第14章 善と悪 ⑤ 裁判
進級テストが終わると 裁判が始まります。
カイは何を思い どう訴えるのでしょうか?
2021-05-31 17:19:00 | 未来記
2008-11-01
カイの裁判は、いつになく厳重な監視体制で行われた。
各ホームルームで反省会を行った効果があったのか、特に混乱もなく、決められた日程を終え、静かに判決が下された。
裁判では、相手が手を出したから、しかたなく応じたと、正当防衛を訴える生徒も何人かいたが、裁判官はこう言った。
「パトロール隊員は君達のケンカを止めるために、誰ひとりとして、
殴るという行為はしなかった、と報告を受けている。
君達を取り押さえるために、身体に深い傷を負ってもだ。
君達には、殴られても殴り返すことをしない努力が、
防犯カメラで確認することができなかった。
スクール内では、どんなひどい目に遭っても、
相手に危害を加えてはいけないというルールがある。
暴力ではなく、相手が悪いことをしたということを
裁判で訴えることが マグフィ・エリアのルールだ。
このルールに従えず、このような暴力行為をおこなった者は、
このスクール内での教育を受ける資格がないと判定する。
ケンカをした両グループのうち、スクール内の防犯カメラを確認して、
激しい暴力行為を行ったと、裁判員から意見のあった生徒について、
次のような処分を行う」
主犯のゼノン以下、暴力行為が甚だしかった生徒は退学処分となり、その数は20人を超えた。
ゼノンに足を引っかけられて、倒れて頭を打ち、気を失ったカイは被害者だ。
裁判ではおとがめなしだったのだが、自分が気を失ったせいで、仲間が退学になってしまった。
カイは、ずいぶんいたたまれない気持ちで裁判を見守っていたようだ。
裁判でも、仲間のことを思うあまり、被害者ではあっても、ゼノンに対して、日ごろからのいじめ行為を訴えることが、できなかった。
そんなカイに、ハリー先生はマグフィ・エリアの別のドームのスクールに転校するようアドバイスした。
しかし、カイの家族も今回のことで、マグフィ・エリアから他のエリアへ移る決心がついたようだ。
カイの表情に、少し明るさが戻った。
裁判が終わってから、移住の報告にハリー先生を訪ねたカイは、こう言った。
「ユウキ タイセツ。
ボク ユウキ ナカッタ。
トモダチ ボクノタメ タタカッタ。
デモ ボク ナニモ デキナカッタ。
カナシカッタヨ。
デモ ツギノ トコデ タタカウ。
センセノ ナマエ ト ハナシタ コト ワスレナイ」
ハリー先生のファースト・ネームは、ユウキという。
もっと、勇気を持って戦えばよかったと、カイは言いたかったのだろうか?
「おいおい、戦うって。ケンカや戦争は、しちゃだめなんだよ。
戦わない勇気だって、必要なんだ。
この裁判で、それをわかって欲しかったんだけどな」
「OK。ルール ヤ ヒト ダイジニスル。
ヘイワニ ツナガル。
スコシ ベンキョウシタネ。
ミンナニ アリガト ツタエテ。
デモ…
ソレ ダメナ トキモ アル…
ワカッテ ホシイ…
SO GOOD-BY…」
カイは、何かすっきりした顔をして、ハリー先生に別れを告げた。
多額の寄付をしていた、ゼノンの親族の皇族も、裁判の結果を受けて、他の安全なドームへ移ることにしたらしい。
ドームの管理局にとって、この判決は資金源を減らすことになるので、裏でいろいろ画策する人もいたようだが、ルールに基づいた判決には、従わなくてはならない。
この裁判によって、大きな影響を受けたのは、もう少し財源があれば、休暇の活動や、旅行にも補助金を出してもらえた子供達だろうか。
補助金を当てにして、旅行の準備をしていた生徒の中には、資金が足らずにあきらめた子もいたようだ。
どのドームも、将来を考えた財源を確保することが、資金を求める住民の支持を受ける元となる。
その犠牲になるのは、やはり弱者である子供達なのかもしれない…。
残念ながら カイはキラシャの言うように
裁判で自分の想いを 訴えることはできませんでした。
でも 裁判を乗り越えて 新しいエリアへ行って
これからの自分の生き方を 見つけてゆくのでしょうか?




