訓練
今は7月の初旬。春は過ぎ、大分暖かくなってきていて、夏を感じさせるようになってきた今日。この前の週末は、トラックに轢かれそうになったり、彩花と健也が魔力持っていることがわかったりと、中々濃密なものであった。
あれから一週間。今日は2人に魔法を教えると約束していた。ということで、朝から魔法局の訓練所に来ていた。私の家でやってもいいのだが、魔法が暴発した場合に家に被害が出そうなので、その辺を気にする必要のないこの場所を選んだのだった。
訓練所は、広いドーム型の建物になっており、床には土が固められている。そして一番の特徴が、実際に訓練に使うエリアは結界に覆われており、施設への被害を心配する必要がない。訓練には最適な場所だろう。
「ということで、2人とも今日は魔法について教えるからね」
「よろしくね、雫ちゃん」
「よろしく頼むぜ、雫」
2人ともやる気は十分なようだったので、始めることにする。
「本当は座学から始めるべきなんだろうけど、そういうのは後にしようか。2人とも魔法を実際に使ってみたいだろうからね」
ということで、始めたのが魔力の認識訓練。手順としては、まず目を瞑り、心を研ぎ澄ませる。次に、自分の中にあるマナを見つける。そして、マナを動かしてみる。最後にマナを手から出すことができれば習得完了。
「じゃあ、二人ともやってみて」
二人とも目を瞑りながら、感覚を掴もうとしているようだ。さて、どれくらいかかるかな。
1時間ぐらいした時に彩香がマナを見つけられたようだ。
「なんか体の中に温かいものがある」
「ならそれを動かしてみて」
「わかった」
さらに1時間ぐらいしてから、健也が同じように感覚が掴めたようだ。
お昼にもなると二人とも自由にマナを手から出すことができるようになっていた。
って、二人とも飲み込み早いな。普通は一週間から1ヶ月はかかるものなんだけど。子供の適用能力って凄まじい。
「おおー、なんか手からでてるぜ」
「雫ちゃん、できたよー」
二人ともマナを出したり、止めたりして遊んでいる。
あんまり無駄遣いしない方がいいと思うんだけど。まあ、いいか。
「ならお前たち、次ステップ魔法発動いくぞ」
皆でお昼ご飯を食べたので、続きを始めることにした。
二人の魔法の適正については、すでに魔法局で調べていた。魔法はその人の性格が性質としてあらわれる。マナとは精神力と言われているくらいだ。魔法の種類には、光、水、火、土、風、雷、闇の7種類が存在する。彩香の適正は、光と水。健也の適正は火と土。ちなみに私は全属性の適正を持っている。基本的に適正がない魔法は発動させることができない。
2人のために魔法を実際に発動させて見せる。まずは健也のために小さな火を出す。
人差し指を突き出して、その先に魔力を少し流す。その上でトリガーワードとイメージを構築する。
「火よ来れ」
その言葉とともに右手の指先に火が灯る。
「おおー。すげえ」
健也が目をキラキラさせている。いい表情だ。
「光よ来れ」
同じように、彩香のために光の魔法を左手の指先に灯す。
「それ、私もできるようになるんだよね」
彩香も待ちきれない様子だった。
「二人とも。イメージが重要なんだ。あと、流すマナは少量にしないと大変なことになるから気をつけて。じゃあ、やってみよう」
さて、ここまでは順調だったがどうかな。
さすがに二人とも苦戦しているようだった。そんな二人を眺めていると、一人の女の子が話しかけてきた。1歳年上ぐらいだろうか。
「君たちをさっきから眺めてたけど、中々飲み込みが早いね。マナの制御を短時間で習得するなんてさすがだね」
「確かに。私も予想外だったよ。君は?」
「私は水瀬 奈々(みなせ なな)。君の名前は?」
「私は柏木 雫。よろしくね」
「こちらこそよろしく」
二人に教えられることはなく暇なので、菜々と話すことにした。
「菜々は魔法が使えるの?」
「私の家は代々魔法使いの家系だから、私も使えるよ。まだ初級魔法しか使えないけどね」
「すごいじゃない。その年で初級魔法が使えるなら将来が楽しみだ」
「そういう君はどこまで使えるの?二人に教えてるぐらいだから、魔法が得意そうだけど」
「秘密」
「秘密かー。まあ、いいよ。魔法使いは秘密が多い方がいいからね」
そう言って、奈々は微笑んだ。
しばらく菜々と魔法のことについて話していた。
菜々は魔法についての知識がその年にしては結構あり、魔法発動の工夫や、悩みについて話し合ったりしていた。
「雫と話してると、なんだか年上の人と話してるみたい」
そんな風に奈々に指摘されたりした。実際そうなんだよね。
というか、そういう君もかなり大人びてると思うんだけど。
二人で話していると大分打ち解けていき、連絡先を交換した。
そうこうしているうちに、彩香と健也が光と火の初級魔法を習得することができていた。