第3章 美しい転校生 ① アフカからの転校生
今はやりの ビジュ イイじゃん という言葉をお借りして
マイクらしい言葉に 使わせていただきました。
これくらいの コピーは許されますよね!?
キラシャは、その日も夕食を済ませた後、タケルへ今日のクラスの様子と
明日の予定を入れたメールを送って、シャワー室へ向かった。
次の日は、午後にオリン・ゲームの予選会がある。
タイムで上位20チームの中に入れば、進級テストの後で行われる、
エリアの大会への出場権が得られるのだ。
上級コースで、本格的なオリン・ゲームを目指すキラシャは、
中級コースのオリン・ゲームのトレーニングにも参加していた。
タケルがいる時は、リーダーでキラシャを引っ張ってくれたので、
常に上位の10チームに入れたし、安心してゲームに参加していたが、
新しいメンバーは、ケンがリーダーだ。
何でも自分で決めないと、納得しないタケルに比べて、
ケンは周りを気にして、いい加減に済ませることが多い。
ちょっと頼りないリーダーだけど、
キラシャはこのオリン・ゲームをきっかけに、
元気な自分に戻りたいと思っていた。
タケルと最後に話をしたことで、ずいぶんイジメに遭ったけど、
ケンにはいろいろ助けてもらったし、マイクとケンのコンビには、
遊びにも入れてもらったし、笑わせてもらった。
明日のオリンでは、ケンとマイクとキラシャのチームで、
なんとか20位以内に入りたいと思っている。
入浴をすませて、湯気を立てながらキラシャが部屋へ戻る途中、
ホールで女の子と、車椅子の女の人と担任のユウキ先生が、
話をしているのを見かけた。
『転校生? ・・・ひょっとして、うちのクラス?』
タケルがいなくなった後、タケルのいた席はそのままだ。
『もしそうだったら、タケルに知らせようっと』
その夜は、オリン・ゲームとタケルに報告したいことが
いっぱい頭に浮かんで、なかなか寝つけないキラシャだった。
次の日の学習ルーム。
キラシャも眠い目をこすりながら、
友達とモアでメールのやり取りをしていた。
オリン・ゲームが終わったら、
休日にクラスの仲間と海洋牧場に行く計画だ。
その日は、キラシャの11歳の誕生日でもある。
ケンがキラシャを気づかって、
みんなで一緒に行こうと誘ってくれたのだ。
チャイムが鳴って、学習ルームに入って来た
先生と女の子に気がついて、生徒達はメールの手を止めた。
先生はクラス中を見渡し、
そばの女の子に安心するよう微笑んで、話し始めた。
「みんな、アフカ・エリアから来た、
とってもチャーミングな女の子を紹介しよう。
彼女はこれまで、戦争が続いている場所で生活していました。
ある時、敵の攻撃を受け、身体にやけどをして、
こちらのドームに運び込まれ、治療を行っていました。
名前はパール。
このエリアの優秀な医療技術のおかげで、身体は元通りに回復し、
リハビリを続けながら、一緒に学習することになりました。
アフカは、まだ戦争が続いている地域があります。
戦争がどんなものか、君達もパールから、学ぶことがあると思う。
だから、よそのエリアだからとか、
このエリアの習慣に慣れていないからといって、イジメたらダメだよ。
パール、みんなにあいさつしてごらん」
その女の子は少しためらったが、先生の方を見て少しうなずき、
何度も練習したのか、きれいなマグフィの言葉で、話し始めた。
「私はパール。私のお母さん、マグフィ・エリアで生まれました。
おばさんも同じドームにいて、私の看護をしてくれました。
このエリアのことも、いろいろ教えてくれました。
・・・私の知っている人、たくさん戦争で亡くなりました。
ここで平和を学んで帰りたいです。
アフカの戦争が終わって、平和に生活できるように・・・。
どうぞよろしく・・・」
子供達は、拍手してパールを歓迎した。
パールは、正装用の黄色や赤色の模様が入った
民族衣装を身につけていた。
アフカは肌の色も黒褐色の人が多いが、パールは色が白い。
キラシャと同じくらいの年なのに、パールは女優のように
目がパッチリして鼻も高い。
くちびるも薄くて、賢そうな感じがした。
やけどをしたというから、顔も整形しているのかもしれない。
それでも、気品のある美しい顔立ちに、
女の子のキラシャでさえ、目を奪われた。
パールがタケルのいた席にすわると、みんな落ち着かないように、
チラチラとその席を見やった。
先生の話だと、パールは午後のオリン・ゲームを見学するようだ。
ゲームに出場する男の子は、
転校して来たばかりで何もわからないパールに、
イイトコ見せておこうと、やる気満々で午前の授業を終えた。
お昼の休憩時間。
大勢の参加者とゲームのスタート地点へ向かうキラシャ。
同じチームで張り切っているマイクから、メールが入った。
キラシャと同じクラスで、
別のエリアを転々としていた転校生のマイク。
タケルがいなくなる半年くらい前にやって来たが、
ようやくマグフィ・エリアの生活に慣れたようだ。
マイクは、男の子とすぐに仲良くなって、
言葉もなんとか話すようになったが、突然妙な言葉を使って、
周りを驚かすことがある。
この日も、ランチのサラダに入っていたくだものを見て、
「ケダモノ!」と叫んでいた。それが耳に入ったのか、
転校生のパールもクスッと笑っていたようだ。
キラシャはそんなマイクから送られてくるメールにも、
悩まされていた。
「マイク、あたしにわかる言葉で、送ってきなよ!」
大きな声でどなると、
マイクは「ムリ! ナンデモ イイジャン!」と澄ました顔。
転校生がきれいな言葉を使っていたのに、
マイクはマイク語でメールを始めた。
[キラシャ アノ ギャル
ビジュ イイジャン!
ウミ イッショ イク?]
[びじゅ・・・いいじゃん?
って・・・パールのこと?]
[イエー
キラシャ ドウ?]
[マイク・・・
カノジョ ヤケドなんだ
ウミ ムリ!]
[デモ オレ
パールト イッショ イイジャン!]
キラシャは、モアで見るマイクから目を離し、
近くにいるマイクに話しかけた。
「・・・マイク。
海洋牧場でイルカと遊ぶより、
きれいな女の子と一緒に船の中で見学する気?
マイクってさ・・・、
コズミック防衛軍のパイロットになるのが夢じゃなかったの?
女の子とイチャついて、空の英雄になれると思ってンの?」
マイクは、キラシャの早口に面食らったのか、ケンの方に助けを求めた。
キラシャは、タイミング良く来たケンに怒鳴り始めた。
「ケン、ナンなの?
あたしの誕生日に付き合って海洋牧場に行くより、
きれいな子と遊びたいンだったら、正直に言えばイイじゃない!」
すると、ケンは不思議そうな顔をして、こう言った。
「何のこと・・・?
オレは、仲間を増やして行こうよって言っただけだよ!」
マイクは顔を赤らめながら言った。
「パール マダ トモダチ イナイネ。
ナカマ シヨウ!」
キラシャは頭を抱えた。
「・・・アノネ、マイク・・・」
海洋牧場では、みんなでイルカと泳ぐのを楽しみにしていたキラシャ。
でも・・・。
転校生を自分達の仲間に入れておくことは、
これからの友達づきあいを考えると大事なことだ。
ケンは、キラシャに聞こえないように、マイクにささやいた。
「マイク。海洋牧場のことはオレにまかせて、次の予定を立てろよ・・・」
マイクは、軽くうなずいた。
ケンは、キラシャに対して言い訳を始めた。
「マイクは、女の子を誘うのがヘタなンだ。
今日来た転校生に遊びに行こうなンて、気が早いよ。
だいたい、サリーとエミリが許すわけがない。
マイクはあいつらのアイドルなンだ。
オレがなンとかするから、今度の休日は海洋牧場に決定だよ!」
サリーもエミリもキラシャの遊び仲間。
マイクが転校して来てから、マイクの妙な言葉に笑いコケながら、
この2人が正しい発音を教えた。
このエリアには珍しく、マイクはイケメンだが、
プーさんのように太っている。
おかげで、転校して来てから、女の子には妙にかわいがられていた。
『フン。どうせケンが知恵出したンでしょ・・・?
それくらい、長い付き合いだからわかってるよ。
ケンだって、女の子に話しかけても、
すぐ調子に乗ってイヤがられるじゃない。
まったく・・・』
きれいな転校生を目の前にしたとたん、
ケンやマイクまでが、女の子への競争心に燃えてしまったようだ。
キラシャは、男の子の心変わりの早さにあきれてしまった。
でも・・・
タケルがいなくなってから、ケンは前と変わらず
キラシャの良い友達でいてくれた。
他の子は、平気でイジメに加わってたのに・・・。
オリン・ゲームだって、ケンとマイクが
同じチームに入れてくれたから、
キラシャもこうやって、やる気を取り戻せたのだ。
ここは、敬愛なるケンとマイクを立てることにした。
「それじゃあ。いい?
今日のオリン・ゲームで、タイムが30位・・・以内に入ったら・・・
海洋牧場に誘ってみる。
それがダメでも、次はどっか一緒に行こうって誘ってみるから、がンばってね」
マイクとケンは喜んで、OKの合図をした。
「あ、それと、次の予定はどこでもいいケド、サリーとエミリはイッショでいい?」
キラシャがたずねると、マイクはエーッと顔をしかめながら、力なくうなずいた。
原作者:金田 綾子
マイクのいちずな!? パールへの気持ち
いったい どうなっていくのでしょうか?




