第8章 生きるために ④ 生きるための気持ち
キラシャより もっと苦しい思いをしているパール
パールは 元通りに回復することができるのでしょうか?
キラシャは、不安な気持ちで、パールの待つ病院に戻った。
パールの病室をのぞくと、オパールおばさんが、キラシャを見てほほえみかけた。
「キラシャ、元気そうね。パールの熱がようやく下がったの。
今はぐっすりと眠っているけどね。
パールが良くなってから、一緒に姉の所へ送り届けるのが楽しみ・・・」
そのとき、パールの目がパチっと開いた。キラシャがいることに気づいたようだ。
「キラシャ・・・。ゲンキ?」
「う~ン、何とかね。パールが元気になったら、あたしもやっていけそうな気がする」
「ワタシ ウミデ シヌ オモッタ。
・・・デモ チャッピ ト キラシャ アエテ ヨカッタ」
パールの顔をジッとのぞいていたキラシャの目が、ジワッとうるんできた。
そばで、おばさんがパールに話しかけた。
「パール。ごめんなさい。あなたが苦しんでるのは、おばさんの細胞が・・・」
「ウウン。オバサンノ オカゲ ワタシ タスカッタ・・・」
「ねぇ、パール。あたし、本当のパールを見たの。みんなにだまってた方が、いい?」
パールは、返事をせず、静かにゆっくりと答えた。
「モシ オバサン イナイト ワタシ シンデタ。
ホントノ ワタシ モウ ナイ」
「早く良くなって、元気な姿をママや家族に見せてあげなくちゃ。
ママだって、パールを見て、きっと喜んでくれるわ!」
おばさんもパールを励ました。
それを聞いたパールは、弱々しく答えた。
「ミンナト アソンデ タノシカッタ・・・。
デモ ・・・アフカ カエレナイ カモ・・・」
キラシャは、パールに怒鳴った。
「そンな弱気じゃだめだヨ! うちのクラス知ってる?
みんなパールのこと聞きたくって、あたしの部屋まで押しかけて来たンだヨ。
ほら、海洋牧場のボートでイッショだったおじさんも、アフカの戦争が早く終わるように、
ガンバってるんだって!
それを聞いて、みんなも募金活動を始めたらしいよ。
あたしも、部屋に戻ったら、募金活動手伝うよ!
それに、パールが戻ったら、きっと大歓迎だと思うよ。
だって、みんなパールのためにやってるンだもン。
だから、パールは自分だけじゃなくって、みんなのためにも良くならなくちゃ。
パール、約束だよ。必ずスクールに戻ろうよ。
パールがこんな風になったの、ひょっとしたら、あたしのせいかもしれない。
だってさ、もし、潜水艦の中であたしがケンカしてなかったら、
・・・パールがあたしにつかまってなかったら・・・
外海に放り出されなかったかもしれないじゃない。
あたしは、外海に行ってみたかったンだ。ずっとね。
だから、事故だって何だってかまわなかったよ。だけど・・・。
みんな、パールに何かあったら、きっとあたしのせいにするよ。
マギィとかジョディとか特にね。
ねぇ、パール。お願いだから、良くなろうっ!
・・・あたし、パールと一緒に募金活動したい
ねっ・・・」
キラシャは、しまいに涙声になっていた。
「・・・ワタシ イキタイ。
アフカ カエリタイ・・・。
・・・シンダラ カナシイ。
・・・デモ センソウ オワラナイ・・・」
パールは、苦しそうに顔をゆがめた。
「信じようよ。ホラ、あの海のドームで出会ったおじさんが言ってたじゃない。
家族が無事だって、信じなくちゃいけないって。
パールの家族だって、パールが無事か心配してるよ。
パールが、もし死んじゃったら・・・
せっかく助けようと思ったのにって、がっかりすると思うよ。
あたしだって、がっかりだもの。チャッピだって・・・。
おばさんだって、がっかりでしょ?
娘さんだっているのに、パールを助けようと思って、ずっとそばにいて看病してるのに・・・」
キラシャも必死だった。
「・・・私はね、パールが退院できて、戦争が終わって、無事にお姉さんのもとに返してあげる。
それが、唯一の私の望み。
パール、私もお姉さんに会いたいの。お願いだから、私の願いをかなえさせて・・・」
オパールおばさんも、涙を流しながらパールに話しかけた。
しばらくして、パールは苦しそうに息をフーっと吹くと、オパールおばさんにこういった。
「オバサン デキルカ ワカラナイ・・・。
ケド ワタシ ガンバッテミル・・・」
「そう、・・・良かった。一緒にがんばりましょう」
「そうだよ。パール応援してるよ。もちろん、あたしもガンバる!」
「・・・ワタシ ヒトリ ジャナイネ。
オバサン ト キラシャノ キモチ ワカル。
ダカラ イキタイ・・・」
パールは 悩んでいるキラシャの話や
おばさんの願いを聞くことで
一人じゃないことを 強く感じることができ
生きる希望を 持とうとしているようです。




