ライトニングバカラは勝てん
【サンライズシティ 夜】
あの雪原依頼から数日後。
イグニスはまたも〈ゴールデン・フェニックス〉の扉を押し開けていた。
煌めくシャンデリアの下、ライトニングバカラ卓は今日も稲妻を走らせている。
前回の大勝ちの記憶がまだ鮮やかで、その再現を夢見て席に着いた。
【一回戦】
プレイヤーに2,000Gをベット。ライトニング料として自動的に400Gが差し引かれる。
雷は……走らず。倍率はゼロ。
結果は、プレイヤー8、バンカー9で負け。
手数料分、いきなりの2,400G消失。
「……まぁ、こういうこともある」
【二回戦】
今度はバンカーにベット。雷は1枚だけ走るが、出たのはクラブの4・2倍。しかし引いたのはプレイヤー側。
バンカーは勝ったものの、倍率が乗らない勝利配当は雀の涙。
【三回戦】
プレイヤーに賭けたところ、珍しくペアが成立。
…が、ライトニングバカラではペア賭けをしていない限り、ただの引き分け扱い。
しかも、ベット額20%の手数料は戻ってこない。
「……マジかよ」
勝っても負けてもいないはずなのに、チップは確実に減っていく。
【四回戦】
嫌な流れを断ち切ろうと額を増やした勝負で、まさかの再びペア。もちろん賭けていない。
手数料だけ持っていかれ、ディーラーの涼しい笑顔がやけに眩しく見える。
【五回戦】
残るチップは半分以下。
プレイヤーに全力で賭けた瞬間、雷が二枚走った――が、両方ともバンカー側に吸い込まれる。
しかもそのバンカーが勝利し、8倍×2倍の夢配当を、隣の客が悠々と受け取っている。
イグニスの前には、わずかなチップと冷えた空気だけが残った。
【ゴールデン・フェニックス 外】
夜風が頬を刺す。
ポケットの中には、わずかな小銭。
「……手数料ってのは、勝ちを削るためじゃなく、心を削るためにあるんだな」
ぼそりと呟き、街灯の下を歩き出す。
足取りは重いが…どこか、次の稲妻を求める炎はまだ消えていなかった。




