修行〔1〕
「ここでやろっか。まず、球には色々種類があってさぁ…」
一言も漏らさぬように説明を聞いた後、実際に投げる事になった。
投げるのは、必ず手元に戻ってくるという優れものを瞳からもらった。
サイズは変えれるらしいので、右手に合わせて変形させる。
「投げてみてぇ〜。」
瞳の声に合わせて、球を投げる。
‥‥‥何これ?重すぎない?
最初は見た目よりも重い球に躊躇い、せいぜい五メートルも飛ばなかった。
しかし何度もうるさい注意を受けたせいか、昼下がりにもなると十メートルは裕に飛ぶようになった。
「おお!覚え早いねぇ。」
球を投げるのがこんなに大変だと思わなかった私は、答える間も無く荒い呼吸を整える。
「そろそろ昼飯食うか。」
「……う、ん。」
「で、休憩したら又特訓だなぁん♪」
「ん、そだね。」
肩を並べて先ほど集まった場所へ行くと、楓が何かの作業中だった。
邪魔をしないようにそっと二人でそこらの切り株にしゃがみ、どうでも良い話ばかりをしていると、沙理と海実も同じく肩を並べて来た。
「あ、あ、飛鳥、さん。」
「特訓どう?」
「あの、弓って、こんなに、疲れるんですね。」
まだ胸が上下に動いている事から、相当キツい特訓を受けたのだろうか。
「キツかったの?」
「いえ。たぶん、キツいというより、私が体力ないみたいです。」
「いや、沙理。お前なかなか弓むいてるぞ。もっと動けなくなるかと思ってた。」
地に響く低音。海実が沙理を褒める。
私は、気になっていた海実の服ももちろんチェックする。
このメンバーの中で一番動きやすい格好だった。
夜になると闇と区別がつかなくなる色。楓よりもシンプルな服だ。
袖は無い。きっと邪魔だから切ったのだろう。ギザギザに切れている袖を見て推測する。
膝までない短いズボンに、恐らく何かの道具が入っている袋が二つぶら下がっている。
腰にまいているのは空手等の胴着に使う、黒い帯だった。
「あ。飯くうか。」
たった今私達に気づいたような顔で楓がこちらを向く。
一体どれ程集中していたのだろうか?
「仕度するから、そこで待ってろ。」
昼飯ってこんなに恋しいものだったけな?