第一章まとめ
これまでのお話――。
第七独立遊撃隊の計らいでブリュンヒルデを装備することになったソラは、クリスタルとの再会を夢見て剣を執ることにした。一方その頃、クリスタルもまたソラとの再会を心待ちにし銃を手にする。人類側と魔術師側でそれぞれの思惑が交錯する中、ソラとクリスタルは戦場で再開を果たすことになった。
主要登場人物
人類防衛軍 第七独立遊撃隊
青木空 青髪碧眼の主人公。十六歳。ブリュンヒルデを身に纏う少女。
趣味は空見。ニックネームは空好きのソラだが、このダジャレのようなあだ名をソラ自身はあまりよく思っていない。人当たりのいい性格でクラスの人気者。困った人は放っておけない性質である。両親とは離れて、寮暮らし。
滝中恵美 黒髪のポニーテールが特徴。ソラのクラスメイト。
勝ち気な性格で、趣味は古い青春ドラマ鑑賞。粗暴な物言いだがクラスで一番真面目であり、真面目な不良などと揶揄されることもある。胸がないことにコンプレックスを抱いている。両親は魔術師に殺されている。
楠木帆乃夏 茶髪でスタイル抜群の少女。ソラのクラスメイト。
間延びしたトーンで話すおっとりとした性格。少し他人に流されやすい。その容姿からクラスで男子の人気を獲得しているが、本人は気付いていない。両親は健在。
美木多真理 黒髪の少女。クラスメイトとして学校に紛れ込んでいた防衛軍人。
ソラに二ーべルングの指輪を渡した張本人。クールな性格で、他者に毒を吐くこともしばしば。相賀はマリにとっての保護者であり上官。天音という姉がいたがヘルヴァルドに殺されている。
相賀祥次 第七独立遊撃隊の隊長を務める男。階級は大尉。
VTOL機ペガサスを駆るエースパイロット。飄々とした性格だが、一つの信念の元に行動している。軍上層部の不穏な動きに勘付き、仲間と共に戦争を止めようと手を回す。天音の恋人だった男で、彼女を殺したヘルヴァルドに復讐しようと考えている。しかし、同じ目的を持つ天音の妹のマリには手を焼いているようだ。
塩谷矢維人
第七独立遊撃隊所属の少年。バックアップ要因として手綱基地に訪れた。
ハーレムを画策するなどとマリに言われる寡黙な性格だが、何か彼なりに独自の考えがあるようだ。
総司令部
エレディン少将 防衛軍の将校のひとり。相賀たちを毛嫌いしている。
ディアゴ元帥 防衛軍のトップ。教会と和解しようと企む相賀にとって防衛軍の中での最大の壁。
魔術教会
クリスタル 銀髪の少女。本作のもうひとりの主人公。ソラの幼馴染。現代流派に所属する魔術師。ルーンメイジ。
浮き島に退避してからも、ソラのことを忘れられずずっと再会を夢見ていた。主な使用魔術はフリントロックピストルに刻んだルーンによる魔術射撃。親友であるきらりとレミュとよく行動しているが、思いやりのある性格で交友関係は広い。自分を救ってくれたアレックを父親のように思っている。両親は人間の攻撃によって殺されている。
リュース 黄色髪。ドルイドの少女。マスターハルフィスに師事しているが、形式的には現代流派所属。
ソラと初めて交戦した魔術師。クリスタルが他の魔術師による人間相手の暴虐に難色を示していたところ、罠である可能性を考慮しつつも出撃を買って出た。短気な性格だが、冷静になれば他者のことをきちんと思いやれる。他の魔術師の例にもれず、両親は戦乱に巻き込まれて死亡済み。
きらり ピンクの髪にふりふりの多い服を着る魔法少女。現代流派所属。使用魔術は創作再現“魔法少女きらり”。
アニメのコスプレをしているが、れっきとした魔術師。ソラに言わせればその再現度は完璧であり、きらりが劇中で使用した魔法を再現することができる。クリスタルとレミュとは仲良し。その子どもっぽい容姿からは想像もつかないが、時として泣く友達を慰めたりもする。
レミュ 黒髪のシスター。現代流派所属。光属性で出力を向上させたメイスを使う。
丁寧な話し方をするが、その口調とは裏腹に戦闘スタイルはメイスで敵を叩き潰すというもの。親友であるクリスタルときらりには例え戦場でも付き添う。髪は黒髪だが、本来の彼女の髪色は白。ストレスの溜まりやすい性格であり、隙あらば浮き島内にある岩を壊してストレスを発散している。
アレック 導師の称号を持つ魔術師。流派の枠にとらわれず様々な魔術を使用できる。
魔術評議会の構成メンバーの一人だが、古き魔術師たちには嫌われている。力の弱い現代流派をまとめ、彼独自の育成方針で弟子を鍛えている。常識やしきたりに縛られない柔軟な考えを持ち、クリスタルにルーンを使用した魔銃の扱いを教えた。
穏健派であり、人間と魔術師の戦争の早期終結を望んでいる。
カリカ 緑髪のドルイド。マスターハルフィスに師事しているが、形式的には現代流派所属。
変身魔術が得意な夢見る乙女。自分を連れ去る高潔な騎士が現われないかと胸をときめかせていたが、実際に現れたのはケランだった。ドルイドの力の源である宿り木の回収を面倒くさく思っており、リュースに回収を押しつけようとする。
ケラン 現代流派の少年。誰のマスターの保護も受けないはぐれ者。
全ての魔術師がマスターに師事をしているわけではなく、彼のような流れ者も浮き島には一定数存在する。カリカに一目惚れし、格安で彼女に雇われた。
ハルフィス ドルイド長。マスタークラスの白髪の老人。
戦闘能力に秀でていないドルイドの中でも他マスターに負けないほどの戦闘力を兼ね備えている。穏健派であり、無闇な殺傷は好まない。若い弟子に頭を抱える毎日が続いている。
ヘルヴァルド
深紅の魔剣の異名を持つ魔術師。赤い鎧を着込み、その名の通りヘルヴァルドの神話再現をしている。
非常に強力な魔術師の一人であり、相賀の恋人でありマリの姉でもある天音を殺した張本人。
魔術評議会
アーサー アーサー王伝説を再現した騎士。聖剣エクスカリバーを使う金髪碧眼の男。
円卓の騎士を統括するリーダーだが、何やら不穏な動きをみせている。
最古の魔女ミルドリア 栗色の髪の、現存する魔術師の中で最も古い存在と言われている魔女。
数千年にもわたり生きているはずだが、容姿は十七才の少女のものだ。栗色の髪を持つ。
黄昏の召喚者オドム 召喚術を武器とするマスター。
古代流派であり、現代流派を敵視している。特にアレックには風当たりが強い。
魔導を記す者エデルカ 魔導書と魔術書の書き手として名を馳せる銀髪の女性。稀有な複合属性の持ち主。
若い女性であるが、無用な感情を隔離し、時として感情論に理解を示さないため、しばしばトラブルを招く。
鋼鉄の錬金術師レオナルド 近代流派所属。意味のない会議には出席しない自由な性格。
創造魔術の探究者ハボック 現代流派。いわれなき中傷からエデルカを庇う。
天の声に耳を傾ける者フィリック 無断欠席の多い魔術師。近代流派所属。天使と交信するため、ほとんど屋敷から姿を現さない。
巨兵の使い手ゴディアック 三年ほど前から行方知れずのマスター。彼がどこにいるのかは誰もわからず、連絡も取れていない。
魔術剣士ファナム 魔術剣士として名を馳せたマスター。現在行方をくらませている。
聖人リーン 聖人の名を持つマスター。世界各地を渡り歩いているため議会に出席しなかった。
簡易用語集
ブリュンヒルデ
人類防衛軍が開発したとされるパワードスーツの一つ。魔術を使用することができる。
しかし、リュース曰く古代流派の神話再現だ、とも。ブリュンヒルデは恐れを知らない者しか装着できないように心理プロテクトが掛けられている。
心理状態がブリュンヒルデの求める数値に達した場合、軌道因子であるニーベルングの指環を持つ者に多大な力を与えてくれる。
ヴァルキリーシステム
ヴァルキリーをオペレートするOSのようなものであり、またヴァルキリーそのものを指す。装着者をサポートする。
オーロラドライブ
ヴァルキリーの核を成すコア。ここから大量のエネルギーを供給され、ヴァルキリーは無限の魔力を獲得できる。しかし、その正体は謎であり、魔術で動いていることしか外部からは把握できない。
退魔剣
文字通り退魔の片手剣。非常に軽く、ソラでも楽々扱える。あらゆる魔術を打ち消すというアドバンテージを保持しているが、使用者の腕前によってはただの鉄くず同然となってしまう。非殺傷モードを搭載しているため、起動すれば敵を殺さずに済む。
銃槍
先端にマシンガンの銃口が搭載された槍。槍としても射撃武器としても使用可能。
ブリュンヒルデにおけるメインアームであり、オーロラドライブから供給される魔力によって無限に魔弾を放出できる。
パワードスーツ
防衛軍の一部エリートに配備されているパワードスーツ。マリとヤイトが主に着用する。
装備は多岐に渡り、パワーアシストに加え光学迷彩、対衝撃吸収装甲など高性能のアーマーだが、それでも空に浮かぶ魔術師にはまともな効果を発揮できない。
ペガサス
防衛軍に配備されるVTOL戦闘機。魔術師の出現が予期できない現状で、発着場なしに緊急発進できる戦闘機が求められた結果開発された機体。本来ならば長距離飛行及び、大量の武装の保持が不可能なVTOL機だが、莫大な資産と技術革新によって、大量の武装搭載と長距離運用が可能になった。
しかし、人間界では技術の革新であるペガサスも、魔術師にとっては鉄のオモチャにしか過ぎない。
ドローン
円盤型浮遊デバイス。監視や警護など非常に役立つ優れ物。軍学校では不足する教員の代わりに生徒の監視を行ったりもする。
監視カメラのような死角もなく、独自に動き回れるため使い勝手がいいが、魔術師を捉えることは不可能。
人類防衛軍
元は国際連合軍だった。国や人種、言語、宗教観などを問わず、人間が一纏めとして集う組織。
魔術師の存在は世界の存亡すら脅かした。強大な敵の存在に人間は一つにならざるを得なくなったのである。
既に大量の戦死者を出しており、北米大陸と南米大陸が奪われている。戦力差は圧倒的だが、軍はプロパガンダで優勢だと偽っていた。
魔術教会
様々な流派や思想を問わず、魔術師が一つになった組織。北米と南米の大地を資源に浮き島を構築、太平洋の真ん中で人間の動向を監視している。
全ての魔術師を集まらせた結果、魔術師刊では大まかに三つの流派が誕生した。古代流派、近代流派、現代流派である。ほとんどの魔術師が現代人の中、三つの勢力は弟子の取り合いで争った。
王と呼ばれるような存在はおらず、十二人のマスターで構成される魔術評議会で方針を決定する。
ドルイド
自然を愛する魔術師。使用する魔術も自然に関するものが多い。本来は戦闘向きではなく、どちらかというと他者を支援するものが多い。
所属としては古代流派だが、ドルイド長であるハルフィスは他流派にも寛容的だ。
古代流派
いわゆる昔ながらの魔術師。不老の魔術も古き魔女たちが創造した。薬草術や箒を使った浮遊術など今現在における魔術の基礎が古代魔術には含まれている。神話再現等も古代魔術の分野。全ての起源は自分たちにあるとして、新しい魔術に対し悪感情を抱く魔術師も多い。
近代流派
錬金術や召喚術、魔導書の創造などの近代魔術が主となる。分野的には古代流派とも被る部分が多い。
古代と現代の間とも言える存在であり、古代流派と同調する者、現代流派に組する者、中立を守る者など、最も個性的な魔術師が多い流派だとも言える。
現代流派
今までの常識にとらわれない新しい魔術を模索する流派。その形式も様々で既存の魔術をアレンジしたものから、完全なオリジナルも含まれる。しかし、完全オリジナルの術式の場合、認知度の影響から術式の威力が低下してしまう。ただし、そのデメリットを考慮しても応用力が効くため使用方法によっては既存の魔術を凌駕することも可能。
浮き島の中で一番嫌われているが、アレックが彼らの保護に乗り出したため、安全は守られている。
アミュレット
魔道具の一種。お守りのようなもの。身に着ける者に効果を付与する。
クリスタルは何の知識もない時にアミュレットを精製し、ソラに渡した。そのため、色素変化が起こり、ソラの髪と目の色に変化が生じてしまった。
フリントロックピストル
古式銃の一つ。クリスタル及びアレックが使用する銃には、刻むことで効果を発揮するルーンが施されている。さらには召喚術などのカスタムを加えているため、本来ならば時間のかかるリロードを一瞬で終えることが可能。ダブルバレルピストルや、ヴォレーピストル、ラッパ銃、マスケット銃やペッパーボックスなど様々な種類が存在する。
加えて、古式銃は現代銃よりも魔術の相性がいい。クリスタルがフリントロックピストルを使用するのは古い慣習のせいだけではない。
ルーン
ルーン魔術のこと。武器に刻むだけで恩恵を受けることができるものもあれば、オーディンしか使えないとされるルーンも存在する。しかし、クリスタルはオーディンの持つルーンを刻み、自分の銃を強化してみせた。
再現魔術
神話再現や創作再現など複数存在する。英雄などを自身に再現し、英雄の如き力を得る魔術。その対象が強ければ強いほど、再現者の戦闘能力は高まるが、再現する魔術師が訓練をしなければならないのは言うまでもない。
認知度の高い古い神話であるほど戦闘力が増し、逆にアニメ等を再現した創作再現だと威力が極端に落ちる。