第10章 危険を感じながら ⑤ タケルの反抗心
タケルは家族と一緒に 地球に帰ろうと思っていたのに
キララとの出会いが 家族との意見の食い違いへと
向かってゆきます。
タケルはレストランでの食事中、
両親のいつも通りの会話をうわの空で聞いていた。
タケルの頭の中で、ミリがやってくるまでのわずかな間に、
トオルが耳元で伝えた言葉が、グルグルと回っていた。
「いいかい? タケル。君は今、普通の状態じゃないんだ。
・・・良く聞いてくれ。
君は狙われている。
パパには、まだ、それが何のためなのか、
なぜ君を選んだのか、わからない。
でも、これだけははっきり言っておきたい。
・・・君は幽霊にとりつかれている。
・・・パパには・・・
君がいっしょうけんめい話していた相手の姿は、
パパには見えなかった。
その幽霊のことをいろいろと教えてくれた人がいる。
いいかい。
・・・パパはタケルを守りたい。
しばらくは、ママにも内緒でいたいから、男の約束をしてくれるか?
タケルがこれから、この宇宙ステーションで
その幽霊に会うことがあっても、
パパやママを敵にするような行動は取らないで欲しい。
パパもママも君を信じているからね。
その幽霊が、タケルに何かをして欲しいとか、
頼んできても、絶対に相手にしないこと。
君を守るためだ。
・・・そして、それはパパやママを守ることでもある。
いや、この宇宙ステーション全体の安全にも関わることかもしれない。
とにかく、みんなのことを考えて行動して欲しい。
地球にいたときも、そう習っただろう?
いいね。約束だよ・・・」
ミリが、
「あなた達、いつからそんなヒソヒソ話するようになったの?」
と笑顔で話しかけても、タケルはぼんやりとして、反応できなかった。
ミリは、まだタケルが睡眠から解けて、頭が思うように
働いていないのだと思ったようで、自分たちの会話に夢中になっていた。
タケルはさっきまでのことを思い返しながら、
トオルの言ったことを懸命に否定しようとした。
『キララは幽霊? そんなはず、ないじゃん。
ちょっと、変わってたけど・・・
女の子と話して楽しかったの、久しぶりだったっていうのに・・・
だけどさ、僕を守るためって言いながら、
パパはいつもママと2人で楽しそうにしているだけじゃないか。
・・・ママだって、そうだよ。
だいたい、僕の耳を治そうって言って、ここまで来たんじゃないか・・・。
僕がもらったパスボーの賞金だって、ほとんどパパに預けているのに、
今から地球に帰ったら、スッカラカンになるだけだよ!
何のためにここまで来たって言うんだ! このままじゃ、帰ったって意味ないじゃン!
地球で習ったこと・・・?
ルールばっかり厳しくて、きゅうくつな生活だったっていうのに・・・。
ここにいる方が、よっぽどましだよ!
・・・いったい、キララはどこへ、消えちゃったんだろう・・・?』
その時、キララらしき女の子の声が聞こえた。
『タケル・・・? アタシの声、聞こえる・・・?』
タケルは、耳をすました。
そして、心の中で『聞こえるよ』と、つぶやいた。
『そう、もっと話したいことがあるんだ・・・。
アタシだけだよ、あんたを守ってあげられるのは・・・
あんたのパパが言ってたこと、全部ウソじゃないけど・・・
あんたを狙ってるのはアタシじゃない・・・。
もし、アタシのこと、信じてくれるんだったら、
あのゲームコーナーで待ってるよ。
パパたちには、だまって来るんだよ・・・』
『どうして?』
タケルは、心の中でキララに問いかけた。
『今は、誰もアタシのこと信じちゃくれない。・・・タケルだって、不安でしょ?』
タケルは、ちょっとムッと来て、強気になって答えた。
『不安って言うより、パパの言ってたこと、まだピンと来ないンだ。
・・・会ったら、ホントのこと教えてくれる?
キララのことも・・・』
『ああ、いいよ。タケルに勇気があったらね・・・』
『・・・じゃぁ、行くよ・・・。
だけど、実はこんなお化けでしたなんて格好で、出てこないでくれよ!』
『さぁて、どんな格好ででてやろうか・・・?
まぁ、楽しみにしててよ・・・。
じゃぁ、待ってるよ!』
キララの挑発的な声が消えてから、タケルはしばらく考え込んでいた。
両親が黙り込んでいるタケルに気づき、いたわりの言葉をかけたが、
タケルは何かを吹っ切ろうとするかのように首を横に振り、すっと席を立った。
「パパ、ママ。ちょっと用事があって、行く所があるんだ。
何かあったら、モアで知らせるよ。
・・・パパ、危険なことはしないと思うけど、僕の自由にさせて欲しいんだ。
ママを悲しませるようなことはしない。だから、僕のこと、信じて欲しい。
・・・男の約束だよ」
タケルは父親の手をとって、一方的に握手をした。
そして、「それじゃあ」と両親に向かって手を振りながら走り出し、
人ごみの中へ消えて行った。
キララとタケルと家族の関係は どうなってゆくのでしょうか?




