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乗り打ちしか勝たん

 二人はそれぞれ、45,000スケイルずつ手に、深海都市ルメナリアの賭博施設〈マグナ・スロット〉へと足を踏み入れた。


 イグニスは懲りずに、前回と同じ「七光神フェンリルMAX召喚ver.」の前に座る。

 蒼炎の狼像が鎮座し、魔導の光がきらめくその台に、彼の手は自然と伸びた。


 一方、ルルイジーニは慎重だった。

 釘の角度、回転数、魔力の伝わり方を計算し、甘い台を選ぶ。無駄な魔導演出に惑わされず、冷静に機械割を算出して投入を決める。


 時間が経つにつれ、二人の結果は明暗を分けた。


 イグニスはいつもの如く散財。青銀色のスケイルは次々と台に吸い込まれ、ついに袋は空になった。


 一方のルルイジーニは、堅実な打ち方が功を奏した。魔導の釘を読み、回転のリズムを見極め、10万スケイルもの大勝利を収めていた。


 イグニスが散財後に様子を見に行くと、ルルイジーニは誇らしげに硬貨の山を積み上げていた。


「すげーじゃん!」


 イグニスは素直に感嘆した。


 ルルイジーニはにっこりと笑い、イグニスに山の半分を差し出した。


「……いいのか?」


「いいんです。イグニスさんがおっしゃったじゃありませんか。パートナーはそういうものだと」


 二人はそのまま街の居酒屋に入り、勝利と敗北の話を肴に杯を重ねた。

 言葉少なでも通じる何か、勝手な信頼と妙な安心感――それが二人の間に芽生えていた。


 深海の夜風が街路に漂う頃、二人は笑いながら居酒屋を後にする。

 その夜、勝敗の明暗を超えて生まれた友情が、静かに深海都市の片隅に根付いたのだった。


 翌日。ルメナリアの街は、昨日の喧騒が嘘のように穏やかだった。

 二人は再び〈マグナ・スロット〉の入口に立つ。


 ルルイジーニは、少し緊張した面持ちでイグニスに尋ねる。


「イグニスさん……昨日の打ち方ですが、台はどうやって選んでいるんですか?」


 イグニスは肩をすくめ、にやりと笑う。


「はっはっは……カジノならカードの読みや確率計算で勝てるが、パチンコは運の勝負だろ?光って鳴る台に座って、爆裂しそうなやつを狙うだけだ」


 ルルイジーニは少し眉をひそめ、ノートを取り出す。


「……なるほど。じゃあ、少しだけ教えてあげます。これは“プロの立ち回り”と呼べるもので、魔導パチンコでも応用できます」


 ルルイジーニの説明は理論的で、冷静だった。

 釘の角度や回転数の把握、魔力の伝わり方を読み、機械割を計算して投入タイミングを決める――。

 その立ち回りを守れば、台ごとの期待値を最大化できる。


 しかし、ルルイジーニは重要なことを付け加える。


「ただし……これでも常勝は不可能です。パチンコは、絶対の攻略法がない世界です。むしろ、この立ち回りでやっと()()()()()()()に立てる程度だと考えてください」


 事実、パチンコはデタラメに打っても勝算は薄い。運任せで打つか、期待値を追えるかで、長い目で見れば雲泥の差が生まれる。イグニスは少し間を置き、短く笑った。


「ふむ……面白そうだな。やる価値はありそうだ」


「イグニスさん、ここは乗り打ちで行きましょう。リスクを分散し、勝つ可能性を上げます」


「いいだろう、乗った」


 ルルイジーニの冷静な理論と、イグニスの豪快な直感――二人の対照的なスタイルは、今日もマグナ・スロットの熱狂の中で試されることになる。


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