宝魚島お嬢様
初夏。宝魚島〈ホウギョトウ〉では、大騒ぎが始まる一歩手前だった。
「飛鳥〈アスカ〉嬢、ご気分はいかがなさいますか?」
「………普通。」
「お腹の方は空いていらっしゃいますか?」
「別に。」
「他に何か申し付ける事はございませ・・」
「あぁあ!うっさい!無いからっ。」
「しかし…」
「私が無いって言ったらないのっ!」
「さようですか。ならば、失礼さして頂きます。」
「……早く行け。」
色とりどりのダイヤモンドや光り輝く金の粒が散らばっている椅子の上。
私は独り、無性に湧き上がる苛々をそのままに踏ん反り返っていた。
…うるさい。自分の事位は簡単に出来る。
なのになぜこんなに周りの者はうるさいのだろうか。
なぜ‥‥こんなにも周りに干渉したがるのだろうか。
『ゴテッ』
急にまぬけすぎる音が、天窓から響いた。
―――おかしい……。外から物音がするなんて。
完璧とまで言われた防犯設備が故障でもしたのだろうか?
顔をしかめる。最近の癖となっていた。そのせいで額に少し、皺の痕が残っている。
………少しくらいならいいかな?
ほら、だってさ、故障してたら家来とかに言わなきゃなんないしっ。
今まで感じた事の無い感情。
自分自身に色々と言い訳をつけときながら、好奇心と言う名のやっかいな感情を露にする。
『ドサッ』
「いつつぅ。ったくよぉ。」
目を見開く。ギョッとして背後を振り向く。
「あ。お邪魔します。俺の名前は瞳〈ヒトミ〉。どぉもどぉも♪」