タイガー&ドラゴンしか勝たん
【サンライズシティ ゴールデン・フェニックスカジノ 夜】
久々の煌びやかなカジノ。天井のクリスタルシャンデリアが光を反射し、フロアに虹色の輝きを散らしている。イグニスは深呼吸をひとつし、VIP専用テーブルへ向かった。
「イグニス様、お久しぶりでございます。今夜もご勝負のご気分でいらっしゃいますか?」
馴染みのディーラー、エミリが敬語で微笑む。
「もちろんだ、エミリ。今日も負けるわけにはいかない」
卓上には「タイガー&ドラゴン」のセットが整えられており、色鮮やかなチップが積まれている。イグニスは座りながら、エミリの説明に耳を傾ける。
「タイガー&ドラゴンは、二つの手、タイガーとドラゴン…どちらが強いかを予想するゲームでございます。各手には1から13までの数字が割り当てられ、合計が高い方が勝利となります。引き分けの場合は特別配当がございますので、運が良ければ一気に大勝ちも可能でございます」
イグニスはバカラの1枚バージョンかと、すぐに理解し飲み込む。
「賭け方は三択。タイガー、ドラゴン、引き分け。通常勝利で賭け金の1倍、引き分けならば8倍前後の配当となります。戦略の面白さは、数字の流れやディーラーの微細な手の動き、他プレイヤーの賭け方を読む読み合いにございます」
イグニスは頷き、まずは少額で場の流れを掴むことにした。手元には約1,000Gのチップ。初めのゲームは慎重に、タイガーに賭ける。
エミリがカードを配り、卓上の数字をゆっくり公開する。
「タイガー、8。ドラゴン、5」
「……タイガーか」
静かにチップを積む。勝利の感触が手元に伝わり、イグニスは微かに笑む。
次のゲーム、イグニスはドラゴンに賭ける。エミリが柔らかい声で説明を添える。
「今回の流れを見ますと、ドラゴンの数字はまだ低めでございます。ここで勝負されるのも面白い選択肢でございますね」
イグニスは周囲のプレイヤーの様子を観察しつつ、カードの出方や過去の数字の流れを脳内で計算。静かにチップを置く。ドラゴンが勝ち、連勝の余韻が彼の胸に心地よく広がった。
数局後、イグニスは流れの読み方をさらに研ぎ澄ます。タイガーとドラゴンの数字傾向、プレイヤーの賭け方、ディーラーの微細な仕草……すべてが勝利へのヒントだと彼は理解していた。
「なるほど、数字の偏りやプレイヤー心理を読めば、運だけではなく戦略でも勝負を制せる」
初めの1,000Gは数局で1,500Gに増える。周囲のプレイヤーも次第にざわつき、イグニスの読みの鋭さに気づき始めた。
エミリは微笑みながら敬語でささやく。
「イグニス様、流れをご自身で掌握されましたね。さすがでございます」
イグニスはチップを眺め、低く呟く。
「ふむ、ここまで来れば、大きく賭けても面白そうだ」
夜のカジノは静かに、だが確実に熱を帯びていく。タイガー&ドラゴンの面白さ、単純ながら深い読み合いの緊張感、引き分け一発の大逆転の可能性が、イグニスの勝利欲を一層掻き立てていた。




