現世
「1、2、3...7、8、9、10、11、...15、...一匹足りない」
ある日、久しぶりに異形を逃がしてしまった
「やはり、10体を超える時は異能も使った方がいいな...」
逃した異形がどこに行ったのか探しに、いつもより遠い場所まで行ってみた
すると、
「なんだ?この感覚は...覚えがあるような、無いような...」
気がつくと、俺は深い森の中、
エルフたちが暮らす国、フリッグローズにいた
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あの感覚は転移の感覚であり、
それを思い出せなかったのは、時間が経ちすぎているというのもあったが、
普通の転移とは異なっていたことも大きいだろう
「■■■!朝食が出来たぞ、戻ってきなさい。」
「はーい!」
ここに俺の肉体は無い
ここに俺を認識できる者はいない
ここの人々の名を知ることすら、俺には許されていない
「聞こえるか?」
「聞こえないなら返事しろ。」
「おーい」
「ふ、触れられん」
「お前も聞こえないのか?」
「お前も?」
もしかしたら、お化けだと思われて、わざと無視されているのではと思い、
手当たり次第に声をかけて回ったりもした
しかし、その全ては徒労に終わったのだ
「「「「我らが偉大なる神よ、今日も我らをお護りください」」」」
それでも、生きている人を観察するというのは、
久方ぶりの暇つぶしとしては十分で、
毎日昼頃にある、この祈りの時間には、皆にひれ伏されている気分を味わえて、
結構楽しい
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30日が経過した頃、旧準備室に戻されたが、
そのたびに意識だけを転移させ、現世のさまざまな場所に行った
そして、再び、フリッグローズに訪れたとき、
ついに俺を認識できる子供に出会ったのだ
その子供の名前はわからないが、
それを伝えると彼女は、本と花を持ってきて、
”ハナニラ”と言っていたので、そう呼ぶことにした
「■■さん、今日は何して遊ぶ?」
「...うーん、ハナニラ、ここ数日、ずっと俺と遊んでいるが、他の友達とは遊ばないのか?」
「・・・私はハーフだから、他の皆とは遊んじゃいけないの」
「そうか...」
まあ、なんとなくわかってはいたけどな
ハナニラは、ボロ小屋に1人で住んでいて、
いつも雑用をさせられている
とくに、他のエルフたちが使っているポーションのほとんどは、
ハナニラが作ったものを安く買い叩いて、奪っているものだ
「そんなことより!遊ぼ?」
「...そう、だな」
「あれだして、猫ちゃん!」
「ははっ、虎なんだけどな...」
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30日はあっという間に過ぎた
ハナニラは別れを惜しんで、泣いてしまったが、また今度、会いに行くと約束したら、
涙を拭い、はにかんだ姿で見送ってくれた
俺は再び旧準備室で目を覚まし、
ある研究を始める
現世への干渉
意識だけの状態でも、異能自体は使えることがわかっている
しかし、それが現世に影響を及ぼすことは決して無い
これを解決する鍵は、異形どもにあるはずだ
異形は旧準備室の外からやって来る存在
こちらだけでなく、現世においても干渉が可能かもしれない
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異形の研究1体目、
こいつらは口があり、発音が可能であることはわかっていたが、
解体した結果、内臓器官がなく、発音は魔法的な現象によって起きていることがわかった
研究2体目、
1体目に比べて体が微妙に柔らかい
個体差だろうか?
研究3体目、
2体を解体する際、暫定腹である、口?の下から切り開いていたが、
背中側から切り開くとそこにのみ血のような液体が集合していたことがわかった
以降、解体の際はそこを避けることとする
研究4,5,6体目、
生け捕りにした3体に、前3体の体液を注入、
内1体の傷口が再生せず、傷が治らなかった
血液型のようにそれぞれに合う合わないがあるのかもしれない
...
研究23体目、
久しぶりの新しい発見だ
異形に他の異形を捕食させることで、力が倍増した
しかし、凶暴化したため、誤って殺してしまった
研究24体目、
この個体にすでに死んだ個体を捕食させたが変化は見られず、
生きた個体も同様であった
23体目は特殊個体だった可能性がある、本当に惜しいことをした
...
研究51体目、
再び特殊個体の捕獲に成功
口から小型の異形を複数生み出していたが、異形たちの体内にそこまでの空間は無いはず、
空間系の能力を持っている可能性が高いため、この個体を元に研究が進展するかもしれない
...
研究1101体目、
再びの特殊個体の捕獲に成功
この個体は分裂を繰り返し、高度な連携をしてきた
1体1体に意識はあるが、情報は共有するようだ
...
51体目が死んだため、
その死体を加工し、その能力の一部でも再現可能かの実験にシフトチェンジすることにした
...
1101体目の研究により、
コイツラの存在理由と、ココについていくつか仮説が立てられた
が、これを証明する手立ては無いし、証明したところで意味はないので、省略する
研究2000体目を超えたので、
久しぶりに現世を観賞し、気分転換をしてみることにする
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