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奈落の果てのギャンブラー!  作者: 黒瀬雷牙
上級冒険者の日常(1)
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スロットマシンは勝てん

 煌びやかな賭博施設「マグナ・スロット」に、再びイグニスが足を踏み入れた。前回の大勝利の余韻に浸りつつ、彼は今回は賭け金のレートを上げることを決意する。


 海外のスロットマシンでは、日本のように一律の賭け金ではなく、プレイヤーが自由にレートを変更できるのが一般的だ。賭け金を増やせば当たった時の払い戻しも大きくなるが、その分リスクも跳ね上がる。


 また、スロットマシンの機械割とは、投入した金額に対して長期的にどれだけ還元されるかを示す数値で、多くの機種では95%前後が標準となっている。これは、100スケイル賭ければ平均して95スケイルほどしか戻らない仕組みであり、ギャンブルで長く勝ち続けることの難しさを物語っている。


 イグニスはその数字を理解しつつも、一か八かの勝負に挑む。


 最初は順調にチップが減る様子はなかった。だが、やがて小さな負けが重なり、チップの山はじわじわと削られていく。回転するリールの音は変わらず華やかだが、彼の心には静かな焦りが忍び寄っていた。


「まだいける……まだいけるはずだ」


 そう自分に言い聞かせるたびに、額の汗が冷たくなり、手の震えが増していく。目の前の数字が減っていくのを見るのは、まるで自身の希望が削がれていくようで、何度も心が折れかけた。


 それでもレバーを叩く手は止まらない。勝利の瞬間を信じて、最後の一投まで賭け続けるしかなかった。


 そしてついに、チップは底をつき、何もかもを失った。


「……運が味方しない時もあるか」


 呟く声はどこか諦めと、次こそはと願う決意が入り混じっていた。


 勝利の女神は、今回もイグニスを見放したようだった。


【サンライズシティ イグニスの自宅】


 深海都市ルメナリアでの敗北を胸に、イグニスは疲れた足取りで故郷の街へ戻ってきた。


 自宅の扉を開けると、ポストに一通の招待状が差し込まれているのを見つける。


「……なんだこれは?」


 封筒には煌びやかなカジノのロゴとともに、「サンライズシティ・ポーカートーナメント」の文字が踊っていた。


 内容を読み進めると、そのトーナメントは今月末、サンライズシティのカジノで開催される公式イベントであり、優勝者には多額の賞金と名誉が与えられると記されている。

 本来なら参加費5,000G必要だが、招待状を贈られたVIPユーザーは、無料でエントリーできる。


 イグニスは深いため息をつきながらも、じっと招待状を見つめていた。


 やがて、彼の目に力強い光が宿る。


「お…俺はこのトーナメントで勝つために、今日まで下振れしとったんや!」


 敗北の悔しさを糧に、イグニスの新たな戦いの火蓋が切って落とされようとしていた。


ーーー 第一章 完 ーーー

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