競輪は勝てん
【東の島国 某競輪場 G1初日】
G1──競輪の最高峰。
全国から精鋭たちが集い、白熱の戦いを繰り広げる特別な舞台だ。
イグニスは、前回のF2最終日から、数日間で回収率130%、プラス100万以上という好成績を叩き出した。その勝ち分を握りしめ、ロマーリオとともに朝一番から会場に到着した。
「さあロマーリオ、今日は一気に勝負を決めるぞ。実力差も読みやすいはずだ」
ロマーリオも笑顔で頷く。
「おう、今日は楽しませてもらおうじゃねえか!」
【第1レース】
開門直後から多くの観客でごった返すスタンド。
イグニスは前日までに集めた選手データを広げ、自信満々に予想を組み立てる。
「このラインは鉄板だ。頭はこの選手で間違いない」
発走ベルが鳴り、レース開始。
しかし──最後の直線で大波乱。軸にした選手がまさかの失速、人気薄の差し馬……いや差し選手が突き抜けた。
「……まあ、こんなこともある。G1は一筋縄じゃいかないな」
【第2〜第4レース】
イグニスは冷静に軌道修正する。だが、外れる。
差し有利と読めば逃げが決まり、逃げ有利と見れば捲られる。
オッズに惑わされたつもりはない。だが結果は、ことごとく逆に出た。
「……まだ序盤だ。取り戻せる」
額にはじわりと汗が滲み始める。
屋台の焼きそばをすすりながら、ロマーリオが苦笑した。
「イグニス、今日は流れが悪いぞ」
「流れ……?いや、まだだ。G1は後半でこそ本領発揮だ」
【第5〜第8レース】
イグニスは持ち味のライン読みで勝負に出る。
しかし、それすら裏切られる。完璧と思ったフォーメーションが、あと一歩で崩れる。
「……信じられん。あの展開で差されるのか……」
額の汗は、もう止まらなかった。
【最終2レース】
残る軍資金はわずか。
100万円あった勝ち分は、すでに半分以上が溶けていた。
「ここで全部取り返す……!」
渾身の予想を叩き込む。しかし結果は…またも人気薄の激走。歓声と落胆が入り混じるスタンドの中、イグニスだけが茫然と立ち尽くした。
【最終レース】
最後のレースに、残りの全額を投入。
祈るようにスタートを見守る。
だが、またしても読みは外れた。
ゴールラインを越えた瞬間、イグニスは呆然と呟いた。
「……こんなこと……ありえるのか……?朝から全部外すなんて……」
ロマーリオは気まずそうに肩を叩いた。
「イグニス、これがギャンブルってやつだ。昨日までの勝ちは、今日のためにあったのかもな」
イグニスは深く息を吐き、空を仰いだ。
「……また一からだな。だが、俺は諦めない」
日が暮れ、会場を去る二人の背中に、ネオンの光が淡く降り注いでいた。




