襲撃
学生達は順調に5日目までサバイバル生活を過ごしていた。狩りや採取をして食料を得たり、魔法の訓練を行ったり、他のグループと協力したりなど各々充実した生活を送って。最初は慣れないサバイバルに戸惑っていたが、お互いに教え合いながら成長していった。
今は6日目早朝。皆が起き出す頃だ。
「うーん、今日もいい天気」
伸びをすると気持ちがいい。朝日が木々の切れ間から差し込んでいる。
「おっす、雫」
パジャマからジャージに着替えた後、ドームの入り口近くにある椅子に座ってのんびりしていると、幹也が中から出てきた。今日までいつも幹也は私の次に起きていた。
「おはよう。折角だし、少し走らない?」
「いいね。着替えてくるから少し待ってろ」
幹也が着替え終わってから、2人で近くを走っていく。
「朝のランニングは気持ちがいいな」
「そうだね。私はあんまりいつも運動しないからたまにはいいかも」
「俺は家にいるときは結構ランニングとかしてるけどな」
「すごいね」
「そうでもないさ」
2人で話しながら30分ほど周りを走った後、ドームに戻った。
「2人ともおかえりー」
「おかえりなさい、お二人さん。朝食ができてますよ」
ドームの入り口で美晴と明美が迎えてくれた。いつもの朝食のスープができているようだ。
ドームの中に入って、皆で食事を始める。
4人で他愛のない会話を交わしたり、笑いあったり。ここに来てからのいつもの風景。
それが一変するとは露も知らずに。
「きゃあああ」
4人でのんびりとドームの中で過ごしていると、外から叫び声が聞こえてきた。
「何かあったみたいだね」
「どうする?」
皆が私の指示を待っている。ここに来てから私がリーダーの役割を担うようになった。
「私と幹也で偵察に出る。明美はここの防衛、美晴を守ってあげて。美晴は待機。後の指示は念話でするかもしれないから、そしたら従って」
「わかったぜ。すぐに行こう」
「防御は任せて」
「女の子に守られるのはかっこわるいけど、わかったよ」
私も幹也もジャージ姿になっていて、動きやすい格好だったので丁度いい。
「いくよ、幹也」
「おうよ、雫」
叫び声のした方に向かう。
「(大したことないといいんだけど)」
嫌な予感がしながらも、足を進める。
草木をかき分け、現場に到着する。
そこではすでに魔獣と生徒との戦闘が行われていた。
いや、一方的な蹂躙といった方が正しいだろう。
それも、生徒側がやられているという。
「(熊とイノシシの魔獣が一匹ずつか。狩りの最中に出会って連れて来ちゃったパターンかな。っとヤバい)」
ちょうど、女の子が熊魔獣に襲われそうになっていた。
瞬時に無詠唱で氷の矢を構築して、熊魔獣に向けて射出する。と同時に、イノシシ魔獣に向かっても氷の矢を射出する。
二匹とも後方に吹き飛ばされる。が、すぐに体勢を立て直しこちらに向かってくる。
「(魔獣化した動物の生命力はやっぱり異常だな。さっさと片付けよう)」
魔力を多めに放出して、無詠唱で炎の矢を40本ほど展開させる。
「いけっ」
一匹につき20本ずつ超高速で矢を魔獣に突き立てる。
「バースト」
トリガーワードと共に、突き刺さった矢が爆発する。
土煙が引いた後には、絶命した魔獣二匹が横たわっていた。
「どうする、雫」
「ライフサーチするから、周囲警戒よろしく」
「おーけー」
目をつぶり、魔力を周囲に広げながら放出する。
「ライフサーチ」
トリガーワードと共に頭の中に周囲の生命体の情報が頭の中に入ってくる。
「(って、やばいぞこれは)」
北方3キロの地点に魔獣の反応多数。しかもこっちに向かって来てる。
それを幹也に伝える。
「おいおい、まじかよ。安全だって話はどこいった」
「わかんないけど、とりあえずこの子達の治療をするから警戒継続」
「了解」
襲われそうになってた女の子は助かったものの、残りの男の子2人と女の子1人は結構な大怪我で、傷口から血が流れ出ている。ライフサーチで反応があったから生きているとは思うけど。
「(早く、治療しないと)」
怪我人を風魔法で一箇所に集め、両手から魔力を放出。
「かの者達を癒したまえ、ハイヒール」
トリガーと共に眩い白い光とに辺りが包まれる。
1分ほどすると光が消えた。
3人とも傷口は綺麗に消えていて、寝息を立てていた。
「やっぱりすごいな、雫は。次は?」
「みんなの避難誘導。ちょうどお誂え向きな場所があるでしょ」
「例の地下の秘密基地か」
「そう。あそこ」
土魔法で地下に秘密基地を作っている班には、幹也と遊びに行ったり、手伝ったりしていた。規模的には150人ぐらい余裕で収容可能だろう。本当、物事どう転ぶかわからないものだ。
周囲に魔力を放出させて、無詠唱で念話を発動させる。
「現在、私たちのキャンプ地に向けて北方から魔獣の集団が接近中。あと5分ほどで接敵します。速やかにファイアーボールを目印に地下基地に避難してください。地下基地の晃くんは至急、ファイアーボールを空中で爆発させて誘導してください。繰り返します・・・」
とりあえず、意識を失ってる3人と女の子1人を避難させないと。
「シェープクレイ」
土で荷車を作り出す。
「幹也、意識を失ってる3人とこの女の子1人を無事に地下基地まで運んでくれる?」
「了解。お前はどうするんだ」
「少しでも時間を稼ぐ」
「危険だろ」
「危険は承知だけど、私の実力は知ってるよね」
「・・・わかった。死ぬなよ」
「そっちもね」
幹也は4人を地下基地へ連れて行った。
今いる場所は、北方の最前線。ここである程度抑えなければ被害が出る。
さてと、久しぶりに本気を出すとしますか。




