笑顔
また『飛鳥』の視点に戻りまぁす☆
「ぎゃぁ!」
目が覚めて、真っ先に飛び込んだおかしな少女と、果てしなく広がっている木々の量に驚き、声を上げる。
「人の顔見て、ぎゃぁ!とは何だよぉ〜」
不気味な笑いを浮かべた少女を見るうち、記憶が段々と戻ってくる。
うげ、思い出したくない事まで思い出してきた。
「瞳。俺様は瞳。君は女忍者の飛鳥☆」
完全に意識と記憶が戻った。
「私は…女忍者じゃな〜いっ!」
瞳を睨みつけ、キッパリと宣言する。
勝手に決められるのは好きじゃない。‥‥まぁ、好きな人なんて居ないだろうけど。
「あんさぁ〜…腹減ってない?」
えくぼをちらつかせ、瞳が問う。先ほど見た笑顔とは又違った笑みだった。
私は、へなへなと力が抜ける。
――何を考えている?全く相手が読めない。
「ここら辺にさぁ、超美味しい果物があるんだよぉ♪行こうっ行こうっ!ね?」
「………どこにあるの?」
他の言葉を投げつけようとするが、急いに襲ってきた空腹には耐えられない。
それに面倒な会話ばかりはしてられないと判断した私は瞳のペースにのる。
「こっちこっちぃ〜♪」
連られるがままに後を追う。瞳はこっけいなステップを踏んで森を探索していた。
「着いたよぉん。」
顎を上へと向けると。赤く、小さな実が木に沢山生っていた。
一体どんな味を楽しめるのだろうか。
「すごい……。」
これが自然なのか。自宅の庭に生えている木とはまるで違う。
とても優雅で、伸び伸びと育っている。
とにかく美しいのだ。声を漏らさないではいられないほどの華麗さを感じる。
「今日はいつにも増して綺麗♪つか、旨そぉ〜。」
「美味しいの?」
毒はないのか?と心配もある反面、すごく食べてみたいと思った。
「口、開けて。」
「………?」
「いいからっ♪」
あっと思う間も無く、口には果物が入っていた。
ゆっくりと小さい物を味わうと、今までに無かった食感が口いっぱいに広がる。
甘い、甘い果汁。後に残るさわやかな酸っぱさ。種は無く、皮ごと味わえるらしい。
「どうっすか?超美味しいっしょ?」
「‥‥うん。」
素直に頷く。本当に美味しかったのだ。
「もっと食えぇ〜♪」
するすると信じられないスピードで瞳は木に登る。元祖はサルなのか?と思わせる位早い。
そして一番高い枝に座ると、ポイポイと実を投げてきた。
それを受け止め、口に放り込むと笑った。私が笑ったのだ。
心の底から大声で笑っていた。邪魔な家来に怒るのでもなく、儀式等の際に無理矢理作る微笑みとは全然違った。
冷笑でもなく、額に皺を寄せる事なく、自然と笑っていた。
「痛っ!」
『ドサッ』
「え?何?」
足元に瞳が落ちていた。打ちつけた腰を摩りながら、ぷぅと頬を膨らましていた。
「げっ‥‥。」
「え?何?どうして落ちたの?」
私は屈みこむと、瞳の膨らんだ頬を突付く。
「んー。楓だぁ。」
楓?耳に馴染まない響き。
「馬鹿っ!」
大きな森に轟く大きな声がした。