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時間割りと時間泥棒⑭




 時間は自分の為に守るものじゃない。自分以外の人の為に時計があるんだ。時間を守らないことで自分だけが困るならば構わないが、どう転んでも他人に迷惑をかけてしまう。自分だけの問題なら勝手にしなさいって話だが、いつも言っているように他人様(ひとさま)に迷惑をかけてはいけない。

 もしもジャムおじさんが時計を見ないでパンを焼いたらどうなると思う?丸焦げアンパンマンのできあがりだぞ。元気も勇気も百倍にならない。空は飛べないし、バイキンマンも倒せない、腹ペコの子に顔を食べさせることもできない。みんなが困っちゃうだろう。


 これにて時計は復活。元の生活に戻り、進も無事にアンパンマンを観ることができた(しかもGWスペシャルという特別仕様)。翌日以降、しっかりと連休を満喫したのだがこの話、もうちょっとだけ続きがある。続きというよりも長い目で見れば、出発点。


 翌日、予定通り(?)電車に乗って遊園地に赴く鈴本一家。そこで目にした時刻表。もはや見慣れて目に入らないお父さんとは反対に、昨日の印象が強く残っている進は、どうしてもこれに喰いついてしまう。都合よくテレホンカードくらいの時刻表が券売機に置いてあって、1枚拝借したお父さんが進に渡してやった。八割方数字だけの時刻表に興味津々の進、往きの話題もこれについて。

 世界一時間に正確な日本の鉄道。10分遅れれば謝罪の一文が記載された遅延証明書が発行される。それが日本の常識、当たり前。というか、諸外国の多くは時刻表なんてあってないようなもの。時間通りに発車も到着もしない。だから駅に着いた列車が早く着いたのか、遅く来たのかも定かでない。加えて、その事を気にしないお国柄。そんな話をしながら、電車に揺られながら、じっと時刻表を凝視する進。まぁ、初めて見るものだろうし、昨日の今日で時間に意識が向くのも無理ないが、そんなに見つめたって面白い物でもあるまいて。酔ってしまうぞ。

 「お父さん、この時間に電車が出発するの?」

「そうだ。こっちが平日で、今日は休日だからこっち側だな。」

「ふ~ん・・・・・・」

反応薄し。訊いているのかいないのか、何を考えているのか。お父さんが横顔を覗いてみれば真面目というより、どこか納得のいかない様子。まだ漢字は読めないから、数字とにらめっこするしかない。

「テレビも幼稚園もラジオ体操も始まる時間が決まっているのに、電車はバラバラだぁ。」

独り言、だと思われる。要とお母さんは切符の下に書いてある4ケタの数字を足したり引いたり、掛けたり割ったりして10にするゲームに夢中。進とお父さんの切符も預かっていった。えっ?かけ算?わり算?要は九九を空で言えるし、簡単な分数の計算もできる。お兄ちゃん、お姉ちゃんが近くにいると、遊び感覚で身についてしまうものだ。従って相手をするのはお父さんしかいないのだが、始めは進の言っている意味が分からなかった。

 つまりはこういうことだ。電車の発車時刻を分単位で細かく刻んで設定するのではなく、10分置き、15分置きに1本と決めてしまえば分かり易いのにね。高校、大学、社会人と十数年も電車に乗り続けてきて、そういうものだと納得していたお父さん。そりゃもちろん、利益の最大化だの、時間帯ごとの乗降客数だの、他の鉄道及び交通機関との乗り継ぎだのと言った理由はあるだろう―綿密に計算された上での数字―それらを踏まえた上で疑問を抱えながら現状に収まるのと、只々流されるのとではまるで違う。何が?それは単純思考か複眼思考か。原点は疑問をもてること。それは立派な才能。そして、それを伸ばすか殺すかは大人次第。


 なんで、どうして、おかしいな。大人の嫌いなセリフかもしれない。ということは置いておいて、進は独自のフィルターをかけているようだった。人より理解するのが1テンポ、2テンポ遅れることもあるが、震度が1ポイント、2ポイント高いこともある。先にも見たとおり、自分の理解もあいまいなままに質問を放ることもあるので、そんな時は答える側も意図を汲み取るのに一苦労するが、同時に進を納得させる返答を持ち合わせていないことに気付かされることもあった。

 時計は0時から始まるんだ、へぇ~・・・・・・ねぇ、ねぇ、ゼロってなぁに?1は1コ、2は2コで、0は0コ?何にもないのに数字はあるんだね、おもしろいね~。誰が考えたんだろうね~、凄いね~、不思議だね~。ゼロがなかったら困っちゃうね~。

                                 【時間割りと時間泥棒 終】


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