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奈落の果てのギャンブラー!  作者: 黒瀬雷牙
上級冒険者の日常(2)
30/50

ライトニングバカラは勝てん

【サンライズシティ 夜】


 あの雪原依頼から数日後。

 イグニスはまたも〈ゴールデン・フェニックス〉の扉を押し開けていた。


 煌めくシャンデリアの下、ライトニングバカラ卓は今日も稲妻を走らせている。

 前回の大勝ちの記憶がまだ鮮やかで、その再現を夢見て席に着いた。


【一回戦】


 プレイヤーに2,000Gをベット。ライトニング料として自動的に400Gが差し引かれる。

 雷は……走らず。倍率はゼロ。


 結果は、プレイヤー8、バンカー9で負け。

 手数料分、いきなりの2,400G消失。


「……まぁ、こういうこともある」


【二回戦】


 今度はバンカーにベット。雷は1枚だけ走るが、出たのはクラブの4・2倍。しかし引いたのはプレイヤー側。


 バンカーは勝ったものの、倍率が乗らない勝利配当は雀の涙。


【三回戦】


 プレイヤーに賭けたところ、珍しくペアが成立。

 …が、ライトニングバカラではペア賭けをしていない限り、ただの引き分け扱い。

 しかも、ベット額20%の手数料は戻ってこない。


「……マジかよ」


 勝っても負けてもいないはずなのに、チップは確実に減っていく。


【四回戦】


 嫌な流れを断ち切ろうと額を増やした勝負で、まさかの再びペア。もちろん賭けていない。

 手数料だけ持っていかれ、ディーラーの涼しい笑顔がやけに眩しく見える。


【五回戦】


 残るチップは半分以下。

 プレイヤーに全力で賭けた瞬間、雷が二枚走った――が、両方ともバンカー側に吸い込まれる。

 しかもそのバンカーが勝利し、8倍×2倍の夢配当を、隣の客が悠々と受け取っている。


 イグニスの前には、わずかなチップと冷えた空気だけが残った。


【ゴールデン・フェニックス 外】


 夜風が頬を刺す。

 ポケットの中には、わずかな小銭。


「……手数料ってのは、勝ちを削るためじゃなく、心を削るためにあるんだな」


 ぼそりと呟き、街灯の下を歩き出す。

 足取りは重いが…どこか、次の稲妻を求める炎はまだ消えていなかった。

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