第6章 モビー・ディック ③ パールの救出
海に漂っているパールは 無事に救助されるのでしょうか?
キラシャは、空中ボートの中で起こされるように目を覚ました。
パトロール隊員が、何人かあわただしく情報のやり取りをしている。
一方のキラシャは、まだボーッとした頭のまま、
イルカにかじられて、軽くケガをした腕の治療を受けていた。
年もそれほど違わない、お姉さんのような医療隊員が「大丈夫だった?」とか、
「今日の出来事を思い出せる?」と質問したが、
キラシャはうなずくか、首をかしげることしかできなかった。
しかし、「パールと言う女の子を知っている?」という質問を受けた時、
キラシャの記憶がうっすらとよみがえり、
海洋ツアーのひとコマ、ひとコマを思い出すことができた。
海のドームへ向かうコメットからの風景とパールの驚いた顔。
イルカと泳ぐキラシャをうらやましそうに見ていたパール。
レストランでおじさんに泣きじゃくった、かわいそうなパール。
潜水ボートの中で、マギィに言いたい放題言われ、カチッときたキラシャを
心配そうに見ていたパール。
『そうだ。マギィに何か言われた後で、あたしが宙に浮いたようになって、それを止めようと抱きついてきたのは、パールだった…』
みんなは、どこにいるの?
パールも一緒?
うまく言葉にできないキラシャは、相手の目をじっと見つめた。
そばで足を組んで地図を広げ、胸にたくさんのバッジをつけたパトロール隊のチーフが、医療隊員に退席を命じ、キラシャに声をかけてきた。
「どうやら、何か思い出したようだね。
実は、君とパールという女の子だけが、ボートから事故で外の海に瞬間移動してしまった。
私の言うことが、理解できるかね?」
キラシャは、チーフの方に向かって、うなずいた。
「そうか。それなら話は早い。
君が海に漂っていたように、パールという女の子も、この海の近くのどこかにいる。
パールのモアからの反応は、外海ではとても弱いので、もっと近くに行かなくては、場所が特定できない。
だから君も、その女の子を助けるために、協力して欲しい。
時間がないんだ。もう、起きても大丈夫か?」
キラシャは、目を大きく開け、うなずいて言った。
「あたしのイルカ・ロボットが、まだ海にいるんです。
あたしの居場所を知らせたけど、チャッピが来る前に、助けてもらったから・・・。
パールを探すよう、命令します。
パールからどれくらい離れているかわからないけど、チャッピはパールにも反応してた。
きっと見つけることができます。
あたしも、パールを助けてあげたい」
キラシャは、興奮して叫んだ。
チーフは、キラシャを制してゆっくりと話した。
「いいかい。君も見たと思うが、ここはサメの通り道なのだ。
一刻も早く、君の友達がいる場所を見つけ出さないと、サメの餌食になってしまう。
そのイルカ・ロボットは・・・」
キラシャはピーコに、チャッピの最初の応答があったポイントを表示させた。
「そうか・・・。実を言うと、こちらもアラートを感知していたのだが、
君を助ける少し前からロボットの応答が途絶えてしまっている。
うちのロボットのように、えさと間違えられて、攻撃されていなければいいが・・・。
とにかく急ごう」
パトロール隊のチーフは、ボートに積んであった数台のイルカ・ロボットを海に放ち、モアで操作を始めた。
空中ボートも海中に沈み、近辺を探索し始めた。
一方、パールは海の中を漂っていた。
キラシャの命令を受け取った時、パールから離れて流されていたチャッピは、パトロール隊に向かってアラートを発信し、残った機能でキラシャのいる位置に向かっていた。
しかし、チャッピは方向受信装置にゆがみが生じたせいか、キラシャを探して右往左往していたのだ。
キラシャは、モアを通じて、ゆっくり何度も話しかけた。
「チャッピ、聞こえる?
パールを助けて欲しいの。
パール、わかる?
パールの近くで、アラートを発信して!
お願い! 」
モアが、再びチャッピの位置を伝え始めた。
《MF-Q14-RF26-00648。SSE方向180m先で、NNE方向に移動中》
パールは、ゆっくりゆっくりと海流に乗って、移動していた。
チャッピはキラシャの思いを受けて、パールのマシンに向かって、フルスピードで泳いでいるようだ。
ボートはすぐに後を追った。
近くの海面には何頭ものサメが、えさを探して泳ぎ回っている。キラシャは祈った。
「どうかパールを助けて!
パールが無事でありますように・・・!」
そのころ、群れから離れたサメが、漂っているパールに気づいた。
サメにとっては、子供の大きさがちょうど良いえさに見えるのだろうか。
サメは、パールに興味を示し、その周囲を旋回し始めた。
パールのモアが、警告を始めた。
《警告。危険な生物が近づいています。落ち着いて行動してください》
パールのまぶたが少し動いた。
《警告。危険な生物が近づいています。速やかに移動してください》
パールの目がパッチリ開いた。
《警告。危険な生物が近づいています。
相手を威嚇しながら、通りすぎて行くのを待ちなさい》
サメは1m手前で、パールに襲いかかろうと口を開けた。パールは何もできずに、目の前のサメを見つめるだけだった。
そのサメの口の前に、スーッとイルカ・ロボットが現れた。
サメは、口にイルカ・ロボットを挟んだまま、大きな目をカッと開けて、パールのそばを離れて行った。
イルカ・ロボットはアラートを発信しながら赤く光り、サメとともにどこかへ去って行った。
アラートを感知して移動を始めたパトロール隊は、その近くでパールのモアの生命コード反応を感知し、急いで救出作業を始めた。
2人のパトロール隊員が海中に飛び出し、1人は武器を持ってサメの襲来を警戒しながら、もう1人がパールを抱きかかえ、急いでボートへ戻った。
ボートに収容される前に、ふわふわと泳いで自分に近づいて来る小さな物体を見つけ、パールが思わず声をかけた。
「チャッピ?
・・・ダイジョーブ?・・・」
ボートでお互いを見つけたキラシャとパールは、無事を喜び合い、涙を流して抱きしめ合った。
パールも危機一髪の 危ないところで救助されましたが
パールは まだやけどのけがから回復したばかりです。
大丈夫かな・・・?




