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奈落の果てのギャンブラー!  作者: 黒瀬雷牙
上級冒険者の日常(2)
26/50

タイガー&ドラゴンは勝てん

【サンライズシティ ゴールデン・フェニックスカジノ 夜 後半】


 イグニスは流れを掴んだ。初めの1,000Gは1,500Gに増え、心地よい手応えが全身に広がる。周囲の視線も自然と彼に集まり、静かな尊敬のざわめきがフロアに漂う。


「ここまで来たら……少し賭け金を増やしてみるか」


 イグニスは微笑み、1,500Gの半分以上、約800Gを次の勝負に投入する。エミリはいつもの柔らかい声で、敬語のままささやく。


「イグニス様、流れがございますので、大きめの勝負も面白い選択肢でございますね」


 カードが配られ、タイガーとドラゴンの数字が公開される。イグニスは冷静に予想し、タイガーにチップを置く。結果は見事に的中。勝利の感触が指先に伝わり、さらに勝利への自信が膨らむ。


 続くゲームでも、数字の傾向と周囲の心理を読み取り、次々と勝利。チップは2,500G、3,500Gと増えていく。周囲のプレイヤーも、彼の読みの鋭さに気づき、ざわめきと驚きが混ざった声が漏れる。


 だが、勝利の熱に浮かれたイグニスは、冷静さをほんの少し失い始めた。


「そろそろ……全額賭けても面白いかもしれない」


 1ゲームで3,000G以上を卓上に置く。エミリは一瞬微笑むが、敬語で注意を添える。


「イグニス様、これは大勝負でございます。慎重に…」


 イグニスは頷き、カードを引く。だが、数字は予想の逆を示す。ローを狙ったはずが、タイガーが高い数字を引き当てたのだ。


「……え?」


 全額を失った衝撃が脳裏をかすめる。しかし、次のゲームで取り返せると、さらに賭け金を膨らませる。


 連続して大勝ちした錯覚と流れの自信が、冷静な判断を曇らせる。1,000G、2,000G、と積み上げ、次々と勝負に挑むが、カードは容赦なく彼の期待を裏切る。


 最終的に、夜が更ける頃には、イグニスはなんと8,200G以上を失っていた。卓上には周囲の勝者のチップが積み上がり、彼の敗北の跡を映している。


 イグニスは深く息を吐き、掌の中の空虚を見つめる。勝利の余韻は跡形もなく消え、冷静な思考だけが残った。


「……やはり、どんな勝負も甘くはないな」


 エミリは敬語のまま、静かに微笑む。


「イグニス様、本日の勝負は、流れに乗りすぎたようでございますね。しかし、これも経験でございます」


 イグニスはチップを整理し、軽く頭を下げる。


「ありがとう、エミリ。次は必ず、取り返してみせる」


 夜のカジノは煌びやかな光を保ちつつも、イグニスの敗北に静かな波紋を広げていた。

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