表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
プルプルスライム魔獣に転生した私は、イケメン王子にプニプニ可愛がられるだけのスローライフが待っていました。  作者: 逆立ちハムスター


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

3/3

3

薄れゆく意識の中。

 ガサリ、と草を分ける音が聞こえた。

 

(魔物……? もう、どうにでもして……煮るなり、焼くなり、天ぷらにするなり……「調理師免許」持ってるから、コツは教えられるわよ……)

 

 その時だった。

 

「――おっと」

 

 グニャッ。

 

「ぎゃあああああああ!! 痛ああああいいいいい!!!」

 

 声にならない悲鳴が森で爆発した。

 何者かが、水たまり状になっていた私を、遠慮なく踏みつけたのだ。

 

 激痛と衝撃。

 しかし、そのおかげで意識が覚醒した。

 

「おや? こ、これは……!?」

 

 上から降ってきたのは、鈴を転がすような、それでいて凛とした低い美声。

 

 霞む視界(仮)を必死に上に向ける。

 そこに立っていたのは、一人の青年だった。

 

 眩しい。

 発光キノコより、ずっと眩しい。

 

 燃えるような金の髪、吸い込まれそうな深いサファイアの瞳。

 彫刻のように整った鼻梁に、薄い唇。

 狩猟服に身を包んでいるが、隠しきれない気品が溢れ出している。

 

 一言で言えば、超絶イケメン。

 二言で言えば、野生の王子だ。

 

 彼は驚いたように目を見開き、私をじっと見つめている。

 いや、正確には、足元に無惨に広がる「私」を見ている。

 

「まさか……この独特の白い光沢、そして踏んだ時の、この奇跡的な弾力。間違いない……!」

 

 野生の王子様(仮)は、感極まったような表情で、私の前に膝をついた。

 

「伝説の『プニリタリアスライム』じゃないか!」

 

(プニりたいスライム……?)

 

 いや、待って。いま「伝説」って言った?

 

「古の文献に記されていた、究極の触り心地と魔力を持つという希少種。まさか実在したとは……。ああ、ずっと探していたんだ。君のような、至高の弾力を!」

 

(え、ちょっと待って。その「伝説」の理由、もしかして「プニりたい」から「プニリタリア」なの? 嘘でしょ? もっとこう、世界を滅ぼす魔力があるとか、そういう系じゃないの!?)

 

 戸惑う私をよそに、王子様はうっとりとした顔で手を伸ばしてきた。

 

「……ああ、少し失礼するよ」

 

 大きな、けれど温かい掌が、私の体を包み込む。

 

 ひょいっ、と。

 地面に広がっていた私は、彼の両手によって掬い上げられた。

 

 重力に従って、私の体が「プルン!」と大きく揺れる。

 

「っ……!」

 

 王子様が、小さく息を呑んだ。

 

「素晴らしい……。この絶妙な自重による変形。そして指を押し返してくる、力強くも繊細な反発力……。これこそが、私が追い求めていた理想のプニプニだ……!」

 

(いや、評価ポイントが変態のそれなのよ!)

 

 ツッコミを入れたい。

 けれど、彼の手のひらが、あまりに心地よい。

 

 彼は大きな手で、私の体を優しく、けれど熱心に揉み始めた。

 

 プルン。プルプルン。

 

「あっ♡……うっ!……?」

 

 体が、揺れる。

 形を整えるように、マッサージする。丁寧な手つきで。

 

(なにこれ……。なにこの感覚……。ヤバい、気持ちいい……。マッサージを一斉に全身にされている感じ。それに私、今、めちゃくちゃ「可愛いがられてる」感がある……)

 

「いい子だ。怖がらなくていい。今日から君は、私の宝物だ。城へ連れて帰ろう」

 

 王子様は、愛おしそうに私を抱きかかえ、胸元に引き寄せた。

 顔が近い。

 至近距離で見るイケメンの破壊力に、私の白い体は、心なしかピンク色に染まった(ような気がした)

 

 異世界転生。スライム。

 前途多難かと思われた私の新生活は、どうやら「最高級の癒やしペット」として幕を開けたらしい。でもなんでスライム? 猫とかでいいんじゃない?

 

 ……まあ、でもいいか。こんな腐った錆びキノコの森より。良い生活、送らせてもらえそう。


 それに「ペット飼育管理士」の資格も持ってるし。

 自分を自分で管理するってのも、新しいわよね。

 

 私は王子様の腕の中で、されるがままに、プルプルと身を委ねることに決めたのだった。


これから私の身に何が待ち受けているのか分からない。もしもの時は、清く逃げ出そう。

でも今は、キノコの毒が全身に回ったのか、王子様に心を奪われてしまったのか、それは定かではないけれど。

心地良いのは、確かだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ