第6章 モビー・ディック ① 2人の捜索
キラシャとパールが 自分達の目の前から急にいなくなって
残された子供達は それぞれに心配しながら
できることをしようとしています。何ができるかな?
ヒロとジョンの2人は、この不思議な出来事を冷静に受け止めていた。
ヒロはいつもの癖で、左の人差し指でこめかみを押さえながら、ジョンに言った。
「きっと、さっきの振動は、太陽フレアが関係したンだと思う。
ドームの中だと、その影響を防ぐ機能があるから大丈夫だけど
海中までは守られていないし、この船は古いから、影響を受けちゃったんだろうな。
たぶん、急激に強い磁力が働いて、船が揺れて
たまたま磁力が集中した所に2人がいて、瞬間移動してしまったんだ。
僕の夢の星フィラでは、こんなことがあっても、すぐに場所がわかるけど
ここでは、どこに移動する可能性があるのか、地図で調べないと・・・。
2人が飛ばされた場所は、いったいどこなんだろう」
ところが、太陽フレアの影響かモアが使えない。子供達は絶望感に襲われた。
船の明かりもつかないまま、室温も徐々に上がった。
周りで苦情を叫んでいた人達も、推進機能を失った潜水艦が、ゆっくり沈んでいることがわかると、力なく座り込み、助けを待った。
どれくらい時間がたったのだろうか。ようやく、救助用の潜水艦がドッキングする音が船内にも響き、乗組員が船を乗り換えるようにと声をかけてきた。
他の乗客とともに、救助用の潜水艦に乗り込んだ後、子供たちが居場所を見つけて集まり、モアが使えるようになったことを確認したジョンが、急いで3D磁界地図を広げた。
「僕達がいるのは・・・この地点で、さっきいた地点がここら辺とすると・・・。
ひょっとしたら、外の海に飛ばされたのかもしれない」
ヒロとジョンが、2人のいる位置をモアで探している間に、ダンと男の子達は、キャプテンを探して見つけ、強引に引っ張り出した。
そして、キラシャとパールがいなくなったこと、その原因とどこに行ったのかを、口々に説明しようとした。
ところが、突然の出来事に混乱していたキャプテンには、騒ぎを大きくしようとする子供のいたずらにしか思えないらしい。
「訳のわからないことを言って、これ以上私を困らせないでくれ! 私は事故を本部に報告するので精一杯なんだ!」と怒鳴り、迷惑そうに子供を払いのけ、行ってしまった。
その後、ドーム管理局のボス・コンピュータから、子供の生命コード反応が、2人分消え、現在の位置も特定できないことが、キャプテンに伝わったようだ。
キャプテンは、事故の原因究明のために乗船していた科学者としばらく相談してから、子供達を部屋に呼び寄せた。
部屋に入ってきたのは、ダンとヒロとジョン、そして、キラシャとパールが消える直前まで2人を見ていたサリーとエミリである。
ケンは、まったく耳を貸そうとしなかったキャプテンに、ケンカをふっかけそうなほど腹を立てていたので、心配したマイクと客室に残った。
マギィとジョディは、のどが渇いたのか、ドリンクを受け取るために、私達には関係ないという顔をして、大人の乗客をかき分けながら離れて行った。
部屋の壁には、潜水艦で犠牲に遭った人達への、追悼の言葉が飾ってあった。
『潜水艦の過ちによって、悲しい出来事が繰り返されませんように』
キャプテンはすわって腕を組み、改めて子供達の説明を聞き直そうとした。
そばにいたサリーとエミリが説明しようとするが、友達が急にいなくなったショックと、キャプテンが自分の言うことを信じてくれなかった不信感で、言葉が出て来ない。
キャプテンはゆっくりと立ち上がって言った。
「君達にはすまないことを言ってしまった。
乗客を乗せたボートで、こんなことが起きるなんて。
なにしろ、私には初めてのことで、君達が何を言っているのか、理解することさえできなかったのだ。本当にこんなことになるなんて・・・」
と、涙を浮かべながら2人の女の子の肩を抱き、申し訳なさそうに言った。
2人に代わって、ヒロがくわしく説明しようとしたが、キャプテンはパトロール隊がすでに捜索を始めていて、まだ2人の居場所がわからないことを告げた。
ジョンは、ムッとしながらモアで磁界地図を広げ、キャプテンに2人が飛ばされたと予想される外海の位置を示した。
ダンがパールはまだやけどの治療が終わったばかりで、もし海の深い場所にいるのなら、水圧によるダメージが心配だと伝えた。
キャプテンは、さっそく救助隊本部へ連絡を取り、こう言った。
「君達はこのエリアの立派な一員なのだから、
極秘情報は人に話してはいけないことは知ってるね。
今後は、乗船口で待っている救助隊の指示に従って、行動して欲しい」
ダンは他の子に呼びかけ、だまって部屋を出ると、ケンとマイクを探した。
大人と離れた静かな場所に座り込むと、複雑な気持ちで話し始めた。
ヒロがぽつりと言った。
「大人って、勝手だよな。キラシャやパールが心配なんじゃない。
犠牲者が出るのが怖いんだ。
校長先生だって、キラシャやパールに何があったって、きっと設備が整っていない船を運転してたキャプテンのせいにするよ。
キャプテンはそれを恐れているんだ」
ジョンも不安そうに言った。
「だけど、もし、見つからなかったら、・・・見つかってもだめだったら・・・。
キラシャがいなくなると、クラスが静かになるし、
パールだって、今日やっと仲良くなれたのに・・・。
いつだって、僕はそうなんだ。女の子と仲良くなると決まって、こんな風に・・・」
ジョンが、涙ぐんで肩を落とすと、サリーとエミリは、泣きながらジョンに抗議した。
「やめてよ。キラシャは絶対生きてるよ。パールだって、きっとだいじょうぶよ」
「・・・あたしたちと、一緒に歌うんだもン。今度の誕生日パーティーで・・・」
ケンも、反発した。
「そうだよ。キラシャもパールも、生きてるさ。
ほら、今日会ったおじさんも言ってたじゃないか。
無事だって、信じないといけないって」
マイクは1人目をつぶり、胸の所で十字を切り、ひとりごとをつぶやいていた。
「キラシャモ パールモ
カンゼン デ アリマスヨウニ。
アーメン」
未来でも 太陽フレアが どんな影響があり どれくらいの被害を受けるのかは
私もわかりません。
科学的に あきらかに間違っている箇所がありましたら ご指摘いただければと思います。




