たとえるならば暴風雨か?
頭がガンガンするし全身…特に脚が痛い。その痛みで俺は目が覚めた。
瞼を開けると、友貴と雨衣、野嶋さんが傍に居た。野嶋さんは涙を溜め、俺を見つめた。
「何が……あったんだ? 何でこんなに全身が痛いんだ?」
「やっぱ、覚えてないかぁ」友貴はリンゴの皮を剥きはじめる。
昨日、一昨日だったか?
あの時、野嶋さんを家まで送り届けて一人で俺は帰ろうとしたんだ。そのときなんかおっさんに襲われたのか。相手は何が目的だったんだ? あの時は奏那と奏斗しかいなかったよな。てことはだ、俺かちび達を狙ったってことか?
「奏、どうしたの? 」
「俺を助けたのってやっぱり友貴か?」
友貴は頷くとまた、林檎の皮をむきはじめた。
友貴。
俺は何度も友貴に助けられてきた。そう、何度も。
あの華奢な体のどこからあの強さが出てくるのか。何度か考えたこともある。
まず友貴の家族が凄い。双子が雨衣で、父親は空手の師範代であり、小児科医。母親は幼児服デザイナー。
「はい、林檎。剥けたよ。食べな」
「さんきゅ。あのさ、友貴には色々迷惑かけてるよな、俺。ご両親にもそうだけど」
「え? いきなり真剣な目で見るんだもん。何言うのかと思ったら、そんな事なの? その事は心配しないでって。母さんの親友の息子でもあるんだよ奏は。何度も言ってるんじゃん。そんなことより今は体を休めるのが先なんだから。ほら、奏那ちゃん達は野嶋さんが預かってるから心配しないで」
「野嶋さんち? 迷惑なんじゃないのか」
「野嶋さんが、自分から言ったんだよ。『私の家は保育園なのでまかせてください』って。この際しばらく預かってもらってるんだよ。僕んちが医療費負担するから、ゆっくり休みな。ノートとかも僕が取っておくし、勉強も学校帰ってからこっち来て教えるよ」
「友貴……本当にありがとうな。俺は最高で最強の心友を持って幸せ者だ」
「ふふふっ。なんか照れるなあ。そう言ってっくれると嬉しいよ。でもね、これは僕だから出来る事なの。だからね、全身調べてもらっちゃえ! 僕がここの先生に「スミからスミまで調べて」って言っといたからね、覚悟しといてね。なんてうっそ―」楽しそうな笑顔の友貴。
友貴。怖いっつーの!
「嘘だよ。たったの一週間だから。もしかして僕が居なくて寂しいの?」急に抱きついてくる友貴。
「友貴……ハズいんだけど。他の人見てんじゃん。ってか痛い」
「僕と一緒に居たいってこと?」
「どう考えたらそうなんだよ。まず、骨折したところを触る奴がいるかって」
てへへ、と笑いながら俺の口元に林檎を近づける。
「俺、一人で食べれるから。食べさせなくていいよ。左手使うから」
慣れないが左手で林檎を刺し食べた。




