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乗り打ちは勝てん

 イグニスはルルイジーニから教わった立ち回りを、初めて実践する。釘の角度、回転数、魔力の伝わり方……すべてを計算し、期待値の高い台を選ぶ。


 二人は互いの隣に座り、スケイルを分け合って乗り打ちを開始した。

 乗り打ちとは、二人で資金を共有し、打つタイミングや台を相談しながら打つ方法だ。メリットは、片方が冷静に計算していれば無駄打ちを減らせること。デメリットは、片方の判断ミスが双方に影響すること、そして勝ち負けの感情が共有されることだ。


 最初は順調だった。ルルイジーニの計算で投入のタイミングを合わせ、イグニスも直感で“熱い瞬間”を拾う。

 しかし、どんなに完璧な計算でも、博打には確率の壁がある。魔導パチンコの爆発は、予想外のタイミングでしか起きないのだ。


 結果、二人ともスケイルを少しずつ減らし、最終的に少し負け。昨日の大勝利の余韻は、あっさりと冷水を浴びせられたように消え去った。


 イグニスは肩をすくめ、笑う。


「なるほどな……どんなに計算しても、博打は博打ってわけか」


 ルルイジーニも苦笑いしながら頷く。


「ええ……でも、乗り打ちには意味があります。片方の目で台を見て、片方の手で調整する。勝つ可能性は少し増えますし、何より冷静さを保てる」


「その代わり、負けたときの精神的ダメージは二倍ってわけか」


 イグニスは短剣の鞘を叩きながら笑う。


 二人は今日もまた、勝ち負けではなく、経験と絆を得たのだった。

 マグナ・スロットの光と音の中で、確率の壁を前にしつつも、二人の信頼は確かに積み重なっていった。


 数日後、二人は〈マグナ・スロット〉の掲示板に貼られた告知を目にした。


「……ふむ、次は大イベントか」


 イグニスが指で紙面をなぞる。煌びやかな文字で「深海魔導パチンコ祭」と大きく書かれている。


 ルルイジーニが説明する。


「このイベントでは、通常よりも大当たり確率が上がり、特別演出が増えるそうです。さらに報酬スケイルも増額……狙い目です」


 イグニスの目が輝いた。


「よし、なら朝から並ぶしかねぇな」


 ルルイジーニは少し首を傾げる。


「……えっと、最近は抽選式が主流です。昔のように前日から徹夜で並ぶ必要はありません。開店時に抽選を受けて、当選した順に入場する形式です」


 イグニスはにやりと笑う。


「そうか……なら、朝イチで勝負ってことで十分か。焦って並ぶ必要はねぇな」


 二人は勝利のイメージを胸に、イベント当日への計画を立て始めた。

 前日の豪快な敗北も、冷静な計算も、すべてが次の挑戦の糧になる。


 マグナ・スロットの光と音の向こうに、二人の決意が静かに燃え上がった。

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