第5章 海洋牧場 ④ 消えた2人
タケルのメールが 海洋牧場の子供達にも
影響を及ぼしてしまいます。大丈夫かな~
大流星群が地球を襲う以前に、海洋牧場の近くで大きな地震が起こっていた。
そのときに、この海洋牧場の海底がぽっかり開いて、みごとな洞窟が現われた。
海洋牧場では、冒険好きの観光客目当てに、この洞窟への運航を行っている。
探検と言っても、管理のきびしいジヴァ・エリアのことである。ボートで洞窟をくぐりながら、自然にできた岩の形や、珍しい生き物を紹介する程度だ。
このうわさは広く知られているのだが、洞窟の探査中にボートが行方不明になり、乗組員が帰って来ないこともあったとか。
それでも、怖いもの見たさに運行を要望する声が強く、ドーム管理局も資金稼ぎのために、慎重に運航を続けている。
キラシャを心配するキャップ爺も、潜水艦には乗らないよう注意していた。
だけど、そんな説教より、冒険を楽しみたいキラシャは、この地底探検を楽しみにしていたのだ。
暗い洞窟の中、ライトだけを頼りに潜って行く。時々、深海からやって来たのか、奇妙な形をした魚や動物らしきものが動いている。
子供達はそれを発見しては、新しい名前を命名するのが楽しみなのだ。
しばらく、泣きじゃっくりの止まらないパールに、ジョンが付き添っていた。
キラシャは、何かなぐさめにならないかと、イルカ・ロボットのチャッピをパールに反応させてみた。
チャッピがパールに向かってクウクウと泣き始めると、パールはキラシャから赤ん坊を抱くように受け取り、やさしくほおずりしてかわいがった。
みんなと洞窟の風景をながめていると、心がなごんだ様子だ。
パールは、キラシャに向かって「これは何?」とたずねた。キラシャは知っている魚は得意そうに答え、知らない魚にはキラシャ流の解釈をつけて、新しい名前を命名した。
ところが、キラシャの命名した名前に、他の子から異論が出て来ると、あたりが騒がしくなる。
正しい情報を求めて、キラシャも魚の情報をモアから仕入れるのだが、ヒロやジョンやダンの方が、高度な機能を持つモアを使っている。
遠くで泳ぐ魚でも、望遠カメラで写すと、モアがすぐに3Dホログラムで、目の前に魚の泳ぐ姿を映し出し、名前や特徴を音声で教えてくれる。
「キラシャは、ああ言っていたけど、本当はこんな風に泳ぐ魚なんだ」
ヒロやジョンだけでなく、ダンまでも、自分のモアの動画をパールに向けて、競うように見せ始めると、いつもの子供同士の言い合いが始まってしまった。
特に、キラシャをいつもバカにしていたマギィとジョディは、この時とばかりに、キラシャの悪口を言い始めた。
「キラシャって、でしゃばりなのよね。知ったかぶりばかりしちゃってさ」
「そうそう、ちょっと泳ぎがうまいからって、えらそうな顔して。だから、タケルにも嫌われちゃうのよ。フン!
タケルはキラシャを嫌がって、火星に行ったのよ」
パールに遠慮して、今日はマギィとジョディのつんけんした態度に、ずいぶん気を使ってだまっていたキラシャだった。
それでなくても、タケルのことが気がかりで、腹立たしくもあり、不安にも思っていただけに、この言葉にはムッときてしまった。
しかし、マシンおじさんの言った言葉が、まだキラシャの耳に残っていた。
『仲良くするんだよ』
近くにいたサリーやエミリも、心配そうにキラシャを見守った。
それでも、マギィのジャブは続いた。
「だけど、タケルもヘンな子が好きだったよね。
なんでキラシャばっかり相手にしてたのかしら…。
かわいい女の子には真っ赤な顔して、無口になっちゃってさ。
地球を離れてやっと気がついたのよね。あンな子と付き合って、損したなって。
だって、そうでしょ。
そうよ~、考えてみれば、タケルってたいしたことなかったわよ…。
あたし達って、バカだったわ~。もっとイカす男子いたのに…」
キラシャは自分のことより、あれほど応援していたタケルの悪口を平気で言うマギィに、こらえきれず反論を始めた。
「マギィ。タケル、タケルって、パスボーの試合のたびにギラギラの衣装着て、うるさいほど応援してたの誰だっけ。
タケルはね、最初からそんな子に興味なかったよ。タケルは、顔のきれいな子と付き合うの疲れるって言ってたンだ。
それに、あたしのこと忘れないって、言ってくれたンだよ」
マギィは、いつものように、人を小馬鹿にしたような感じで、フンと鼻で笑い、こう言った。
「あらそう、タケル、あたしにはメール送ってきたわよ。キラシャは、どうなの?」
キラシャは、思わずうなった。
キラシャを軽く横目でちらりと見たマギィは、こう付け足した。
「タケルは、もうキラシャと関係ないンだって。だから、あたしに伝言をよこしたの。
火星の方がいいらしいわよ~。地球のみんなにザマーミロって、言ってやるンだって…」
キラシャは、冷静に判断できなかった。
プライドの高いマギィが、タケルのことで、つまらないウソをついているとは、とても思えない。
朝から張り切ってみんなを先導したり、水中のパフォーマンスでイルカと泳いだり、みんなに気を使って、ケンカの種をこらえていた疲れが、どっと出て来た。
身体が妙に重く感じ、頭もふらふらして、倒れそうな気がする。
『タケル、マギィの言ったこと本当なの? キラシャに言ったことはウソ?
タケル、どうして?
何があったの?
お願い、あたしを助けて! 』
なんとなく、キラシャの身体がフワッと浮いた感じがした。
そばにいたパールが、思わずキラシャに抱きついた。
その時である。ボートがガタっと傾き、ボートの客全員がよろめいて倒れた。
ボート全体が伸びたり縮んだりするような圧迫感が、みんなを襲った。
ボートの中を照らす照明も、ついては消えを繰り返した。
ボートのアナウンスが始まった。
「どうか皆さん落ち着いて! 姿勢を低くして、動かないものにつかまってください!」
同時にキーンとする耳鳴りがして、誰もが耳をふさいだ。
ボートがいったいどうなっているのかわからず、乗客は身体が上下左右にぶれるのを少しでも抑えようと、必死でしゃがみこみ、周りの人や手すりにつかまった。
しばらく揺れが続いた後、ボートは静かに止まった。
乗客は無事を確かめ合うと、モアから何の注意報も出なかったので、ザワザワし始めた。
未来では、地震の予知情報も早い。
しかし、この揺れが地震なのかどうかもわからず、責任者への説明を求める声が上がった。
そんな騒ぎの中、キラシャとパールがいないことに、ケンが気づいた。
「キラシャ、・・・パール。いったいどこへ行ったンだ?」
周りの子供達は、2人がいたはずの場所を見つめた。
「ホントだ。どこへ行っちゃったの?」
原作者:金田 綾子
タケルがマギィに送った 怒りのメールが
キラシャだけでなく パールにも とばっちりとなって
2人が 消えてしまいました。
いったい どうなるんでしょうか?




