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天才の証明②


 いつも練習開始の30分前には幼稚園に入る要。家の中で待ちきれないご様子。1年生の練習初日から造作なく20回、30階のリフティングをこなす光景は異彩を放っていた。他の子からすればありえない。ほとんどの子が初めてサッカーボールに触れる中で、インサイドキックもインステップキックも知っていて、ゴールキックもコーナーキックも、オフサイドまでも理解している少年は珍しかった。あと、持参するボールがデカいのも。稀にお兄ちゃんの影響などでサッカーボールを蹴ったことのある子もいるにはいるが、要に関しては入部に合わせて予習というか自主練習というか、入念な準備期間を経てやってきた体すら伺えた。そんな訳で、練習が楽しみで仕方ないのは要だけではなかった。足の速さに加えて、サッカーボールに馴染んだ身のこなしを見た野口先生の(気持ち悪い)満面の笑みが思い浮かぶかもしれないが、ひとまず横に置いてもらって結構だ。




 小学1年生のサッカーを観たことがあるだろうか。ルールを知ったか知らないかの子供達がひたすらボールに群がる。ポジションなんてあってないようなもの。磁石で引っ張られているのかいと突っ込みたくなるくらい、敵も味方も一同に集まって、相手の陣地に向かってボールを蹴り合う。まるでサッカーの原点、サッカーが原始的なスポーツであることを見せつけられているかのようだった。そこに1対1のぶつかり合いや個の駆け引きは存在しない。広いスペースで待っていればチャンスになると分かっているのは外野だけ。ベンチも外野も広がれ広がれ、固まるなと大声で声援を送るも、到底耳まで届かない。ハーフタイムに指示を受けたって、後半が始まりゃ忘れちゃう。パスもシュートもあったもんじゃない。この頃はそれが可愛らしくもあるのだが、見ている方はやっぱりストレスが溜まってしまう。熱くなってしまう。現状、知識は大人の方が上。それが外から見ているのだから、不手際ばかりが目立ってしまうのは致し方あるまい。

 2年生になると、どうにか役割分担が理解できるようになる。昨年までのように皆で群がって試合が終わる、ということは少なくなる。そんなことをしていては勝てない。フォワードがいて、ハーフがいて、ディフェンスがいる。中央に陣取る選手がいて、サイドを駆け回るプレイヤーがいる。そうなると、何が起こるか。徐々に徐々に、強いチームと弱いチームが出てくる。勝てるチームとなかなか勝てないチーム。

 スキルアップサッカークラブでは年に2回の大会が開催される。各学年毎にチームを組み、学年毎に優勝を目指す。予選ラウンドと、日を改めた決勝ラウンド。それなりにチーム数の多い大きな大会なのだが、例年2年生の時に優勝したチームは3年生、4年生と学年が上がっても優勝争いに絡んでくることが多い。特定の理由を除けば、この時期に強かったチームが唐突に弱くなるということはあまり見受けられなかった。連覇ならずとも、決勝ラウンドに名乗りを上げる常連となる。そしてこの頃から強いチームというのはほぼ例外なく、父ちゃん母ちゃんのパワーが凄い。主役の面々よりも元気よな。

 そして3年生ともなれば、個性が光り出す。得意、不得意、得手、不得手。ポジションにも各々の特徴、例えば体格なんかが考慮される。そんなチームの特徴が、つまり長所と短所が監督やコーチを悩ませるようになるのだ。個性が出てくるということは差別が生まれるということ。強者と弱者が誕生すれば上下にズレる。できる者とできぬ者、持つ者と持たざる者。11の個で構成されるのがチームであるから、各人の特徴が如実になれば、チームとしても様々な輝きを放つようになる。プロの世界では監督の戦術に合わせてレギュラーに選ばれたり外れたりもするが、人材の限られたチームではヘッドコーチの思考の流れが逆になる。選手に合わせて戦術を、勝つ為の戦略を人から練る。サッカーがサッカーらしくなるのはここからである。それと試合中、選手同士で喋っている光景がしばしばみられるようになるかもしれない。これは紛れもない成長の証。思考の過程。勝利への意思表示。

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