第8章 生きるために ② ホームステイ
キラシャは キラシャで 生きることに必死みたいです。
キラシャは、検査が終わった日に、担当の医療技師から外出許可をもらい、久しぶりに両親のもとでのんびりと過ごした。
じっとしていても退屈なので、キラシャは気晴らしに動物園へ。
そこでは、“おしゃべりするゾウ”をはじめ、いろんな動物が首を長くしてキラシャを待っていた。
「元気?」とあいさつするキラシャに、「まぁまぁだよ」とか、「どうも、このごろねぇ」と動物たちから返事が返って来る。
動物園のアプリが入ったモアをかざすと、動物はしゃべらなくても、言いたいことが言葉になって聞こえて来るのだ。
“おしゃべりするゾウ”は、どこでやり方を身につけたのか、舌を器用に動かして、息を口から吐き出しながら、しゃべっている。
だいぶん年なので、動きものっそりだ。キラシャがそばによると、ゆっくりと座りなおし、キラシャに背中に乗るように鼻で合図した。
「キラシャを乗せるの、久しぶりだゾウ!
会えてうれしいゾウ!
またジャングルごっこしたいゾウ!」と、息を荒くして言った。
小さいころから、パパに怒られては、大泣きするキラシャをおしゃべりするゾウが慰めることもあった。
そんな風にして、ずっとキラシャは、おしゃべりするゾウと兄弟のようにして育ってきた。
しかし、年老いたゾウは、キラシャを乗せて立ち上がると、まっすぐには進めず、あっちふらり、こっちふらりして、キラシャをあわてさせた。
それに気づいたラコスが、急いでキラシャを降ろし、ゾウをしかりながらゆっくりと元の場所へつれて戻った。
キラシャはその日の夜、ラコスにさびしそうに言った。
「・・・“おしゃべりするゾウ”も、本当に死んじゃうのかな・・・。
あたしのこと、いっぱいかわいがってくれたのに・・・。
あたしがスクールを卒業するまで、生きていて欲しいよ。
だって・・・“おしゃべりするゾウ”がいたから、動物園で楽しく遊べたンだ。
となりの植物園にあるジャングルのコーナーで、
“おしゃべりするゾウ”がパオーンと鳴いたら、何人驚いて腰を抜かすか当てる遊び・・・。
あンなこと、もうできないンだよネ・・・」
「おいおい、もうこれ以上おまえの苦情を受けるのはゴメンだよ。
おかげでパパは、植物園の園長から、何度怒鳴られたか~。
あんたはちゃんと娘をしつけたのかってね・・・」
ラコスはため息をついて、
『わが娘とは言え、とんでもないおてんばに育ったものだ』と苦笑いした。
キラシャの方は、今が一番つらいと感じていた。
“おしゃべりするゾウ”も、そして、尊敬するキャップ爺も、いつかは自分をおいて天国へ逝ってしまうのだろうか。
タケルは、相変わらずメールを送ってこない。もう、タケルをかまう余裕がキラシャになかった。
それより、自分よりたくさんのことで苦しんでいるパールがいる。
戦争のことはよくわからないけど、せめてパールが元気になるよう、何とかしてあげたいなと、キラシャは思った。
次の休日になると、キラシャがホーム・ステイしていることを聞きつけた友達が、かわるがわるキラシャの部屋に押し寄せた。
それほど大きくない部屋が、子供たちに占領されていた。
外の海に飛ばされた時の様子が聞きたくて、みんな好奇心いっぱいの顔をして会いにきたのだ。
キラシャは、聞かれるままに救出されるまでの出来事や、パールの様子を話した。
パールはきっと良くなるから、みんなも信じてあげて欲しいと伝えた。
ダンは、事故の前に会ったおじさんからスクールに、2人のことを心配するメールがあったことをキラシャに教えた。
メールを送ると、おじさんも手を尽くして、アフカの平和に努力していると返事があったらしい。
「オレ達も、アフカのことだいぶん勉強したよ。
おじさんの話では、音信不通のアフカの人達と、連絡が取れるようになるって」
ケンとマイクも、アフカの戦争に反対するための募金活動に協力しているんだと、得意げにキラシャに話した。
世話好きなサリーやエミリも、時々街での募金を呼びかけているという。
知らない間に、みんなパールのこと考えて行動を起こしている。
キラシャは、頼もしい仲間がいてよかったと、ホッと胸をなでおろした。
ひとりでは解決できないことも
仲間がいれば 解決できる方向へと
向かうことができるんですね。




