ポーカーは勝てん
【VIPポーカールーム・ハウスルール】
•ゲーム種目:テキサスホールデム(ノーリミット)
•ブラインド:小100G / 大200G
•スタートチップ:5,000G(持ち込み可)
•レイク:ポットの5%(最大500G)
•ハウスディーラー常駐、タイマー制で強制アクション
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この日のイグニスは、ポーカーの教本で得た「有名戦略」を試すつもりだった。
【タイトアグレッシブ(Tight-Aggressive)】
手札は厳選し、入ったら強気に攻める。
ポットオッズ計算・コールすべき場面か冷静に判断。そして適度なブラフ…相手を読み、プレッシャーをかける。
【第1ハンド】
手札〔A♠ Q♠〕。
フロップ〔A♦ 10♣ 4♥〕でトップヒット。
戦略通り、ターンでベットを強めるが――相手は〔A♥ K♣〕。
キッカー負けで早速-4,000G。
【第3ハンド】
手札〔J♠ J♦〕。
フロップ〔8♥ 9♠ 10♣〕でオープンエンドストレートドロー。
「ポットオッズ的にコール!」と計算通り動くも、リバーで相手にフルハウスが入り-6,000G。
【第8ハンド】
手札〔7♣ 2♦〕――最弱ハンド。
普段なら捨てるが、「ここでブラフを決めれば格上に見える」という悪魔の囁き。
フロップ〔K♥ K♠ 5♣〕、全力でポットベット。
しかし相手の〔K♦ Q♦〕が動かず、即コールされ-10,000G。
【第14ハンド】
残りチップ4,800G。
手札〔A♣ 10♠〕。
フロップ〔10♦ 10♥ 6♠〕でトリップス!
「これは勝った!」とオールイン――だが相手は〔10♣ K♣〕。
キッカー負けで、イグニスの山は一瞬で吹き飛んだ。
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「……戦略って、信用できねぇな」
カジノの出口で呟き、夜道をとぼとぼ歩く。そんな時、酒場から出てきたアルガードと鉢合わせた。
「おいイグニス、顔が死んでるぞ。どうした?」
「……ポーカー、全敗」
「ははっ……いや、まあ元気出せ。ほら、飯でも行くぞ」
気づけばアルガードの奢りで、海鮮シチューを前にしていた。
スプーンを動かしながら、イグニスは「勝利の女神って、意外とツンデレなんだな……」と小さく呟いた。