魔法局
「相変わらず広いなここは」
事故の後、警察署で簡単に状況を説明した後に、この魔法局に連れてこられた。
広い洋館風の建築物で、床は全面大理石。役所とは思えない豪華さだ。
「君たち、こっちに来て」
職員の男性に案内されていた。
そんなこんなで、個室に他の2人とともに案内された。
「なあ、雫。これから何をするんだ?さっき説明は終わったよな」
「たぶんだけど、これから守秘義務契約をするんだと思う」
「なにそれ?」
「魔法のことを一般の人に教えられないように魔法を私達にかけるの」
「すごいね、雫ちゃん。お伽話みたい」
「確かに普通はそう思うかもね」
椅子に座って待っていると、女の職員の方が入ってきた。
「おまたせ。今回は災難だったわね」
「まあ、なんとか生きてますし」
「ほんと凄いわ、あなた。並の魔法師ならペチャンコよ」
「そうですか」
「そうよ。本当にありがとうね。それじゃ、魔法の秘密を守ってもらうための魔法をあなたたちにかけます。いいですか?」
「「「はい」」」
「いい返事ね」
そう言うと、女性の脇においてあった鞄から紙を3枚取り出して、1枚を机の上に、そしてペンを渡してくる。
「まず、その紙に書いてある内容を読み上げるわね。”私は、一般の人に魔法に関する情報を伝えないことをここに誓います。”と、ただこれだけ。それじゃ、紙にサインをしてくれるかな。まずは、雫さんからお願い」
「(契約魔法か。こんなもの久しぶりに使うな。)」
ペンを持つと、自分の名前をサインする。書き終えると、紙が青く光り消えた。
「では、次は彩花さん」
彩花も同じように渡されたもう一枚の紙に自分の名前を書き終えると、紙が青く光り消える。
「最後に、健也さん」
健也も同じようにもう一枚に名前を書いていく。同じく、紙が青く光った後に消える。
「ねえ、雫ちゃん、健也。なんか凄いねこれ」
「そうだな。パーと光って、魔法っぽかったな」
二人共契約魔法に驚いているようだ。
「この程度で驚くなら、これから言うことはどう反応するのかしらね」
「なんですか?」
「なんだ?」
「おめでとう。二人共魔力持ち。今日から私と同じ魔法使いの仲間入りよ」
「まじ?」
「やったー」
「(二人共とかどんな偶然だよ。まあ、良かったな。おめでとう)」
2人が魔力持ちであることを内心では喜んでいた。
女性職員が解説してくれる。
「今、君たちにやってもらったのは確かに魔法の秘密を守ってもらうための契約魔法でした。ただ、そこにはひと工夫してあるんです。名前を書いた時に、青く光ればその人は魔力を持っている、白く光れば魔力を持っていないというように見るだけでわかるようになっています。これは貴重な魔力持ちの人を見つけるための魔法局の工夫の一つです。そして、君たち3人は青く光らせることができました。なので、あなた方は魔力持ちなのです」
一呼吸おいてから、続ける。
「あなた達3人は未来の日本を担う魔法師となる可能性を秘めています。我々魔法局はあなたがたを可能な限り支援させていただきたく考えています。これから、魔法師について説明させていただきますがよろしいでしょうか?」
「お願いします」
私がそう答えると、その職員は部屋の電気を消し、壁のスクリーンに映像を映しだした。
「日本では魔法を使うことができる人を魔法師と呼んでいます。魔法師はその持つ異質な力故に過去世界中で迫害された歴史があります。過去には魔女狩りと呼ばれる出来事がありましたが、それもその一つです。そんな歴史があったため、魔法師は自分たちを守るために隠れて暮らすようになりました。今でも一般の人たちには魔法師の存在は隠されています。この魔法局の存在もそうです」
一呼吸おいて続ける。
「そんな中転機が訪れます。魔獣と呼ばれる生き物の出現。戦争における魔法師の投入です。魔獣というのは、普通の動物が変異して魔力を持った生き物のことです。この魔獣は、とても凶暴で通常兵器では殺すことができません。常に防御魔法と強化魔法を展開しているために、力は強力かつ、魔法以外の攻撃が通りません。魔獣に対処するために魔法師が結束して対処することにしました。それがこの魔法局の前身である、魔法結社です。世界中でそういった魔法勢力が作られ、魔獣に対処することができていました。しかし、ある時、ある国が魔法師の力に目をつけ戦争に投入してしまいます。一流の魔法師であれば、防御魔法で銃弾を防ぐことが可能になり、戦場で無敵の強さを発揮します。そんな状況に対処するため各国が魔法師の育成を始めて、戦場に投入する。そんな血みどろな状況が今の現状です。日本の場合は魔法師の育成をこの魔法局が引き受けています」
彩花と健也には表現が難しいようなので、職員の話を簡単に説明してあげた。
「なにそれ、えぐい」
「なんか悲しい話だね」
ある程度理解してくれたようだ。
職員さんが手を叩いて、暗い雰囲気を打ち消そうとする。
「まあ、暗い話はこのくらいにしましょう。でも、大事な話だから覚えておいてね。」
そういうと、現在の魔法局についての解説を始める。
「さっき魔法師の育成をしていると言ったけど、この国には通称魔法学院と呼ばれてる学校があるの。魔法師になりたい子はそこで12歳から学んでもらいます。要は、中学校からね。高校まで卒業すると魔法師資格っていうのがもらえて、魔法師だと認められるようになります。君たちはまだ6歳だから、魔法学院に入学するにしてもあと6年必要になるわね。それまでの間は、代々魔法師の家の場合は家族から教えてもらったりするの。雫さんは魔法が得意みたいだから、彩花さんと健也さんは教えてもらうといいかもしれない。魔法局には訓練所があるから魔法はそこで訓練するといいと思う。指導係が必要なら声をかけてくれれば手配するわ。説明はこんな感じ」
説明を聞いた限りだと、歴史に関しては知っている通り。だが、魔法学院なんてものの存在は初めて知った。
「なあ、雫。魔法学院だって。これは入るしかないだろ」
「雫ちゃん。私達は魔法学院に入れるのかな」
2人は乗り気なようだ。あのエグい話よりも魔法への興味の方が上なのだろうか。
「よし、二人共やる気があるなら結構。みっちり魔法を教えてあげる」
「やったー」
「よっしゃー」
そうしてこの日から、2人に魔法を教えることになった。