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奈落の果てのギャンブラー!  作者: 黒瀬雷牙
東の島国編(1)
20/50

麻雀しか勝たん

【東の島国 ロマーリオの宿泊部屋 夜】


 G1での惨敗から数日。

 日本に来たとき、約800万円あったイグニスの資金は、豪遊と競輪・競馬などの賭け事でみるみる減り、滞在二週間にして残り500万円を切っていた。


 ロマーリオは、ベッドに腰かけたイグニスをじっと見つめ、ため息をついた。


「……このペースじゃ、あと一ヶ月でスッカラカンだぞ」


「だがロマーリオ、俺は勝負師だ。負けても取り返せば──」


「その考え方が一番危ねえんだよ」


 ロマーリオは苦笑し、机の上から一枚のチラシを差し出した。そこには「健康マージャン教室」という文字と、明るく笑う老若男女の写真が並んでいた。


「これは……なんだ?」


「麻雀だ。テーブルゲームだが、頭を使う。ルールさえ覚えれば金をかけなくても遊べる。ギャンブルの虫干しにはちょうどいい」


「……マージャン……か。聞いたことはあるが、やったことはない」


「じゃあ決まりだ。明日、雀荘に行くぞ。金賭けないやつな」


【東の島国 市街地 雀荘「風の館」】


 翌日。

 狭い階段を上がった先、木の看板に「雀荘 風の館」と刻まれた店があった。扉を開けると、電子卓の軽快な牌混ぜ音と、タバコの香りが迎えてくれる。


 ロマーリオは店員に声をかけ、初心者卓を用意してもらった。


「イグニス、この四角い牌を使って、役を作って上がるのが目的だ。まずは数字と漢字を覚えろ」


「ふむ……これは将棋やチェスのような戦略性がありそうだな」


【初戦】


 最初の半荘、イグニスは完全に翻弄された。

 捨てた牌をすぐに相手にロンされ、役の完成形もよくわからない。


「なぜだ!? 俺は同じ種類を揃えていたはず……」


「それだけじゃダメだ。役がなきゃ上がれないし、他人の捨て牌も読まなきゃいけないんだ」


 イグニスは悔しげに唇を噛み、二戦目に挑んだ。


【数日後】


 数日通ううちに、イグニスは牌効率や待ちの形を覚え、他家の河(捨て牌)を読み始めた。


「……なるほど、あの捨て方はピンズ待ちか。じゃあこれは安全牌だ」


 読み通り、相手のテンパイをかわし、自分がリーチをかける。


 「リーチ、一発ツモ!」


 白と赤の点棒を受け取るイグニスの顔に、久々の笑みが浮かんだ。


 ロマーリオは感心したように頷いた。


「なかなか筋がいいじゃねえか。賭けない麻雀でも、十分楽しめるだろ?」


「確かに……これは奥が深いな。ギャンブルではないが、勝負の感覚は十分にある」


 イグニスは牌を指で弾き、静かに言った。


「次はもっと上手く打ってみせる。俺は勝負事なら、何だって極めたい」


 雀荘のざわめきの中、彼の瞳には再び挑戦者の輝きが戻っていた。

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