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天才の証明⑤
5時の鐘が響く頃、公園は2人だけの物。だからと言って走り回る訳ではないが、気兼ねなくボールを蹴ることができる。声を出すことができる。直近の2人のお気に入りは『リフティングしりとり』。リフティングをしながらパスをする際にしりとりをするのだが、進はまだリフティングが安定しないのでバウンドさせてもオーケー。それでも要にはなかなか勝てなかった。尤も、勝敗よりもなるべくリフティングを続けたいのだが、やっぱり進のミスが目立ってしまう。それでもたった数ヶ月で随分と上達した。しっかりとお兄ちゃんの練習相手をこなしていた。なかなかのものである、どころの話ではないのだが。そんな2人は辺りが薄暗くなってきても時計塔の灯りの下、ボールを蹴り続ける。笑い声が絶えず、ボールは止まらず、休みも取らず、時間を忘れて没頭できる集中力。未来が雑念となって邪魔しない、現在だけに執着できる力。その終幕はこうだ。2人に近付く影。
「あっ。」
「ん。」
腕を組んで仁王立ちするお母さんと、少し離れたベンチに座るお父さん。
「ご・は・ん。」
4つの影が戯れながら公園を離れていく。ブランコがきぃとひとつ鳴いた。
【天才の証明 終】




