合宿
入学式の翌日。新入生全員でとある合宿所に行くことになった。
オリエンテーションの一環らしい。
「雫ちゃん、旅行楽しみだね」
彩香が楽しそうなのでまあいいか。
現地まではバスで数時間かけて移動。
どうやら、森の近くの駐車場に到着したようだ。
駐車した場所からさらに、森の中へ一時間ほど移動。
「ここ森だよね・・・、雫ちゃん」
みんなヘトヘトになってやっと目的地に到着。
彩香はなんだかがっかりしている。
確かに、どう見ても何もない森の中だ。魔獣とか大丈夫なのか?
先生から簡単な注意事項の説明があった後、グループ分けがされる。
分けられたグループ内で自己紹介する。
「私は、柏木 雫。みんなは?」
「俺は一ノ瀬 幹哉。よろしくな」
「僕は西宮 美晴。よろしくね」
「私は高野 明美。よろしく」
各グループ男2女2の計4人グループで構成されている。
先ほどの説明によると、どうやらこのオリエンテーションは魔獣討伐のための訓練の一環らしい。
「みんなー、お疲れ様。じゃあ、これから各グループで寝床整えて、食料調達とかして1週間生き延びてね。ちなみに、この辺には魔獣は居なくて、普通の動物しか居ないから安心して。それじゃ、先生たちは帰るから。1週間後に迎えに来ます。みんな頑張って!」
これがさっきの説明。すごく雑かついい加減。
なお、本当にこの後帰ってしまった、ように見えた。
実際は、先生方は隠蔽魔法をかけてたり、隠密したりで見守っているのだが。私しかそれには気づいていないようだ。
「先生達、雑すぎるだろ。なんだよ、生き延びろって」
「まあ、将来の役に立つんだろうし、いいんじゃない」
幹哉と明美がそんなことを話していた。
美晴といえば、
「僕、アウトドアとかしたことないんだけど」
あまり役に立ちそうになかった。
幹哉は謙也と同じスポーツ系少年。明美はおしとやかな美人系。美晴は男なのに可愛い系といったところだろうか。さて、このグループで生き残れるのかな。
「それにしても、男女混合なんだな」
幹哉が話しかけてきたので答える。
「そうだね。まあ、問題ないんじゃない」
「気楽だな」
「中1相手になにを警戒しろと」
「確かにそうだな」
男女混合グループというのは、将来の戦場での団体行動を見越してるんだろうな。
そんなことを考えていた。
さて、アウトドアを始めますか。
「私がリーダーやってもいい?」
「いいよー」
3人ともOKなようなので、進める。
「まず各自、魔法適正を教えて。ちなみに私は全属性使える」
「「「全属性!?」」」
まあ、驚くと思ったよ。ちなみにこの全属性っていうのは、この身体を作る際に細工したおかげ。
普通じゃ、まず居ないと思う。少なくとも私は知らない。
「すごいな。全属性なんて聞いたことないぞ」
幹哉が羨ましそうに見てくる。
「私の属性の話はとりあえず置いておいて、みんなのは?」
「俺は火と風だ」
と、謙也。
「僕は光と闇と水」
と、美晴。
「私は火と土と雷」
と、明美。
2人は3属性持ちか。
まずは、明美からだな。
「明美、土でドームを作って寝床を作ってくれる?あと、水を貯められる窪みもお願い。余裕もあれば竃もね」
「わかったわ。私、頼られてるわね」
「美晴は窪みに水を貯めて。あと、枯れ木を集めてきてくれる?」
「わかったよ」
「で、幹哉と私は狩りに行くぞ」
「わかったぜ」
ということで、幹哉と2人で狩りに行く。
「お前、狩りの経験なんてあるのかよ」
そう言うのも無理はない。今日の格好は、フリルスカートとカーディガン、髪型はポニテールというただの女の子スタイルなのだから。いや、まさかこんな山の中に放り出されるとは私も思わなかったもので。
「もちろんあるよ。そっちは?」
「俺はないな」
「だったら教えてあげる」
まずは、着替えるとしますか。いくらなんでも、この格好じゃ怪我するし、動きにくい。
「ちょっと着替えるからあっち向いてて」
「おっ、おう」
ということでサクッと、ジャージに着替える。まあ、見られてもいいのだが、少しは恥ずかしいのだ。心も少しは女子化しているってことだろうか。
「幹哉も着替えたら?」
「わかった。ちょっとまってろ」
そういうと、幹哉は着替え始める。
着替えているところを眺めていると、
「なんか恥ずいから、あんまり見るな」
怒られた。まあ、女の子に見られながら着替えるのは、男でも恥ずかしいだろうからな。
ということで、2人ともジャージスタイルになったので、狩りに行くことにする。