第5章 海洋牧場 ③ 1通のメール
タケルのように 人は孤独になると
誰かに向かって 腹を立てるしかないんですかね~
タケルの乗った宇宙船は、途中でいくつかの宇宙ステーションに立ち寄り、一週間程度の停泊中に住民への検査機器を提供し、船の安全点検を行う。
いつ終わるともわからない、この船の長い旅に、タケルの気持ちは曇りがちだ。
気がつけば、宇宙船の中でもタケルは寡黙な少年として扱われ、浮いた存在になっていた。
地球のドームにいた時も、時々激しくカンシャクを起こすタケルには、それほどたくさんの友達がいたわけではない。
タケルの怒鳴り声に頭を抱えながらも、キラシャやケンが、気にせず声をかけてきたから、仲間として付き合うことができたのかもしれない。
いろんな女の子に声をかけられたが、キラシャのように誰とでも仲良くしていたわけではないし、タケルは自分から打ち解けようとする少年ではなかった。
そんなタケルのガマン大会のような日々が、ちょうどピークを迎えた時、マギィから送られてきた1通のメールが、タケルを逆上させてしまった。
内容は、こうである。
[タケル、元気?
キラシャ、海洋牧場のこと何か言ってた?
最近は、別の子に夢中みたいよ。
ちょっと前まで、タケルばっかだったのにね。
どう、心配…?
あたしも、ジョディと行ってみるわね。
何だか、面白いことになりそう…]
キラシャのメールは、確かに毎日受け取っていたし、海洋牧場に行くことも前から知っていた。
キラシャがそれを楽しみにしていることは、タケルにも十分伝わっていた。
このごろは、キラシャのメールを読むことが、タケルの楽しみになっていた。
しかし、それはキラシャが、タケルを一番大事に思ってくれると信じていたからだ。
タケルの心の中で、キラシャにつながっていた糸が、プツンと切れて、自分が遠くに飛ばされてゆくような気がした。
タケルは、気がつくと音声モードでマギィにメールを送っていた。
[オレはもう、キラシャとは何の関係もないンだ。
火星に行くのは、別の目的があるからだ。
地球にいたらできないこと、火星に行って実現してやるンだ。
オレはいつか火星で成功して、地球のみんなにザマーミロって言ってやる。
マギィ、おまえなんかにオレの気持ちがわかってたまるか!]
タケルが今まで心にためていたものが、一挙に爆発したのだ。
勢いで送信したものの、少し冷静になってくると、だんだん不安になってきた。
『キラシャ、愛してるって言ったじゃないか。オレがいたら、絶対、何百倍も楽しいのにって…。
マギーの言うこと、ホントなのか? キラシャがメールくれなかったら、オレ…』
原作者:金田 綾子
タケルとキラシャ この2人がどうなってゆくのか
次回をお楽しみに~




