逃亡者の楽園【アバロン】へ行く
「・・・あの人が捕まっちまうなんて、俺のせいだ」
「保隅さんのせいじゃありませんよ、私がちゃんと確認していたら・・・」
「お二人共!しっかりしてくださいよ。あの人?ってのが誰かわかりませんけど、僕達はアバロンの場所を知らないんですから、しっかり案内してくれないと!」
俺が港に着いたとき、
すでにそこには半数以上が到着していた
船の異能を持っていた南波 海斗は俺のグループにいたから、出港自体はいつでも出来た
ただ、今いる分だけでも島に連れていき、残りは港で隠れて待つという案を、
俺は認められたかった
もしかしたら、そっちの案の方が、捕まる人数は少なかったかもしれない
でも、結果として、全員を待つという選択により、97人が王国に捕まった
これは変えようのない事実だ
「・・・くそだっせえな、俺」
ポツリと、ついこぼれた言葉
それは、自分への不甲斐なさから、落胆から来た言葉であり、
今回のことだけでなく、異世界に来てから、ずっと思っていた、胸に秘めていたことだ
「強い異能を手に入れて、傲慢になって、一人称を俺様にして、
そして、負けて、負けて、負けて、負けて・・・
ついにはちゃんと逃げることも出来ねえのかよ、っクソ!!!」
八つ当たりに壁を叩いたところで、事態は何も変わらず、
叩いた手の痛みがその現実を突きつけてくる
「・・・ふう、変わるんだろ保隅信保、
優れた血統を受け継いでいるんだろ保隅信保!
俺は弓鬼、弓神の末裔、保隅信保だ。目が眩むほどに明るい光になれ!!」
鏡に向かって叫ぶ
【弓神の末裔】
:弓の名手・小笠原貞宗、那須与一、源為朝、らの血統より、
その才を受け継ぐ
孤児だった俺は若頭に拾ってもらって、恩も返せてない不孝者
力を得て、あのカリスマに近づこうと必死だった
そして、俺より強い人に会い、その光の下で生きたいと思った
でも、その光は消え、俺の後ろには道に迷っている奴らがいる
こんどは俺が光になる番だ
「千映さん、追手は来ていないんですよね?」
「は、はい!」
「じゃあ、予定の航路を少しずれるが、アバロンより少し手前にも小さな島があるはずだ。
そちらに寄って、十分に休憩をとる。この船は南波の異能で出している以上、もしなにかがあった場合に各自でなんとかしてもらう必要がある。元船乗りでもいれば良かったんだが、ここにはいない。
今手伝えることがないなら、上陸した際に労ってやれ!」
「「「はい!!」」」
「千映さん・・・ちょっと」
「?」
これからを話しておかなきゃいけない
「えっ?!どういうことですか!?!?」
「だから、あの人がアバロンの場所を吐かないか、週に1回でいいから、調べてほしいんだ」
そう、アバロンは、事前に情報を知っていないと、ガルドヴェルの造船技術じゃ、到底発見出来ない距離にある
港から3日の距離ではあるが、
それは異能で波に関係なく進めるという前提の元であり、
食料の関係上、まず見つからないだろう距離を条件に、そこへ行くことを決めたのだから
「何もあの人を信用していないわけじゃないんだ。ただ、ガルドヴェルにはいなかったけど、
他の国には読心系の異能を持ったやつがいないとは限らない」
「なるほど・・・わかりました」
・・・わかっている
そもそも、捕まった時点で、あの人が生きているのかどうかわからないし、
それを確認する勇気は俺にも彼女にも無い
この異世界に来てから、俺達はあの人に助けられてばかりだ
変身薬だって、持ってこれた素材を多く使って、人数分用意してくれたし、
有益な情報は必ず共有してくれた
「保隅さーん!島が見えました!!」
「では、皆予定通りに動いてくれ。何か相談があれば、船に俺か千映さんがいるようにするから」
その後、
アバロンへの航海は、嵐に見舞われながらも、無事に成功し、
俺達は楽園作りの1歩を踏み出した
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