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理由①

【理由】


 簡単な自己紹介というのもなかなかに難しい。初対面の先生や友達を前に起立して、教室の注目を浴びる中で言葉を発するのだから普段通り、又は普段通りを装って喋ることがはたして何人できるだろうか―早口になる子、小声になる子、言葉に詰まる子、耳まで真っ赤になる子、照れ隠しで言葉遣いがいささか乱雑になる子―人前で話すということは容易なことではない。楽なことではない。嫌いな人も多いことだろう。けれども避けて通ることはできない。

 短い自己紹介と拍手が淡々と繰り返される光景を見守る先生。迷い、戸惑い、手弄(てまさぐ)る子供達。震えながら捻り出した最初の一声からどのように成長していくのか。3学期の最後の日には同じ状況を作って、今度は夢を語ろう。、無論、先生の夢も訊いてもらうぞ。だから、今日の姿を(まぶた)の裏に焼き付けておくのだ。


 小学4年生。小学校生活も折り返し。高学年と呼ばれるようになり、身体も成長期に入る。小学校生活にも慣れて、知らない場所、入ったことのない教室というのも減ってきた。未知という名の不安やストレスが大きく軽減される頃合いである。一方で本分の勉強はというと、覚える量が桁違いに増えてくる。際限なく押し寄せてくる波を嫌だ嫌だと後回しにしていると、段々と取り戻すことが難しくなってくる。毛嫌いの素になりかねない。

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