせる。俺の得意な火魔法で。
入学式翌日は、合宿とのことだった。合宿所にでも行って新入生同士親睦を深めるのかななんて思っていた。
そしたら、何もない森の中に放り出されて、1週間生き残れときたものだ。
さすがは魔法学院。頭がおかしい。
正直アウトドアの経験なんてないし、どうしようかと思っていた。
だが、そんな心配はすぐに消えた。
あの雫さんが俺と同じグループになったのだ。
「よしっ」
俺は嬉しさのあまりガッツポーズを一人でしてしまっていた。
俺が見込んでいた通り、指示も的確、人当たりもいい、しかも美少女。正直完璧なんじゃないかと思った。
雫からは、狩りのやり方、獲物の捌き方、料理の仕方、魔法発動のコツなどなど色んなことを教わった。正直、教わっていて自分の無知を思い知ったし、雫が同い年だということに驚いていた。
俺は朝早く起きるのだが、雫も同じく朝は早かった。だから、毎朝話をしていた。聞いていると、サッカーや野球が好きとのことで、結構話が盛り上がった。見た目は美少女なのに、男っぽい面もあってすごく話しやすかった。そんな感じですぐに仲良くなった。
そんなこんなで、5日目の夜。
雫と話していると、雫が言ってきた。
「明美とお風呂入ってくるね」
「おう。いってらっしゃい」
今日まで4回、土の壁を隔てた向こうにある薬園(お風呂)を前に何もできなかった。
しかし、雫直伝の隠密行動スキルがあれば、行くことだってできるはずだ。
「というわけで、美晴。隠密魔法を頼む」
「・・・何言ってるの?」
こいつは、西宮 美晴。女の子みたいな名前の男だが、見た目も女の子が男装しているようにしか見えない。正直同性なのに結構かわいいと思ってしまうほどに。
というのは置いといて、美晴に楽園侵入作戦を説明する。
「隠密魔法かけてもいいけど、どうなっても知らないよ」
「よし、やってくれ」
「おーけー」
というわけで、隠密魔法をかけてもらった後に、極力音を立てないようにお風呂場の中に移動する。
見つかるなよ、と思いながら移動する。
まず土の壁の中に入ると、脱衣所があって、雫と明美の脱いだ服が土できた2つの籠の中にそれぞれ入っている。
「気持ちいいね、明美」
「そうですねー」
土壁を隔てて、雫と明美の声が聞こえてくる。
よし、いざ楽園へ。
土壁の向こうに行くと、湯船に浸かっている二人が見えた。
「(おおっ)」
二人ともお湯に浸かっていて、ちょうどこちら側を向いていた。
雫と明美の裸体が目に入って来た。
長い髪がしっとりと濡れて、白い肌が際立っている。
二人とも胸は小ぶりだが、雫の方が少し大きいだろうか。
俺は目が釘付けになっていた。
そうしていると、雫と目があった気がした。
雫が何かつぶやいたかと思うと、隠密魔法が解除されていた。
「何やってるの?」
美晴が胸を腕で隠しながら、俺の方をみて冷たい目を浴びせて話しかけてきた。
やばい。
「男の子なんだし、こんなものじゃないの」
雫さん、さすがっす。
「でも、お仕置きが必要だね。美晴やっちゃって」
だめじゃん。
次の瞬間、俺は意識を失った。




