ハイ&ローしか勝たん
【隣国の空港】
隣国の空港で、イグニスはロマーリオと別れた。
残った日本円を換金すると、出発前は約57,000あったGは、半分以下の20,000ほどになっていた。
ロマーリオはイグニスに向かって言う。
「舌の根が渇く頃に、俺は日本に戻るつもりだ」
イグニスは微かに頷く。ロマーリオは手を振り、軽く笑った。
「また必ず、日本に来いよイグニス!」
「あぁ、必ず行くよ!またなロマーリオ!」
イグニスは一人、馬車に揺られながらサンライズシティへ向かう。
窓の外に広がる草原は、朝日に照らされて黄金色に輝いていた。
【旅の途中の村 ミルフィア】
日が暮れかかる頃、イグニスは小さな村に到着する。村人たちは旅人を暖かく迎え入れ、簡素だが清潔な宿に案内してくれた。
夜の闇が村を包み、細い街路にランタンの光が揺れていた。
イグニスは荷を宿に置き、軽く体を伸ばして村の広場を歩く。
そこに、笑い声とコインの音が混ざった小屋が見えた。
「……ふむ、これは……ハイ&ローか」
屋台の中では、数人の村人がカードをめくり、数字が次に高いか低いかを予想して賭けている。小さな札束や硬貨がテーブルに積まれ、夜風に混じってざわめきが聞こえた。
イグニスは足を止め、テーブルに近づく。
「ちょっと参加してみよう」
最初は勝てない。予想は外れ、チップは減っていく。
「ハイ……ロー……」
イグニスは静かにカードをめくるたび、数字の流れや対戦相手の癖を観察する。
隣に座る老人が笑いながら言った。
「初めてかい?このゲームは運もいるが、読みができる奴は強いぞ」
イグニスは頷き、目を細める。
「なるほど……この数字の傾向と心理を読むのか」
数局後、イグニスは少しずつ流れを掴み始める。
相手が焦って賭けを大きくする瞬間、次に低いか高いかを直感で判断。
「ロー……」
見事に的中し、チップが少しずつ積み上がる。
村人たちも次第にイグニスの腕に気づき、ざわつき始めた。
「こいつ……なかなかやるな」
小さな声が漏れる。
深夜も更け、イグニスはほぼ連続で正解を重ねる。
チップは初めの数倍に膨れ、笑みを浮かべながらカードをめくる。
「やはり……経験と観察力だな」
彼の瞳には、奈落で鍛えた集中力と読みの力が宿っている…つもりになっていた。




