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夕御飯

「飛鳥ぁ〜?飯いくぜっ。」

満面な笑みを浮かべた瞳。

一瞬翳りを帯びた目はそこにはなくて。



「うん。あれ?楓は?」

「もう来る。」

「お、楓。いつにもまして旨そうじゃんっ!」

「当然っ。なんてね。」

アルト声が軽く返ってくる。いつもより柔らかな表情を浮かべた楓。

「あの二人は?まだイチャつき中?」

「あ、ご飯。ありがとうございますっ。」

「美味しそう!」

ナイスタイミングで現れた二人。皆の冷やかしの目に全く気づいていない。

「今日はいつもより多めだから。」 

「あ、ありがとうございます。」

「俺達の分?」

「いや、全部俺が食うからっ。」

「瞳、まだ食うつもり?」

和気藹々とした中、自然と会話が弾む。


今までになかった事。

命令でも、怒鳴っている訳でもなく、笑顔で朗らかに話している。

瞳や楓、海実や沙理。

そして夜人や流司と話すと、こんなにも自分が変わるものかと自覚せずにはいられなかった。


「んじゃ、揃ったし食うか。」

「いっただき〜!」

鍋を取り囲み、昼間よりも多い量が入った御飯を食べる。

何の料理かは知らないが、ともかく美味しいという事だけは分かった。

「これ、何の材料使ってるんですか?」

「ああ、山菜。沢山取れるし。」

「こちらの汁物は?」

「実はほとんど同じ材料。味付けを変えて、見た目も少し違くしただけ。」

「そう、なんですか。同じ材料なのに違った味になるんですねっ。」


「なぁ〜、楓〜、今日こそ、俺勝つよ〜。」

「また勝負?いいけど。うちが勝つよ?」

「いや、今回は夜人様も参加するぜっ。」 

「いやいやいや、駄目だから。俺の食べる量減るじゃないかっ。」

「そうっすよ、リーダー。ゆっくりいきましょうよ。」

「りゅ〜、もやりたいか?」

「そ、そんな、まさか。飛鳥さん、何かいってやってくださいよ〜。」

「うっさい!今食べてるの。」

「飛鳥もやるか?」

「やんない!」

眉をひそめながらも内心すごく楽しんでいた。



こんな時間が来ると思わなくて。

一生お嬢として城に閉じ込められる日々が続くと思ってたから。

伸び伸びと過ごす事なんて、一生無いとあきらめていたから。

むしろ、望む事を許されなかった。



「ご馳走様でした。」

「私も、もういいや。」

先に食べ終わったのは昼と同じく、沙理と海実だった。

その数秒後に私もご馳走様と呟く。

「俺も、もういいや、ごちそうさんでしたっ」

流司も腹をかかえて手を合わせた。

「ああ〜〜〜!もう、俺無理だっ!すごい食欲だな、二人ともっ。俺、初めて自分より食う奴見た。」

限界だぁ〜!と言わんばかりに大の字に寝る夜人。

残った二人はお互いを睨むようにして残った食料に食らいつく。

「ふがあがっ」

「ちゃんと飲み込んでから話せよっ」

………もちろん両者とも完食の為、引き分けだった。



「くそ、次こそはっ!」

「瞳、明日からは決まった量だけだからな。」

「まじかよ〜、ちぇっ、しゃぁ〜ないな〜。」

「んじゃ、今日のディナーは終了。後は自由。」

「飛鳥〜!俺と散歩しよぉ。」

さっき走ったらしいがまだ森を探索したいらしい瞳。

特に断る理由も無いので、分かったと頷く。


「沙理さん、さっきすっごい淡い感じの花見つけたんすよ。」

「え?あ、見たい、です!でも、御飯の片付けが終ってから行きますね。」

「沙理、行って来い。片づけは私と夜人でやるから。」

「え?ちょっと、俺っすか?うげ、飛鳥の後ついていこうと思ったのに。」

「ちょっと〜、飛鳥は俺のだからあげないよっ。」

ちょっとまて、瞳。なぜ私がつっこもうとした所で、変な事言ってんだよ。

てか、夜人。ついてくるな。


「っけ。」

「いいから。早く手伝え。」

「…了解しやしたぁ。」

海実の後につづいて鍋を運んで行く夜人。

楓は寝転がって空を見上げていた。

「楓、何してるの?」

星。うち、星好きだから。小さい頃から星ばっか見てた。」

星を見上げている楓は、なんともいえぬ表情だった。

無表情とは違う、言葉で表せない表情だった。


「あ〜す〜か、行こうぜっ。」

「あ。うん。」


 トントントン


軽い足音。

遥か手前を歩く瞳の短髪が左右に揺れる。

辺りは真っ暗で。何故か夜人の髪の毛を連想させる。

「飛鳥、木に登ろっ。」

「こんなに暗いのに?」

「違う。暗いから登るんだよ〜。」

スルスルと猿以上のお手前を見た後、ほぼ引っ張り上げられる状態で枝までたどり着く。

「うひょ。気持ちい風っ」

高い所があまり平気でない私は、暗闇に感謝した。

視力の良くない目では、下が見えないからだ。

「涼しい〜。」

瞳みたいに両手を離す事はできなかったけど、太い枝の上でそっと包み込むような風に飲まれた。



 

 『そっと幹に口寄せ

 魅惑の楽園辿り着く

 婉曲な告白と共に

 淡い己の真偽知る』



 

それが歌という事を認識するのに時間が掛かった。

言葉を繋ぎ合わせ、ただリズムに合わすなんてものではなかった。

流れる風に身をまかせ、記憶に残せない旋律。

すぅっと溶けていく歌。どこか寂しげで。

「…飛鳥?」

「今の、歌?」

「当たり前じゃん。俺が歌ったんじゃないけどねっ。」

甘く、引き込まれる声だった。

この声をもう一度聞く為ならば、体の一部を捧げても良いなどと狂気じみたことを思ってしまった。

「誰?」

「さっきの歌声の持ち主?」

「うん。誰?」




「あたし。」



危うく木から落ちそうになった所を瞳が支える。

いつの間にか私のすぐ後ろに一人の眼鏡を掛けた少女がいたからだ。

「飛鳥‥ちゃんだよね?あたしは、魅夜。瞳と元同じグループの中で唯一今も仲間だよ。」

女忍者17話目になりましたっ♪

ここまで見てくださって本当にありがとうございますっ。

∬詩∬の方も、読者様がいてくれて感謝でいっぱいです……。

まだまだ修行が足りませんが、これからもよろしくお願いいたしますっ。

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