理由⑨
指揮者のように片手を挙げ、軽く拳を握って笑い声を止めた先生は、今度は打って変わって静かに話を始めました。
「世の中には沢山のルールがあります。子供のルール、大人のルール、学校のルールに会社のルール、みんなのお家のルール、車のルールや電車のルール、オセロのルールにトランプのルール、食事のルール。そしてこのクラスにもルールがあります。このクラスのルールは皆で考え、私が決めます。現状のルールは単純明解。彼女を泣かせないこと、彼女は辛くても踏ん張ること。その為なら私は時計を止めます。チャイムを無視します。必要とあらば授業を後回しにしましょう。皆さんの考えも訊かせてほしい。良いアイデアがあれば試してみましょう。」
―十数秒の沈黙―
「以上が我々のクラスです。我々は彼女を支えます。彼女は頼っていいのです。笑う時も泣くときも喋る時も一緒。友達とは信頼すること、できること。信じて頼る、甘えると勘違いしてはいけませんが、友達を信じて頼りなさい。信じて頼られる友達になりなさい。」
話の途中でチャイムは鳴っていた。
「質問は私が先生になろうと思った理由でしたね。それは、当時の担任の先生に憧れていたからです。さ、明日からは本格的に授業が始まります。忘れ物などないように。それでは起立―」
これにて初日は終了。少々喋りすぎたか。まぁ、彼女が私の奥さんです、ということは内緒にしておこう。
【理由 終】




