楽園をめぐって
「空20、海4021の合計4041です!」
「魔法は空を優先しろ!」
「矢の補充は十分だから、次は魔法使いの方に行ってください」
「南波たちは?!」
「位置についたそうです」
「合図のタイミングは俺が決めていいんだよな?」
「はい!」
俺達の楽園に向かって、見える限り十隻ほどの船が来ている
それらの船の旗にはツルが絡まってできた十字が書かれており、
乗組員は鎧を着込んでいる
「では、魔石を8個くれ」
「どうぞ」
「海の上でフルアーマーなんかしている臆病者どもに、
俺達に凡百の小細工は意味が無いことを教えてやらないとな」
渡された8個の魔石を砕き、
中に内包されていた魔力が辺りに充満する
つがえる矢は特別である必要はない
異能で構築する無駄な手間は省く
【弓神の末裔】【毒竜の加護】
合わさり放つのは必滅の一撃
『賢者を星の座に送る一射』(カタステリズモス)
千映さんの異能【無名の情報屋】は、
対価を支払って使えば、何でも調べられる反則級の力だ
当然、楽園として順調に進んでいるとはいえ、強くなるための努力は惜しまなかった
その結果・・・
「敵船、消滅!生存者が海に落ちていってます」
「あっ!海を凍らせて地面を作っています」
【毒竜の加護】は、あの人に負けた後に手に入れた異能
予選敗退した奴らの大半は【〇〇の加護】運が良ければ【〇〇の寵愛】を手に入れる
「このままじゃ・・・!」
「大丈夫、予想の範囲内だ!」
【毒竜の加護】
:毒を吐く竜の加護
溶解、消滅、破壊の力をもたらす
「献上系と生産系の加護持ちは下がれ、そろそろ来るはずだ」
空から巨大な船と、それに追随するように剣、槍、斧、氷柱、岩石が降り注ぐ
空の敵を巻き込み、海面に衝突、
氷の地面は裏返り、
やつらを閉じ込める蓋になった
「よし、伏兵がいないか警戒しつつ、被害状況を確認しろ!」
この世界に来て学んだんだ
まともに戦う必要は無い
敵兵の中には、少なくない人数勇者もいたはずだ
だが、これは選択の結果
黙祷の後、
家に帰り、面倒な書類仕事に勤しもうと、海に背を向けた瞬間・・・
「っ!敵、生存者1名・・・ッ!」
千映さんの声と同時に天に登る水の柱
「アーサーです・・・」
「おいおいまじかよ。ラスボスは城で偉そうに座っとけよな・・・。」
「」
遠すぎて何を言っているのか聞こえないが、
目は良いから表情は見える
「ハッ!怒りたいのはこっちの方だっての」
「」
「チッ!」
バルスとでも叫んだのか、
あまりの眩しさに3秒ほどムスカ状態になる
が、恐らくアーサーがいるはずの位置に向かって矢を放つ
視力が回復した後、すぐさま補給班から全ての魔石をかっさらい、その半分を砕き
『賢者を星の座に送る一射』を放つ
矢は九つに別れ、アーサーに向かってホーミングする
しかし、それは刺さったと思った瞬間、煙のようにアーサーが消え
矢はこちらに向かって戻って来る
「全員その場に伏せろ!!」
破裂音、突風、
顔を見上げると一直線上に”斬れた”場所に海水が流れ込んできている
予想通り、アーサーは目に見えない速度でこちらに移動していたのだ
「負傷者無し・・・随分と信頼されてるみたいだね」
「生憎、あんたと違って、仲間を見捨てたりはしないからな」
「見捨てたんじゃない。彼等は邪悪を討ち滅ぼすための尊き犠牲になったんだ。
価値のある、名誉の死だ。」
「へえ、どうでもいいな!」
振り向きざま5つの矢を放つ
特別、ホーミングとかの能力は付与していないため、当たり前に避けられる
が、
目が良いおかげでアーサーの動きの軌跡は見えるし、
先程の矢は仕掛けを作動させるためのもの
圧倒的な素早さで地雷の発動後に回避を成功させるアーサーの化物っぷりに驚きつつ、
次の行動にうつる
放った矢を掴み、移動
薬や強化魔法で最大限の強化
その間常に矢を放つことで行動を制限
・・・
「これで終わりか?
それでは、改めて名乗ろう。我が名はアーサー
ユグ・ヴルーエル所属、序列1位の勇者である!
楽園の名を騙るものたちよ、今なら降伏を許す」
「ここからが始まりだ!!」
ズドドンッ!と、最初に放った『賢者を星の座に送る一射』の、
九つの矢すべての命中を確認した
しかし、硬い岩盤を容易く撃ち貫くはずの矢は内7本がひらひらとした軽そうなマントに刺さり、
残りの2本だけが左足に傷を負わせる結果になった
「っ!」
「ボーっとしてんじゃねえ!」
再び矢の連射を始め、
距離をとる
動揺、足の負傷、その両方か、
先程とはうって代わり、高速で避けることはせず、迫る矢の雨をことごとく撃ち落としている
撃ち続けてなんとかなるなら楽なんだが・・・
「ハハッ、バケモンめ」
走り、距離を取りながらも、連射の速度は落としていないはず・・・
なのに、
やつは歩き出し、徐々に速度をあげ、少しずつ距離が縮まっていく
上下左右、あらゆる角度から迫る矢が、
一振り剣を振るえば、
まるで自ら剣に当たりに行くかのように叩き折られる
これは明らかに軌道がずらされている
心臓を狙った9本の矢は2本だけ、しかも狙いとは違う場所に刺さったし、
威力も、
足を根本から吹き飛ばしてもおかしく無かったはずなのに、そうはならなかった。
高速移動、剣技、異常な耐久、おかしな矢の軌道・・・
コイツいったい、どんな能力なんだ?!
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