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KIds Panic  作者: 詩夜
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第一話

母さんが家をでて数年。俺は一人で生活することにも慣れた。アルバイトも限度を決め、勉強に支障が出ない程度に減らした。

やっと落ち着いた生活になると思った。なのに…


生活が一変してしまうことにも気づかすに俺はのんきにテレビを見ながら昼食を作っていた。

 玄関のベルが鳴る。俺はいったん火を止めて玄関に向かった。玄関を開けてそこにいたのは見たことのない子供たち。

「どうしたの。なんか用事あるか?」 

「お、お兄ちゃん…」と、小さな女の子が見上げて俺のことを見つめる。その子は小さな赤ちゃんを抱いていた。

「とりあえず、中に入りなよ。寒いでしょ?」

 俺がそう言うと、子供たちは小さくお邪魔します。と言って家に入った。子供たちのしつけはちゃんとしてあるようで、靴はきれいに揃えていた。

 絨毯に子供たちを座らせる。子供たちの中で一番小さい赤ちゃんがはいはいで俺に近づきひざに、座った。

「で、どうしてこんなところにいるの?子供だけで外に行くのは危ないよ。何か理由があるのかな?」

「お母さんが死んじゃったの。だから、誰も面倒を見てくれる人がいなくて。親戚のおばさんたちにもだめ、って」

 小さな女の子はいまにも泣きだしそうに瞳を潤ませた。

「で、俺が3人の面倒を見るって事か。まぁ、小さな子たちだけじゃ大変だしなあ。 

どうしようか。えっとまずは、道具とかないと駄目だよな。二人ともちょっと待ってな。あ、そう言えば二人の名前何?」

 女の子はにこりとほほ笑んだ。

奏那かなっていうの。あのね、これ渡してって言ってた気がする。『母子手帳』っていうのだって。ママがお兄ちゃんに会ったら渡してって言ってたの」

 奏那が渡したのは3冊の母子手帳だ。双葉奏那、双葉奏斗、そして俺の名前、双葉奏と書かれてある。母さんは無くなる前に俺にこの姉弟を託したんだ。親戚よりも俺に。それぐらい母さんに信頼されていたという意味だと感じた。自分はこの子たちを守って育てていくんだ。そのためには、せめて赤ちゃん用のベビーグッズというものが必要だろう。俺は立ち上がって押し入れに向かう。しばらく探すとべッビーグッズ一式と言う感じでほとんどの必要な物が出てきた。

「あ、粉ミルクと紙おむつがたりないや」

 俺は足りない二つを買いに行くことにした。奏斗にを今さっき発掘したベビーカーに乗せ、財布を鞄へと入れると玄関に行き奏那に靴を履かせた。

「お兄ちゃんどこか行くの?」

 奏那は見あげて訊ねる。

「奏斗の紙おむつと粉ミルクを買いに行くんだよ。奏那もいくから、おいで」

 奏那が家の外へ出た事を確認すると家の鍵を閉めた。

 まずは、薬局へ行けば粉ミルクはあるだろう。と思い薬局へと歩を進める。ふと友貴の存在を思い出した。友貴の家は小児科だ。だから行けば何か教えてもらえるかもしれない。ただ、奏那達は嫌がるだろうと思うけどな。

 薬局へとつくと赤ちゃん用品の売り場を探す。周りの人から見れば少し異様な光景かもしれない。高校生くらいの男子がベビーカ-に赤ん坊を乗せ片手に小さな女の子の手を引いている。

「あ、友貴」

 友貴が絆創膏売り場で一人悩んでいる。なぜ、絆創膏ごときで悩むのかと思いながら友貴に話しかける。

「友貴、何してんの? 」

「見りゃわかるでしょ。消毒液と絆創膏はどの組み合わせがいいか悩んでるの」

 友貴は絆創膏から一旦目を離し俺の方に目線を向ける。そして奏那、奏斗を見て少し驚いた様子で言った。

「奏、いつの間に赤ちゃん産んだの?」

「俺がいつ妊娠したんだよ。」

「でも、二人とも奏にそっくりだもん。目とか鼻とか」

「そりゃあ兄妹だからそっくりに決まってるだろ」

「じゃあお母さん帰って来たんだね? 」

 俺は首を横に振る。そして、今までの事を友貴に説明した。

「じゃあ困ったら家に来なよ。あ、予防接種の予約もしないとだよね」

「その事なんだけどな、買い物終わったらお前んち行って、予約の紙書こうかなって思ってたんだよ。丁度良かった」

 俺は、親がいた時からずっと予防接種を2回受けていた。インフルエンザが罹りにくくなるし、罹っても軽くで済むからだ。そう思っているから、奏那達にも予防接種を受けさせようと思っていたのだ。

「じゃあ終わるまで待つよ。終わったら一緒に行こう」

 俺は目的の紙オムツと粉ミルクを購入すると友貴の家である、小児科へと友貴と共に向かった。

 院内に入ると友貴の母親が受付をしていた。

「あら奏くん。どうしたの、その子たち?」

 友貴の母親は奏那と奏斗を見た。

「お母さん、ちょっと来て」、と受付の奥に引っ張る。そしてその場で10分ほど何かを説明する友貴。

 そして戻ってきた二人。

「あのさ、奏。閉院時間まで待ってくれないかな? お母さんもお父さんも何か奏に話したいみたい。時間かかるけど待っててだって」

「そっか。分かった。……そう言えばあそこにいるのって保健室の先生だよな?」

「そうだね。それがどうかした? 」 

 俺たちに気付いたのは相手の方だった。保健室の先生と思われる女性が俺たちの方に来た。

「あら、友貴君と奏君? どうしたのかしら。その子たち」

「あ、俺の姉弟です。ただ、少し先生に頼みたい事があるんですよ。聞いてもらえますか?」

「ええ。何かしら」

 俺は奏斗を膝に乗せ、先生に頼もうとしている事について話す。

「この子たちを、俺たちが授業を受けている間、預かっててもらえませんか? 俺、バイトしてもたかが知れてるし、保育園とかは入れられないので。授業のときだけでいいです。休み時間は俺が世話しますので、できませんか?」

「まぁ、いいんじゃないかしら。奏君は特待生で先生からも信頼とかあるし大丈夫よ。分かったわ。明日から連れて来て。駐車場で預けてくれれば大丈夫よ」

「よかった。これで安心できます」

 保健室の先生は話が終わると自分がもといた場所に戻って行った。

 数時間たち、閉院時間。誰もいなくなった院内に俺達三兄弟の名前が呼ばれた。

「あの、先生。お願いしたい事があるんですけど」

 奏那が最初に診察を受けている間、俺は先生に今日来た目的を話した。

「血液型を調べる、ね。そう言えば、奏君もまだだったと思うんだけど。一緒に調べておくかい?」

「え、俺も?……そうですよね。分かってた方がいいですよね。じゃあ俺もお願いします」

 俺は、はっきり言って注射が嫌いだ。だけど、今回は姉弟達の見本になるためにもする事にしたのだ。

 看護士が三本の注射器を用意した。その一本目は二人の兄貴であるおれが、手本として最初に受けることにした。

 キラリと尖った注射器が見えた。俺は慌てて手を捲くった。

「すぐ終わるからね」先生はそう言うと同時にさす。そして注射器を引いていく。赤い血が少しずつ注射器に溜まっていくのが見えた。

 俺が終わると次は奏那の番だ。俺は自分の注射が終わると奏那を膝に乗せ少し強く抱いた。奏那も何か感じたのかもしれない。急にぐずりだす。

「大丈夫だよ。すぐ終わるからね。お兄ちゃんもやったんだよ。我慢してね」先生はさっきと同じように捲くった歌のの肌に注射器をさす。さした瞬間ぐっ、と俺は奏那をもっと強く抱いた。

「ほら終わったよ。大丈夫」先生は笑顔で奏那に微笑みかけた。

奏那の方は泣き出しそうな目で俺を見上げる。次は奏斗か。

「赤ちゃんは、私達がやりますので、二人は受付に戻っててください。赤ちゃんって、大変ですから」

 看護師にそう言われ俺は奏那を抱いて待合室に戻った。戻って椅子に座ってから聞こえるのは奏斗が大きな声で泣き出す声。俺は少し驚いてしまった。赤ちゃんってこんなに大きな声で泣くんだ。そして看護師に抱っこされ出てきた奏斗。まだ少し泣いているようだ。

「まず、あやしてあげてください。あそこまで大きな声で泣いたんです、すぐに寝ちゃいますよ」

 そう言われて椅子に座っているまま奏斗をあやす。軽く奏斗の背中をポンポンといっていのリズムで叩く。しばらくすると奏斗は眠り始めた。

「今日はもう遅いからうちでご飯を食べて行きなさい。奏君は勉強もあるでしょうし、今日は大変だったでしょう」

 俺はそれに甘えてごちそうになる事にした。

「どうぞ、今日は大変だったでしょう。たくさん食べていいわ」

「いただきます。奏那もほら言って、いただきますは?」奏那は俺の隣の子供用のいすにちょこんと座って、奏那の小さな手を合わせた。

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