表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/50

バカラしか勝たん

※本作は《奈落の果ての冒険譚》外伝。命がけの冒険から解放された男が挑む、もうひとつの戦場の物語…

 ここはサンライズシティ。大都市にして、奈落を目指す冒険者の街。

 その中央区にある巨大カジノ〈ゴールデン・フェニックス〉は、夢と絶望が交差する戦場だった。


 そして今日もまた、炎のようなオーラを纏う、1人の男がその自動扉をくぐる――


「よう、運命さん。今日こそ俺に味方してくれよな」


 そう呟いた男の名は、イグニス=イッシュバーン。

 冒険者ランキングベスト5にして、Aランク依頼をクリアしても金が残らない男。


「……お客さま、残高のご確認を」


「大丈夫、2,000Gゴールドある。帰る頃には200万だな」


 ちなみに1Gは約1ドルほどの価値である。


「前回もそうおっしゃって……」


「勝負ってのはな、勝つまでやるから勝負なんだよ!」


 ――前回の帰り、彼の財布のHPは限りなくゼロになっていた。今回、命懸けの依頼をこなして得た報酬を、早速ゼンツするようだ。


 イグニスは、一直線にバカラのコーナーに向かう。


 バカラ。

 それは単純ゆえに奥深く、時に人を破滅させる魔性のゲーム。

 だが、イグニスには確固たる信念があった。


 バカラコーナーは静かだった。

 テーブルの上に置かれたカードシューとチップケース。照明は柔らかく、赤みがかったゴールドが勝負の緊張感を包み込んでいる。


 VIPテーブルNo.3。

 イグニスは当然のように、中央の椅子にどっかりと腰を下ろした。


「おかえりなさいませ、イグニス様。本日もバカラで?」


 ディーラーの女、名はエミリ。切れ長の目と紅のリップが印象的な美女で、イグニスお気に入りのディーラーだ。


「ああ。今日こそ、俺と運命の初デートだ。よろしくな」


 軽口を叩きながら、イグニスはチップケースを開ける。所持金は2,000G。Aランク依頼の報酬すべてをここにブチ込んだ。


「さあて……今日は勝負の日や。ルールの確認、しとこうか」


「かしこまりました。〈ゴールデン・フェニックス〉では以下のハウスルールが適用されます」


ーーーー


【バカラ:ゴールデン・フェニックス式 ハウスルール】

・使用デッキ:6デッキ(312枚)

・最初に各陣営へ2枚ずつ配布。条件により3枚目を自動で引く。

・プレイヤー(Player)、バンカー(Banker)、タイ(TIE)への賭けが可能。

・賭け上限:10,000G、下限:100G

・オッズ:

- Player勝利:1倍(返金)

- Banker勝利:0.95倍(5%ハウスコミッション)

- TIE:8倍

・TIE成立時、Player/Bankerへの賭けは全額返金(引き分け扱い)

・特殊ボーナス(VIPルール):

-「トリプルナチュラル」(ナチュラル9 vs ナチュラル9のTIE) → 15倍

- 「一撃逆転ドロー勝ち」(合計1〜3からの逆転) → +0.5倍ボーナス


ーーーー


「ほう。特殊ボーナスは据え置きか。運さえあれば、イチかバチかで捲れるわけだな」


 イグニスは顎を鳴らし、初手を宣言する。


「まずはプレイヤーに――全額BET!」


「2,000G、プレイヤーに確認いたしました」


 カードが配られる。

 プレイヤー:7

 バンカー:5


 プレイヤー勝利。

 配当:+2,000G → 所持金:3,900G


「っしゃあぁ!開幕ストレート! 今日は運命が俺にキスしてる!」


 第二ゲーム、1,000Gをバンカーへ。


 プレイヤー:8

 バンカー:9(ナチュラル)


 バンカー勝利。0.95倍配当。+950G

 所持金:4,850G


「はい完璧。出目の揺らぎを読んで、反対側に切り替える。これがコツや」


 第三ゲーム、2,000GをバンカーにBET。

 カードが配られる。


 プレイヤー:3 → ドロー:6(合計9)

 バンカー:4 → ドロー:5(合計9)


 ――引き分け(TIE)


「む、まさかのTIE。まあ、返金やからダメージなし」


 第四ゲーム、フルベット3,900G、TIEに全賭け。


 ざわつく周囲。


「え、TIE!? 一点張り……まじかよ……」


「またやりやがった。あれ、伝説になるか破産のどっちかなんだよな……」


 カード配布。


 プレイヤー:6 → ドロー:2(合計8)

 バンカー:8 → ドロー:0(合計8)


 再び、TIE。オッズ8倍。配当:31,200G


「どやぁぁァッ!! これがイグニス流! 心で感じて、運で勝つッ!」


 周囲はどよめき、カジノの控室では監視員たちが慌ただしく動き出していた。


「TIE2連発……? あの冒険者、本気で読み切ってるのか?」


「次は止めないと……上限10,000G、超えさせるなよ!」


 だがイグニスは、チップを指ではじいて笑う。


「なあエミリ。あと3回勝ったら、今夜……一緒にディナーでもどうや?」


 エミリのプロフェッショナルな笑顔が、わずかに崩れた気がした。


 ――そして、次なる勝負が始まる。


「次、プレイヤーに10,000Gや。倍プッシュ、入るぜ」


 果たして、イグニスの運命は…!?

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ