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第4章 キャップ爺 ② 海の王(1)

未来でも 海の王は鯨なんでしょうね~


キラシャの笑顔に満足して、おじいさんはいつもの昔話を始めた。



海中ドームの周りに、海洋牧場がオープンしてから試行錯誤を繰り返し、外海の珍しい生き物をボートでつかまえては、ドームへと運んでいたころの話だ。   



ただ、おじいさんの冒険話には、時々アンビリーバブルな話も混じっている。


  

例えば、無人島に放射能がたくさん持ち込まれたとかで、トカゲが巨大化して、恐竜王国ができているだとか。



北極が温暖化で、黒いクマもやって来るようになって、白いクマとのアイの子ができて、パンダみたいなまだら模様になっていたとか。  



でっかいイカとでっかいタコが戦って、海が真っ暗になって、しばらくしたら、近くを通ったでっかいマッコウクジラが、おなかを大きくして満足そうに海に潜って行ったとか…。



それが事実なのかどうかはお構いなしに、今日もホントだったのかわからない、白クジラの話を聞かせた。



「ワシはだんだん広くなってゆく海洋牧場に、でっかいクジラを入れてもらおうと、何ヶ月も海の上を飛び回ったものじゃ。



知り合いの管理局の人から、ごほうびの分け前は大きいと言われたからな。

  


最初のころは、それが楽しみでクジラを追いかけた。  

 


キラシャ。想像がつくかい?



大きな背中から、いきなりシュワーッと潮を吹き、海の深い所まで沈んだかと思うと、いきなり空高く飛び出して、身体をくねらせバッシャーンと海面をたたく音。



水しぶきが太陽の光を浴びて、キラキラと輝いては散って行く。何とも優雅で美しいこと。



キラシャにも、ホンモノのでっかいクジラを見せてやりたいものだなぁ」   



「だいじょうぶだよ。クジラの動画はいつも見てるし、キャップ爺が心配しなくても、あたしだって外海のクジラに会うことだってあるさ」とキラシャは答えた。 

 


「そうか。ワシは、海洋牧場にいる小さな白クジラの、何十倍も大きな白いクジラを知っているぞ」と自慢げにおじいさんは話を続けた。


   

「この足は、ワシの最後の仕事で、モビー・ディックというあだ名のついた、ドームのようにでっかい白クジラと格闘した時の記念じゃ」



と、おじいさんは指先がない右足をキラシャに見せた。


 

「ワシは、歴史に残るような大仕事をしようと思って、頭にいくつもコブがある、とてつもなく巨大な白いマッコウクジラを探して世界中の海を飛んだ。


   

白いクジラと言うだけで珍しい。



しかも、このクジラを生け捕ろうとして、何人も犠牲者が出ていた、



と聞けば、ここは地球を支配する人間の威厳をかけても、つかまえなくてはならないと、ワシは思った。  



前に犠牲となった漁師が、居場所を知らせる発信装置を撃ち込んでいた。



だから、ワシらは時々反応して現われる、発信源の位置を確認して追った。



クジラをつかまえるには、ショック銃を放射して気絶させ、海洋牧場まで運ぶための網に入れてしばれば良い。



だが、あの大クジラを引っ張って移動するのに、大型のボート2隻以上は必要だというのに、集められるのは中型のボートだけだった。



ある時、モビー・ディックが湾でのんびりしていた所を発見し、仲間のボートを呼び集めた。



飛んで来たのは6隻。クジラ獲りには定評があるベテランばかりだ。



かといって相手は、人が乗っていることなどお構いなしに、ボートを海底に沈めてしまうようなクジラだから、決して油断はできない。



ワシらは用心して、モビーに近づいた。

   


『うまくいけば、銃を使わなくても生け捕りにできるかもしれない』 

 


ワシがそう思ったのは、白いクジラの目があまりに優しい表情で、ワシらを見つめていたからだ。



なんとなく、話しかけるだけで、ワシの思いが伝わりそうな気がした。 



それでも、金もうけしか頭にない仲間がいて、合図を待たず、いきなり銃を放射してしまった。



モビーはショックが効いたのかおとなしくなった。



ところが、ボートが海中に潜り、ゆっくりとそばに近づくと、モビーはいきなり動き出し、ワシらに向かって来たのじゃ。



その時、あいつが何をしたかって? 



銃を放射した仲間のボートに体当たりして、海深く潜って行ったのだ。



ぶつかったボートは穴が空き、徐々に海底へと沈んで行く。



もうクジラにかまっている場合ではない。仲間を助けなくては…。 

  


モビーは、ゆっくりとワシらから離れて行った。



その時、生まれて初めて、人間にも勝てない動物がいることを思い知ったのじゃ…」

キラシャのおじいさんは 未来にしては ちょっと原始的な存在でもありますが

そういう人間も生きているということで ご理解いただけばと思います・・・

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