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森の夜

 辺りを闇が包み、森が静まり返ってゆく。

 そんな中、150人ほどの新入生が思い思いに過ごしていた。

 グループによっては既にトラブルが起きていたりしたが、雫達のグループは極めて順調であった。


 幹哉と雫が帰ってきた後に、明美に窪みを作ってもらって、そこに残りの3人で落ち葉を拾ってきて詰めて寝床を作ったりした。


「それじゃ、夕飯作ろうか」


 皆で土のドームの中に入り少し休んだ後、夕飯を作ることにした。

 ドームの中は光魔法のライトで美晴に照らしてもらっている。


「明美、竃はできてる?」

「もちろん」

「食器は?」

「抜かりないわ」

「さすが。ありがとう」

「どういたしまして」


 明美の作った竃と食器を確認したが、粘土質の土を利用した上で表面が滑らかに加工してあり、中々の出来であった。


「すごいね。このクオリティーは」

「土魔法は小学生の間にかなり練習していたから」

「なるほどね」


 私たちのグループにはなかなかいい人材がいたものだなと思っていたりした。


「ねえ、雫さん。みんなで何を作るの?」


 美晴が聞いてきた。


「猪の肉を焼いたものと、キノコと野菜のスープかな」

「おいしそうだね」

「調味料がないから、味は素朴だと思うけど」

「あー、そうか」


 そうなのだ。先生方は調味料の支給を一切しなかったため、味付けができないのだ。せめて塩ぐらいくれよ。


「それじゃ、始めよう」

「「「おー」」」


 ということで、みなで分担して料理をする。


 明美と美晴は料理経験があるようで、中々手際が良かった。一方、幹哉は経験がないようだったので、竃に枯れ木をくべる係をやってもらった。


 そんなこんなで、とりあえずできたのだった。


 明美に椅子と机を作ってもらい、皆で食卓を囲んだ。


「「「「いただきます」」」」


 完成したものを皆で食べ始めた。


 食べてみるとイノシシ肉は癖はあるが案外おいしかった。

 また、スープもキノコの出汁がでていて、素朴であたたかく、ありだと思った。


「おいしいわね」

「そうだね」


 明美には好評なようだ。


「私イノシシ肉なんて初めて食べたけど、少し癖のある豚肉っていう程度ね。味付けできないのが残念」


「本当そうだよね。先生達、調味料くれればよかったのに」


 美晴と幹哉は黙々と食べていた。


「2人ともどう?」


「うまいぜ」

「おいしいよ」

「なら、よかった」


 4人で食べながらお互いに話をして、交流を深めていった。


 私は明美と主に話していた。


「明美がいてくれてよかったよ。土魔法って本当に便利だね」

「私たちこそ雫さんがいなかったら、どうなっていたか。本当にありがとうね」

「明美はどうしてそんなに土魔法が得意なの?」

「子供の時から土魔法で像を作るのが好きだったから、よく作っていたの。だからかな」

「なるほどね」


 土魔法でいったら、魔法師としても合格なレベルではないかとも思っていた。


「雫さんも土魔法が使えるのでしょう。見せてくれませんか?」

「いいよ。後でお風呂作るつもりだから、その時に」

「楽しみです。土魔法仲間ですね」


 そういって微笑む明美は綺麗に見えた。




 皆で夕飯を食べ終わった後に、ドームの外に出てお風呂を作ることにした。


 両手を地面につけて魔力を流し込む。それとともに、完成像をイメージする。

 そして、トリガーワードを唱える。


「シェープクレイ」


 その言葉とともに直径3mほどの窪みができる。その後、少し窪みから離れた所に、周りを囲う壁を作る。壁は渦巻き型のようになっており、一箇所入り口ができている。


「早いです!さすが雫さんです」

 明美は興奮した様子で私の土魔法の様子を見ていた。


「イメージに忠実かつ、この構築速度。1級魔法師にも引けを取らない。私も雫さんのようになりたいです。土魔法は地味な魔法と思われていて、極める人は少ないのですが雫さんは極めているといってもいいようなレベルです。私感動しました」


 土魔法についての熱く語り始めた明美。

 こんなキャラクターだったのかこの子。


 そんな明美はしばらくすると、


「すみません、少し熱くなってしまったようです」


 冷静になったようだ。



 その後、美晴に水魔法で水を注いでもらい、幹哉に火魔法で加熱してもらった。


「お風呂だー」

「美晴はお風呂が好きなの」

「僕、お風呂大好きなんですよ」


 笑顔が眩しいよ、美晴。かわいいな。


「先に、美晴と幹哉入っていいよ。二人とも魔力行使で疲れたでしょ」

「いいのか。なら先に入らせてもらうぜ」

「ありがとー」


 そういうと2人は先にお風呂に入っていった。


「お母さんみたいね。雫さんは」

「やめてよ。そんなの」


 それはなんか不本意だ。


 明美と2人でドームの中で待っていると、お風呂上がりの2人が出てきた。


「いいお湯だったぜ」

「気持ちよかったよ」


 さて、入るとしますか。


「明美。行くよ」

「はい。行きましょう」


 ドームを出て、お風呂場に向かう。4月の夜は少し肌寒い。


 服を脱ぎ、明美とお湯に浸かる。


 肉体労働で疲れた分、熱いお湯が気持ち良い。

 上を見上げると綺麗な星々が見える。


「いい露天風呂だね」

「そうね」


 明美はほっそりとした体つきの割に、胸が意外とあるようだった。

 私?胸は多少はありますとも。明美には負けるけども。まだ12だしこれからだよ。きっと。


 二人でのんびりお湯に浸かって、今日の疲れを癒すのだった。


「うーん、気持ち良い」


 明美が満足しているようでよかった。作った人の冥利につきるというものだ。



 しばらく浸かった後、ドームに戻った。


「そろそろ寝ようか」

「そうだね」


 皆で枯葉の上で横に並んで寝転んだ。

 少しすると皆疲れていたためか、全員寝てしまった。


 慌ただしいキャンプ1日目はそんな風に終わったのだった。

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