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BJは勝てん

【ゴールデン・フェニックス VIPブラックジャックルーム】


 あの夜の大勝から数日後――。

 イグニス=イッシュバーンは再び、煌めくカードの海へと足を踏み入れていた。


「……今日こそ、理論でこのカジノを叩きのめす」


 テーブルに腰を下ろすと、ディーラー・エミリが微笑む。


「本日は、どのような戦略で?」


「ベーシックストラテジー+カウンティングや」


ーーーー

【BJ戦略メモ:イグニス版】


ベーシックストラテジー

 確率的に最も勝率が高い行動を統計から導き出した戦術。

【例】

・16以下はヒット(ただしディーラーのアップカードが弱ければスタンド)

・11は必ずダブルダウン

・Aと8はスプリット不可、Aと8以外のペアは状況でスプリット

「迷いを減らすのが勝利の第一歩」


カードカウンティング(ハイローシステム)

 低カード(2〜6)出現で+1、高カード(10・絵札・A)で-1、それ以外は0。

 カウントが高い=山札に高カードが多い=BJのチャンス。

 ただし……このカジノは8デッキ+不定期シャッフル。


ーーーー


「これなら理論上、負けるわけが――」



第1ハンド


〔10♠・6♦〕=16 → ディーラーK♥

ベーシック通りヒット → 6♣、22でバースト。-200G。



第3ハンド


〔A♣・8♦〕=19 → ディーラー5♠

スタンド → ディーラー21。-500G。



第6ハンド


〔11(8♥・3♠)〕ダブルダウン1,000G → 引き5♣で合計16。

ディーラーは19で勝利。-1,000G。



「おかしい……理論が……確率が……」


 不定期シャッフルのせいでカウントは当てにならず、ベーシックも容赦なく裏目に出る。

 終盤には資金が2,000Gを切り、最後の勝負に出る。



最終ハンド


〔K♠・K♣〕=20 → ディーラーA♦

「これは勝った」→ ディーラーBJ。-2,000G。



 所持金:0G


【帰り道】


 石畳の夜道を、肩を落として歩くイグニス。

 そこへ後輩との買い物帰りのヒルダが声をかける。


「だから言ったでしょ、カジノなんてやめとけって」


「……今日は勝利の女神が浮気してたみたいやな」


 そのやり取りを横で聞いていた冒険者ギルドの後輩・マーテルが、袋を抱えながら微笑む。


「イグニス先輩、夕飯まだなら私が奢りますよ」


「……え? あ、いや、その……お、おう……」


 なんとも言えない空気のまま、三人は夜の街へ消えていった。

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